容量はリチウムイオン電池の→5倍

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と京都大学、産業技術総合研究所などの研究グループは2016年3月28日、現行のリチウムイオン電池の約5倍となるエネルギー密度を達成可能な金属リチウム二次電池をはじめとする新コンセプトの二次電池を実用化する基礎技術の構築に向け大きな成果が得られたと発表した。今後は車載電池として要求される性能をさらに高めるための研究開発を進め、実用化につなげていく方針。

【「NEDO二次電池技術開発ロードマップ2013」における車載二次電池開発のロードマップなどその他の画像】

同研究グループが発表したのは、負極に金属リチウムを用いる金属リチウム二次電池をはじめ、金属そのものを電極として利用する新しいコンセプトの蓄電池「リザーバ型蓄電池」に関する成果だ

リチウムイオン電池はイオンを収納する入れ物(ホスト材料)の間でリチウムイオンをやりとりする「インサーション型蓄電池」であるインサーション型蓄電池は繰り返し充放電特性(サイクル特性)に優れるという利点がある一方で、ホスト材料の重量や体積がかさむために、実現可能なエネルギー密度に限界があるこの入れ物を使わずに、金属そのものを電極として利用しようというのがリザーバ型蓄電池だ

現行の車載リチウムイオン電池のエネルギー密度は100Wh/kg前後だが、2030年ごろの実用化を目指す革新型蓄電池のエネルギー密度は500Wh/kgが目標になっている。この革新型蓄電池の有力候補として研究開発が進められているのがリザーバ型蓄電池だ。

リザーバ型蓄電池は理論的にはエネルギー密度が大幅に向上するものの、二次電池として重要な性能指標であるサイクル特性について課題を抱えている。特に、充放電時にできる電極反応生成物が電解液に全く溶解せずに活性を示さない場合や、電解液に過剰溶解して散逸する場合は、サイクル特性が期待できず二次電池として使用するのは難しい

同研究グループは、電解液に電極の反応種が適度に溶解できる環境づくりに着目し、添加剤(アニオンレセプター)の導入や、溶解性の高い電極材料の固定化、電極-電解質界面のナノレベルでの制御などを行ったその結果、リザーバ型蓄電池に用いられるさまざまな材料においてサイクル特性や充放電特性の向上に成功した

金属リチウム二次電池に加え新タイプの「ハロゲン化物蓄電池」も提案

今回の発表では、金属リチウム二次電池と、陰イオン(アニオン)によって電荷を移動する新タイプの二次電池について新たな成果が得られた

まず金属リチウム二次電池については正極材料にリチウムイオンを多量に挿入脱離できる金属フッ化物を用いる系と、硫化物を用いる系の両方で進展があった。金属フッ化物を用いる系では、放電時に生成するフッ化リチウムが固体で反応しづらいため、充電性能が低いという問題があった。そこで、このフッ化リチウムが適度に電解液に溶解するような添加剤として、フッ素に結び付くアニオンレセプターを加えることにより電極を活性化し、課題であるサイクル特性を大幅に向上させることに成功した

正極材料に硫化物を用いる系では、従来は放電時に正極材料の硫黄が電解液に溶解するため充電することができなかった。そこで、硫黄を金属と共有結合した非晶質(アモルファス)な金属硫化物として固定化することにより、充放電を行えるようにした。また、その反応機構について、大型放射光施設SPring-8の高エネルギーX線回折を用いて反応機構を解明したという

アニオン移動型のリザーバ型蓄電池については、マイナス電荷を持つハロゲン化物イオンの移動に着目し、多電子移動による高容量化が期待できるハロゲン化物蓄電池を見いだした。その作動検証も行っている

ハロゲン化物蓄電池では正極材料は銅、負極材料はフッ化ランタン(LaF3)などのハロゲン化物を用いている。電荷移動を担うのはハロゲン化物のハロゲン化物イオンである。

ハロゲン化物イオンが塩化物イオンの場合溶解性の低い電解液や、電解質塩の高濃度化により電極反応生成物が電解液に溶解しすぎるという課題を解決するため、電極-電解質界面で起こるイオンの移動をナノレベルで制御する技術を開発した。この手法は、水溶液系の亜鉛空気電池において、電解液に溶けすぎる亜鉛種の溶解抑制にも生かされており、従来にない高利用率/長寿命化を達成しているという

フッ化物イオンの場合、イオン伝導性が高い固体電解質を用いた全固体電池のモデル薄膜セルを用いて、電極-電解質界面をナノレベルで制御することにより、従来不活性とされてきた材料の活性化に成功高い充放電容量が得られることを明らかにした

●2016年度からは“実用化促進基盤技術開発”の段階へ

今回の成果は、NEDOの傘下で進められてきた革新型蓄電池先端科学基礎研究(RISING)事業に基づくものだ。同事業の研究期間はは2009~2015年度の7年間で、予算は7年間の合計で約200億円。トヨタ自動車や日産自動車、本田技術研究所、三菱自動車といった国内自動車メーカーをはじめとする13社の企業、13大学、4研究機関が参画していた

NEDOは、今回の成果を引き継ぎ実用化に移すための事業として「革新型蓄電池実用化促進基盤技術開発」を計画している。

なお今回の成果は、2016年3月29日~31日に大阪大学吹田キャンパスで開催される「電気化学会第83回大会」で発表される。

MONOist 2016.03.29

  images-3-48-150x150images

【関連する記事】