強気姿勢崩さぬ→ブーチン大統領

ロシア経済は、ウクライナ問題をめぐる欧米の経済制裁で追い込まれているが、プーチン大統領は欧米諸国への強硬姿勢を崩さず、一段と挑戦的になっている

2014年9月の停戦合意以降、比較的落ち着いていたウクライナ東部情勢だが、ここにきて親ロシア派武装勢力が政府軍に対して攻勢に転じ、再び緊迫化してきたウクライナ政府は、ロシアが親ロ派を支援するため、ウクライナ東部に兵士9000人を派遣していると非難する

一方、ロシアは、親ロシア派への兵士の派遣や武器の供給を否定し、戦闘激化の責任はウクライナ政府側にあると主張。一般市民に犠牲が出ていることへ遺憾の意を示しているただ、ウクライナ東部の問題とは無関係と強調する様子もない

ロシアが親ロシア派を後押ししているかどうかは別として、プーチン大統領は東部での政府軍勢力の劣勢を、強い立場で交渉に臨むことができる機会、と期待しているかもしれない

大統領は、選択肢がないと考えているかもしれない少しでも弱い立場をみせれば、国内政治に影響が出るからだ

キエフの政治解説者Olesya Yakhno氏は「プーチン大統領には後戻りの余地はない。後退や撤退をすれば、大統領に対する評価が下がり、国民の不満が高まる」と指摘する

「重要なことは、不満は大統領の支持者から出るのではないという点だ大統領の支持者は領土拡大を要求しており、いかなる後退も敗北ととらえるだろう」と語った。

経済制裁や原油安が国内経済に大きな打撃を与えているものの、プーチン大統領の欧米に対する姿勢はこれまでになく挑戦的だ。大統領のこうした強硬姿勢は、支持率維持に役立つ、との見方がある

ダボスでの世界経済フォーラムで、イーゴリ・シュワロフ第一副首相は「ロシアが国外からの圧力を感じる時、プーチン大統領は決して指導者としての立場をあきらめない」と述べ「国民は食費を削り、電気代を節約するだろう」と語った。

スタンダード・アンド・プアーズがロシアを格下げした時、政府当局者も大統領同様、強気の姿勢を示した。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「格下げは政治的動機に基づいている。賢明な企業が考慮に入れることはないし、すべきではない」と述べた

<プーチン大統領の目的>

ロシアが旧ソ連地域への影響力をどの程度維持できるかや、ウクライナと欧州の接近をどの程度阻止できるかは不明だが、プーチン大統領にはウクライナをめぐる戦略で、別の目的がある

プーチン大統領は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の動きに強く反発している。また、ウクライナ東部のドネツクとルガンスクに高度な自治権を与えるよう求めている

ロシアは紛争への関与は否定しているものの、反政府勢力が優勢になれば、ウクライナ政府から譲歩を引き出せることになる

ウクライナのコンサルティング会社ベルタ・コミュニケーションズのタラス・ベレゾヴェツ氏は、ウクライナでの戦闘激化の背景には、欧米諸国とウクライナを交渉のテーブルにつかせようとするロシアの意図がある、との見方を示した

ウクライナ側は、戦闘にはあるパターンがみられると指摘する。数週間劣勢だった親ロシア派は昨年8月、敗北が目前とみられたが、恐らくロシアが派遣したであろう兵士により形勢を一変させた。

ウクライナは犠牲者を増やさないために妥協を強いられ、9月に停戦に合意した。しかし戦闘は収まらず、死者は5000人以上に達した

ベレゾヴェツ氏は、今回プーチン大統領は、昨年3月にロシアに編入したクリミアのロシアからの法的分離を推し進めるなど、欧米の制裁解除にこぎつける方法を模索するかもしれない、と指摘する

親ロシア派が再び攻勢に出たことについて一部からは、紛争を長期化させることでウクライナの自国統治を困難にし、欧州との統合を遅らせるというプーチン大統領の狙いがある、との指摘がある

戦闘長期化によりウクライナの軍事支出が拡大すれば、経済が一段と悪化し、同国が破たんに追い込まれる可能性が高まる。そうなれば、ウクライナから譲歩を引き出せるとの思惑もプーチン大統領にはあるかもしれない

プーチン大統領は、親ロシア派勢力が占領地域を拡大し、共和国の創設を宣言したドネツクとルガンスクからクリミアに続く陸路を開くことを望んでいるかもしれない。これはかなり大胆な目標だが、アナリストらはまったく不可能とはみていない。

市民30人が死亡した24日のマリウポリの砲撃について、親ロシア派は関与を否定しているが、アゾフ海に面した港湾都市マリウポリは、南部につながる要衝の地だ。

ニューヨーク大学のロシア専門家、マーク・ゲレオテッィ氏は、ツイッターへの投稿で、マリウポリが反政府勢力に支配されれば情勢は大きく変わるだろう、と指摘。ウクライナ政府への信頼は低下し、「ドネツク人民共和国」の創設が一段と実行可能なものになるだろう、との見方を示した

参考 ロイター 2015.01.29

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