手術前に毛を剃るのは昔の話?

「盲腸の手術の前には陰部の毛を剃る」という話が、半ば都市伝説のようなかたちで語られています

実際に昔は、盲腸に限らず手術の際には患部付近を剃毛することが常識でしたしかし、現在はカミソリで剃ることはしない傾向にあります。それはなぜでしょうか?

◆そもそもなぜ毛を剃るのか?

剃毛は手術前の処置として、主に2つの理由で行われてきました。(1)雑菌による手術部位の感染を抑えること(2)医師が手術を進めるときに邪魔にならないようにすること──が目的です

(1)については、手術部位周囲の体毛や毛根に脂肪分が付いていると、感染源になりやすいと考えられてきたためです。しかし、除毛を行わなくても術後の傷の感染の発生率に差がなかったという報告があります。そのため除毛を行わない医療機関が増えてきています

そこで、現在は(2)のケース、つまり体毛が手術野の妨げになる場合にのみ、術前に除毛を行うのが一般的になりつつあります。実際の手術の際は、除毛の必要性の判断とその方法は、主治医と看護師とで話し合って決めます。

なお、米国のCDC(疾病予防管理センター)は手術を妨げない限り剃毛をしてはならないとしています。除毛が必要な場合は、カミソリや脱毛剤を使用せず、電気カミソリを使用するよう勧告しています

◆剃毛ではなく除毛

除毛の方法は、大きく分けると、剃毛、電気バリカン(電気クリッパー)、除毛クリームの3種類があります昔は、除毛の方法といえば、ほとんどが剃毛でした

しかし、剃毛は皮膚を削って微細な傷をつけ、時間経過とともに細菌の繁殖巣となる可能性があります。これにより、手術部位感染の危険性がかえって増してしまうということで、最近は避ける医療機関が増えています

米国のガイドラインによれば、手術部位の感染の確率が低い除毛方法として、「手術直前に、なるべく電気クリッパーを用いて除毛することが望ましい」となっています

除毛クリームも感染率は低いのですが、薬剤が過敏な反応を起こすことがあるためパッチテストが必要です。さらに、電気クリッパーと比較すると時間がかかることや高価だという短所があります。

電気バリカンは短時間で行えますし、自分で除毛できることから患者の心理的な負担も少なく、看護師の労力も軽減されるメリットがあるというわけです

除毛の目的は手術部位感染の防止なので除毛してもしなくても菌の繁殖率が変わらないということが常識化していけば、除毛をしない傾向はますます広がっていくでしょう

参考 Mocosuku編集部 2015.09.12

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