実質1ドル300円日本の富が搾取される

 1973年――。41年前の年末には、ぴんからトリオの「女のみち」が街中で流れていた。沢田研二「危険なふたり」、かぐや姫「神田川」もこの年のヒット曲。山口百恵のデビューも73年だ。

こんな古い話を持ち出したのは、日本の生活実感が、当時に逆戻りしている可能性があるからだ。安倍政権と黒田日銀はデフレ脱却を掲げ、円安を加速させた。株価こそ上昇したものの、庶民は輸入インフレで苦しみ続けている

10月末の追加金融緩和“黒田バズーカ2”で円安は一段と加速し、12月半ばに1ドル=121円台まで下落。市場関係者は「7年4カ月ぶりの円安水準」と指摘したが、“真の円安水準”は、そんなレベルではなかった

通貨の実力を測る指標に実質実効為替レートがあります。米ドルだけでなく、複数の通貨を対象とし、各国の物価上昇率などを調整したうえで算出する数値ですこの指数を見る限り、現在の円の実力は約40年前と同じなのです」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)

■オイルショックで物価上昇

日銀の統計によると、14年11月の実質実効為替レートは「70.25」(2010年の平均を「100」とした数値)。安倍政権発足時の12年12月は「93.11」だった。

驚いたことに00年代、90年代、80年代と統計表をさかのぼっても「70.25」を下回る数値はなく、73年1月にようやく「68.88」とあった。ドル円相場が変動制に移行したばかりで、1ドル=300円前後だったが、世相は今と似ている

オイルショックで庶民は物価上昇に苦しめられ、店頭からトイレットペーパーや洗剤が消えた。小松左京氏の「日本沈没」が大ベストセラーとなり、「ノストラダムスの大予言」も出版された。巨人軍「V9」もあったが、翌年にはミスターこと長嶋茂雄氏が引退し、一時代が終わった。

当時と違うのは訪日客の増加でしょう。1200万人を超す外国人が来日し、観光や買い物を楽しんでいます。日本の消費を刺激するものの、見方を変えると、日本の富が訪日客に搾取されていることになります」(市場関係者)

富の搾取とは聞き捨てならないが、通貨の実力が下がる(円安)とは、そういうことなのだ

「日本がバブル経済を謳歌していたころ、海外旅行でアジア諸国に行くと、現地の物価がものすごく安くて、日本人は得した気分になった。海外から見ると、今の日本は当時のアジア諸国と同じです」(金融関係者)

世界が感じている円の価値は40年前の「1ドル=300円」なのかもしれない

参考 日刊ゲンダイ 2014.12.20

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