寿命が縮む高齢者→腰曲がり

昔話などによく登場するような腰が曲がり、杖をついた老人は、「腰曲がり」と呼ばれる疾患だ。かつては放置されていたが、医療技術の進歩で積極的な治療が可能になった

いわゆる腰曲がりの正式名称は「後弯症(前曲がり)」で、「成人脊椎変形」のひとつ。三楽病院脊椎脊髄センターの佐野茂夫センター長によれば、原因となる疾患は主に「変形を伴う腰部脊柱管狭窄症」「骨粗しょう症による脊椎骨折」「変性後側弯症」の3つがある

「腰部脊柱管狭窄症」は、脊柱管と呼ばれる骨のトンネルが細くなり、神経が圧迫されて症状が出てくる病気だ

「特徴的な症状は歩くと足がしびれたり痛んだりし、休憩するとそれらが消える間欠跛行ですこれに『すべり(前後、左右のズレ)』や『側弯(横曲がり)』が加わると強い症状が出て、徐々に腰曲がりになります

「骨粗しょう症による脊椎骨折」は、骨折そのものが治っても、骨が変形して固まり、強い腰曲がりに至る

「変性後側弯症」は、椎間板の変性などの加齢現象による腰曲がりで、高齢になってから急速に進行する

■息苦しさや食欲不振、逆流性食道炎を引き起こすことも

腰曲がりが引き起こす障害はいくつかある。「腰背部の痛み」「疲労感」「立ち上がったり歩行したりが困難になる」が代表的なものだ

日常生活の基本動作ができなくなり、引きこもりや、寝たきりを起こし、運動器の病気『ロコモティブシンドローム』につながります。また、心臓や腹部が圧迫されて息苦しさや食欲不振、食べたものが食道に上がってくる逆流性食道炎のような症状が出てきます寿命が短くなるという報告もあります

だからまずは予防に努めるべき。具体的には、(1)骨を丈夫にする食生活を心掛ける(2)背筋、臀筋を鍛える(3)背骨を反らせるストレッチを日常的に行う

背筋、臀筋が衰えれば体を支えられず、前に曲がりやすくなります

また、骨粗しょう症と診断されている人は、薬物治療が先決。「骨粗しょう症で適切な薬物治療を受けている人は2割程度」と指摘する骨粗しょう症の専門医もいるが、これは腰曲がりへの進行を阻止するチャンスを失っている人が多いということだ。

■早い段階で適切な治療を

 腰曲がりがひどくなり、日常生活に支障が出てくれば、手術治療が検討される

「大きく曲がった背骨を正常なカーブに矯正し、チタン製のねじやロッドを用いて固定する手術、変形矯正固定術です

この手術は、患者の椎間板の硬さ、曲がりのパターン、程度などによって、「Aさんはこの部分の椎間板を取り去り、ケージで大きく開き、骨のこことここをウエッジに切り取り、向きを大きく変えて……」といったようにアプローチの仕方を変えなくてはならない。高難度の大手術のため、医師の経験値が大きく関係する。口コミをチェックするなどして実績のある医師を選ぶべきだ。

「疾患が進行し、極端な腰曲がりになってしまうと、腰のカーブは非常に硬くなります。骨粗しょう症も加わると、矯正が難しくなる。原因に対する適切な治療を早い段階から受けていることも重要です

手術後、変形が再発することがあるので、定期的な診察が必要だ。

写真は80代の女性。椎間板ヘルニアの内視鏡手術を受けたが、症状が取れず、別の病院で変形矯正固定術を受けた。しかし軽快せず、1年後には「変性後側弯症」が急速に進行腰、背中の強い痛み、両下肢の針で刺されるような痛みとしびれで寝られず、どこかへつかまらないと立っていられなくなり、三楽病院を受診した

高齢のため、第12胸椎と第4腰椎の2カ所で骨をウエッジに切り取り矯正する手術を2回に分けて受けた。術後、痛みは取れ、良い姿勢となった

日刊ゲンダイ2016.06.07

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