我々も行く!→中国人の日本旅行

東京や大阪、日本の各地で中国人観光客をみかける昨今ですが、子ども、両親、おじいちゃん、おばあちゃんという組み合わせをよくみかけます

当初は夫婦2人で計画していた日本旅行。一体なぜ家族総出で行くことに?

なぜ彼らはそんなに大所帯で日本に押し寄せるのでしょうか。実はこの光景の裏には、彼らなりの事情があったりします。

そこで今回は、中国人の友人・李小勇さん(仮名)が教えてくれた、「家族で初めての日本旅行」エピソードを紹介します。

■ 夫婦で楽しみにしていた日本

結婚6年目の記念日、春節の休みを利用して、夫婦2人で日本へ旅行しようという計画が持ち上がったのは先月のこと。

結婚してすぐに子どもが生まれたこともあって、ここ何年かは子育てにかかりっきり。新婚旅行でタイのバンコクへ行ったきり、夫婦だけでの海外旅行は実に5年ぶりになる。

中国では約30年続いた一人っ子政策が終わり、2人目の子を生んでも罰金がなくなった。今なら、2人目を考えるのもいいかもしれないとこの旅行を楽しみにしていた

行き先は満場一致で日本に決まった少し戻したとはいえ、相変わらずの円安で、LCCもたくさん飛ぶようになって日本は随分と行きやすい海外になった

それに妻は大の日本好き紙おむつ、離乳食、ボディーソープ、シャンプー、服、ベビーカーに至るまで、すべて日本製品を取り揃え、日本のお母さんの子育てに関する情報も熱心に集め、子育ての参考にしていた

行き先が日本に決まってからは、旅行の計画を練った。何を買うか、どこへ行くか、国内の移動はどうするか、ホテルは、温泉は、季節感を楽しみたい(雪景色を見たい)・・・と2人で熱心に相談した

■ 夫婦水入らずのはずが・・・

5年ぶりの2人の旅行は最高に楽しいものになるはずだったのだが、ここで事件が発生した。

 妻が子どもも連れて行きたいと言い出したのだ。以前に比べれば手がかからなくなったとはいえまだ5歳、妻が子どもに「お母さん、ちょっとお父さんと1週間くらいお出かけしてくるけど、いい子でお留守番できる?」ときいたところ、子供の顔がみるみる曇り「イヤだー、お母さんいなくなるのイヤー!! !」と泣き叫んだのだった

こうなると母親の我が子への愛情は夫と2人の旅行に勝る。5年ぶりの2人きりの旅行は、かくして家族旅行に変更になった

しかし事件はこれで終わらない。孫が日本へ行くことになった妻の両親が「孫が行くなら心配だ、我々も日本へついていく!」と言い出したのだ

■ 妻の怒り爆発! 波乱の予感・・・

妻の両親の孫への溺愛ぶり(甘やかしぶり)は、かなりのもので、日本の子育てを参考にしている妻ともしょっちゅう大げんかになるほどだ。そんな妻の両親にとっては、わずか5歳の孫をつれて冬の日本へ旅行するなど狂気の沙汰にしか映らない。

「あなたたち2人で、しかも中国語も英語も通じない日本へ行って、子ども連れで、大丈夫なの?  子どもの具合が悪くなったら病院に行けるの?  子どもが食べられるものあるの?  日本は刺し身とか寿司とか生の魚しかないでしょう、お腹こわすでしょうに」と散々文句を言ったものだから、妻もついに爆発。

日本の子どもは小さいときから薄着だから体が強くなって丈夫で健康に育つのよ病院だって今は外国人対応できるところもあるし、日本だったら薬局に行けば、よく効く薬も山ほど売ってるそれに日本人だって毎日刺し身と寿司食べて生きてるわけじゃないんだから、大丈夫よ!  そんなに孫が心配だったら一緒に日本に来ればいいでしょう!  旅行代くらい出してあげるわよ!」と啖呵を切ってしまったのだ。

というわけで、5年ぶりの夫婦水入らずの日本旅行は、急遽5人の家族旅行になってしまった

■ 東京を諦め、コスパ優先で大阪へ

こうして日本へ家族5人で行くと決定してから約1カ月、李さんは頭から煙が出そうになるくらい渾身の努力を傾けて旅行計画を練りに練ってきた。

70年代生まれの「親孝行・絶対思考」。90年代生まれの「自分は自分思考」。李さんはその狭間の80年代生まれである。「親の旅行代を出すことに異存はないが、計5人の旅費となるとなかなか大変だ・・・

当初は妻と2人で日本へ行くと考えていたので、予算にはかなり余裕があり、そこそこリッチな旅行を楽しめると期待していたのだが、いきなり5人に増えたのだ。

しかも妻が言い放った以上、両親の費用もこちらで負担するとなると、途端に予算がきつくなる。かなりの節約旅行になってしまいそうだ。日本のホテルは人数で計算されるから、人数が増えると宿泊費が途端に跳ね上がるのが痛い

行き先は東京か大阪か。大阪は京都も奈良も近いし、ちょっと頑張れば神戸にも行ける。でも初めて行くなら、首都も捨てがたい。やはり日本といえば東京だ。

夫婦2人なら自由時間を設定して、1人の時間に秋葉原でフィギュアと一眼レフ用のレンズを買い漁りたいと思っていたが、両親も子ども一緒となるとそれはちょっと難しい。やはりここはコストパフォーマンスを優先ということで大阪に行くことに決定した

飛行機はLCCを利用するとして、ホテル選びは大苦戦だった。春節の1カ月前で、すでに準備するには遅すぎたらしく、中国のネットでランキングの上位に入っているような有名なホテル、コストパフォーマンスが高いホテルは全て満室か、5人で一泊10万円を超えるありえない値段だ

日本人の友人にもアドバイスをもらい大阪市内内から少し離れた、中国人にはあまり知られていないエリアのホテルを何とか予約することができた

案の定、妻には、「このホテル大丈夫なの?  なんか全然聞いたことがない名前だし、大阪市じゃないんだけどいいの?  ネット上で評判いいの?」と聞かれたが、

「大丈夫だよ、日本人の利用者の評価は高いし、大阪市内まで電車ですぐだから、コストパフォーマンスも高い。中国人が少ないから静かでいいし、穴場だよ。市内なんて高すぎるし、どこも満室で、今からは取れないよ」と答えて何とか説得した。

実のところ、日本人の利用客の評価が高いかどうかは知らないし、電車で大阪市内へ迷わず移動できる自信はない。でも旅行日程は迫っているから、適当に予約したのが正直なところだった。

■ 最大の問題は「食」にあり

そして、一番大変なのが食べ物だ。ずっと大阪に滞在するのももったいないので、京都のとある温泉旅館を予約したのだが、この旅館で出る料理はカニや魚中心のメニューなのだ。

夫婦2人は普段から日本料理レストランにも行き、寿司や刺し身のような生の魚にも抵抗はない。子どもはお子様ランチを注文したから大丈夫だろう

問題は妻の両親だ。両親は寿司や刺し身だけでなく、日本料理そのものを食べたことがない。

旅行へ行くことが決まってからも「生の魚なんて無理だ、もし我々が食べるものがないようだったら、自分たちでカップ麺とかお米とか真空パックの漬物を持っていくので気にしないでいいよ」などと言っていた

しかし、これには妻がまたしても激怒。「旅館で豪華な料理が出てきているのに、その横でカップ麺をすすってたら旅館の人に失礼でしょう。せっかく日本に行くんだから日本料理に挑戦してみればいいのよ」と両親に怒りをぶつけまくる妻を何とかなだめ、両親用にお肉中心のメニューを選択した

お肉中心メニューはオプションで1人5000円プラスになるが、家族の平和のためこのお金をけちるわけにはいかない。

■ 家庭内の力関係はどこも変わらず?

子どもが生まれてから5年間、妻の両親の子育てのサポートぶりは涙が出るほど献身的である。夫婦共働きで、お手伝いさんは物価と人件費があがってきた上海ではとても雇えないので、子どもの面倒は基本的にすべて妻の両親がみてくれている

夜も子どもはおばあちゃんと一緒に寝ているし、料理の味付けも妻よりもおばあちゃんの味を好むあばあちゃん子だ。そんなお世話になっている両親に生まれて一度も食べたことがない生の魚を無理に食べさるのもなんだか可哀想だし、おそらく日本へ旅行している間も、妻の両親は子どもの面倒を細々とみてくれるはずで、その御礼のためにもお肉メニューの追加は必要なことだろう、と妻に話してみた。

すると、「あなたがそんなにうちの親のこと考えてくれていたなんて、ちょっと感動したわ!」との答え。いや、いつも君のお母さんと君の遠慮ない言い合いの間を取り持って、家庭の平和を守っているのは僕と君のお父さんなんだけどね。

* * * *

さて、いかがでしたか。友人の例ではありますが、家族で観光に来ている中国人の“実のところ”が、伝わったでしょうか。

次回も引き続き、李さんファミリーの日本旅行のエピソードをご紹介します。またしても、奥さんとお義母さんとの間にバトルが勃発。お土産選びや、お買い物は無事にできたのでしょうか・・・。

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