強毒性ウイルス感染→朴政権に難題

死亡者まで出た韓国での中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染拡大が、朴槿恵(パク・クネ)政権の新たな難題として立ちはだかっている300人以上の死者・行方不明者を出した昨年4月の旅客船沈没事故に続く“国難”に社会の不安は高まっており、低迷が続く韓国経済への悪影響の兆しも見え始めている。(ソウル 名村隆寛)

感染者が30人(死者2人を含む、3日午後現在)となったMERSは、現在も刻一刻と拡散している恐れが強い。感染のこれ以上の拡散防止に努めている韓国政府ではあるが、対応の遅れやまずさが露呈、14カ月前の旅客船「セウォル号」の沈没事故の再来であるかのように、韓国には、えもいわれぬ不安が広がっている

影響はすでに出始めている。韓国メディアが旅行最大手企業の話として報じたところでは、中国から約300人が参加する予定だった4日からの観光ツアーの予約が、直前になってキャンセルされた。このほかにも、中国人の韓国旅行キャンセルが相次いでいるという

最初の患者からの感染が疑われた男性が、医師の制止を押し切って出国し、中国で隔離後に感染が確認された中国国内でも韓国当局のずさんな感染対策に不満と警戒が出ているようで、中国での韓国のイメージ低下につながる恐れもある

韓国を訪れる日本人観光客が激減するなか、中国からは昨年、最多の610万人もの観光客が訪韓。景気が低迷する韓国にとって、中国からの観光客は韓国の観光産業を支えてくれる文字通りの大切な“お客さま”。しかし、MERSの感染拡大で、当面の観光客減少は避けられなくなってしまったようだ

一方、韓国人によるこの夏の海外旅行にも「自粛」の現象が出始めている。旅行大手での海外旅行のキャンセル件数は、平年よりも10%増加。キャンセルの問い合わせも続いている。現時点では観光業などに影響は限られているが、財界関係者の間からは「氷山の一角であればいいのだが」と不安視する声も聞かれる。

また、韓国国内では、野党勢力が今回のMERS感染拡大を政権・与党攻撃の材料として、攻勢に出ている。「政府の対応に問題あり。責任重大」といった沈没事故の時と似たような政府への批判と攻撃だ

確かに、沈没事故の際、当局の対応の遅れで「犠牲が大きくなった」と朴政権は世論から猛批判を受けた。ただ、沈没事故では船長や航海士のミス、運航会社の無責任さが事故の直接原因だったが今回は明らかに政権の不手際や失敗が感染を拡大させている。朴政権は非難を免れない

 朴大統領は1日、大統領府での首席秘書官会議で、「感染拡大がこれ以上ないよう、官民合同対策班が総力を挙げて対応してほしい」と指示。また、「感染者と接触した者は、管理対象から漏れることがないようにしなければならない」とも述べたという

しかし、時すでに遅し。朴大統領が訓戒をたれている間にも、感染は拡大し、皮肉なことにこの日、韓国では初めての感染による死者が2人出てしまった

韓国政府は、感染者が確認された病院名を公表していない。「国民の不安をいたずらに高めないためだ」と保健当局者は懸命に説明するが、こうした対応がかえって国民を不安に追いやっている部分も否めない

感染拡大に努めている韓国当局ではあるものの、対応が追いついていないのが現状。担当閣僚や幹部の更迭をはじめとする責任論はすでに出ており、セウォル号沈没事故の際に似た奇妙な雰囲気さえ漂っている

感染の不安にさいなまれている韓国国民の間からは「またか」といったため息が聞こえてくるようだ

参考 iza ニュース 2015.06.03

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