子供の「くる病」→増える

O脚や背中が曲がるなど、子どもの骨の発育不良を起こす「くる病」が増えている。ビタミンDの不足で発症し、栄養状態が悪かった過去の病気とみられていたが、再燃してきた。日光を過度に避けることが一因となっている

■ビタミンD不足が主な原因

大阪府堺市の男児(3)は生後7カ月のころ、アレルギーの検査で血液中のビタミンD不足がわかった。その後、X線検査などを受け、くる病と診断された。父(48)と母(37)は「聞いたこともない病名で、不安になった」と振り返る。

くる病は子どもの骨が軟らかいまま十分に成長できず、手足の変形や発育不全を引き起こす骨の元になるカルシウムを体内に取り込むのに必要なビタミンDの不足が主な原因だ

大阪大学の大薗恵一教授(小児科)の説明では、くる病は栄養が慢性的に不足していた19世紀~20世紀初頭には「ありふれた病気だった」という。その後、ビタミンDが豊富なタラの肝油をとったり、日光浴でビタミンDの合成を促したりすることが効果的だと判明。栄養状態の改善に伴って、戦後はほとんどみられなくなった

しかし、1980年代以降、学会で症例の報告が相次ぐようになった。患者数の統計はないが、最近は小児科の開業医で診る機会もまれではないという。大阪大病院や東京大病院には、症状が比較的重い患者が年間10人ほど、ほかの医療機関から紹介されてくる。

日本小児内分泌学会は2013年、くる病を正確に診断するための小児科医向けの手引をつくった。O脚やX脚といった外見上の診断のほか、X線撮影や血液検査で確定診断する基準を定めた。

大薗さんによると、治療は、体内で働きやすい「活性型ビタミンD」の服用が基本だカルシウムを体内に取り込みやすくなるので、医師が定期的に経過を見ながら調整する。多くの場合、数カ月から1年程度で骨の変形が戻るという

堺市の男児の母は、男児に母乳のみ与えていたが、ビタミンDを多く含む粉ミルクも飲ませるようにした。男児は血中のビタミンD値が正常に戻り、骨の曲がりもなく育っている。母は「ビタミンDについて妊娠中も産後も聞いた覚えがなかった。不足しないように気を付けることを広く知らせてほしい」と訴える

大薗さんは「早期に発見できれば回復も早い。親の気付きがきっかけになることも多いので、子どもの体をよく見てほしい」と話している。

■日光浴と食事で予防

くる病が増えている理由は何なのか。東京大の北中幸子准教授(小児科)は「子どものビタミンD不足は、現在の世界的な傾向だ」と語る。

体内でのビタミンDの合成は、紫外線が皮膚にあたることで進む。だが、紫外線が皮膚がんにつながることへの不安が高まり、子どもの外出を控えたり、日焼け止めを常に塗ったりして、過度に紫外線を避ける習慣が広がった。かつては母子手帳に日光浴を勧める記載があったが、現在は、屋外の新鮮な空気にふれさせる「外気浴」という言葉に置き換わっている

参考 朝日新聞デジタル 2015.07.18

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