子供たちもタブレット1人1代の時代に

インターネットをはじめ情報通信技術(IT)の開発、普及が進む中、教育現場でもIT活用が広まっている政府は平成32(2020)年までに、学校に1人1台の情報端末整備を目指しており、教科書会社などでもさまざまデジタル教材の開発を推進中だ。一方、子供がゲームに熱中するようになったり、せっかく機器をそろえても教師側の習熟不足で“宝の持ち腐れ”になるなどの課題も。より効果的にITを活用するにはどうすればいいか、教育現場の模索が続いている。

■人気キャラを活用

「さあ、タブレット(多機能情報端末)を立ち上げてごらん」

教師の合図で、児童たちが一斉にタブレットを起動し、アルファベット入力などの練習に取り組む。

「やった! レベルが上がった」「わたしもできるようになったよ」

12月8日、東京都杉並区立天沼小学校で行われたIT習熟授業「チャレンジタイム」。5年生以上の全員に貸与されたタブレットには、人気キャラクター「ポケットモンスター(ポケモン)」のブランド管理会社が開発した教材ソフト「ポケタッチ」が導入されており、子供たちはゲーム感覚で基本操作やタイピング技術、情報分類の仕方などを習得している

レベルが上がると画面上のポケモンが進化し、それが見たくてますますトレーニングに励むような工夫もあり、小5の女子児童(10)は「タブレットを使ってまだ2カ月だけど、面白いからどんどん使えるようになった」と話す

■思わぬトラブルも

同校がIT教育を本格化させたのは今年10月から。基本操作を学ばせる「チャレンジタイム」と同時並行で、国語や算数など主要教科にも使用している。児童がタブレットに打ち込んだ答えを、教師が使う電子黒板に映し出したり、電子黒板のデータをタブレットに取り込ませたりと、活用方法はさまざまだ

子供たちは新しい機器に夢中になりやすく、自然と授業にも集中するようになる板書したものをノートに書き写させるよりスピードも速く、授業のバリエーションが増えたこともIT教育のメリットだ」と、研究主任の日向寺勝彦(ひゅうがじ・かつひこ)教諭は強調する

学校で使うタブレットなどの情報端末は学校や教育委員会のコンピューターに接続し、通常は使用も授業時間内に制限されている。しかし同校では「家庭のパソコンなどと同じ環境で学ばせたい」と休み時間も使用可能だ。福田晴一(ふくだ・はるかず)校長は「学校や保護者の見えないところで子供たちがネットを使うようになれば、LINE(ライン=無料通信アプリ)などにはまってしまう恐れもある。自由使用度を高める中で、子供たちが自ら情報モラルなどを習得する指導をしたい」と話す

反面、思わぬトラブルが起きることも。児童がゲームに夢中になりすぎたり、自分以外のタブレットにアクセスしてデータを書き換えたりし、一時的に禁止令を出したこともあった。

教師が指導するだけでは、なかなか行き届かない面があるのも事実。今は子供たち自身でルール作りをさせることも検討している」(日向寺教諭)

■政府が後押し

社会のグローバル化とIT化が急速に進む中、国民の一人ひとりが機器の操作を習得し、ネットなどを適切に使用できるようになることが重要だ。政府は昨年6月、成長戦略の一環として「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定し、平成32年までに全国の小・中・高校と特別支援学校に1人1台の情報端末整備を目指すことにした

文科省の調査では今年3月現在、タブレットを含む教育用パソコンの配備は児童生徒6・5人に1台。タブレットは全国の学校に約7万3千台配備され、昨年より倍増した

自治体もタブレットの導入に積極的なようだ。東京都荒川区は、9月までに区立の小中学校に計約9500台のタブレットを導入、全34校で授業時に1人1台使える体制を整備した。佐賀県武雄市はタブレットを今年度から市立小学校全児童約2800人に貸与、来年度は中学生約1400人まで対象を広げる方針だ。

文科省の担当者は「ITを活用した授業は子供たちの学習意欲を高める効果がある。動画や音声などデジタルならではの特徴をいかした教材が増えるように期待したい」と強調する

■枕草子もデジタル化

教科書会社でも、タブレットなどの活用を想定したデジタル教材の開発に力を入れている。

光村図書は、小学生高学年向けの「古典・漢文」をデジタル教材化。たとえば、「枕草子」冒頭の「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎわ…」との音読に併せ、薄明るい幽玄な山脈の映像が映し出され、児童らが文章の意味をイメージしやすい工夫が施されている。漢文には中国語での音読機能があり、韻を踏む漢詩の美しさを味わえるようになっている

文字と音と映像、3つの要素で同時に子供たちに働きかけることで、より実践的な学習効果が期待でき、深く調べることへの意欲を引き出せるのではないか」と担当者。

東京書籍の英語のデジタル教科書には、音声スピードを3段階調整できる機能があり、個々の習熟度に合わせた学習が可能だ。

■宝の持ち腐れ?

一方、急速なIT化に、学校現場が追いついていない面もある。

会計検査院は今年10月、国の補助金で学校に配備された電子黒板のうち、多くが活用されていないとして、文科省に是正を求める意見を表示した。

平成21年度の補助金で学校に配備した7838台の電子黒板の活用状況を会計検査院が調査したところ、半数以上の4215台は毎月の平均利用率が10%未満で、うち1732台はDVD教材を流すだけなど、電子黒板特有の機能が生かされていなかったのだ。

活用していない理由を教師に聞いたところ、「操作方法が難解」17・4%▽「活用のイメージが持てない」12・7%▽「研修などが不足」12・5%-など、教師側の習熟不足にかかわる理由が4割以上を占めた。

このため文科省では、年内にも都道府県教委に通知し、同省作成の事例集を普及させるなど一層の活用を求めることにしている。

参考 産経新聞 2014.12.27

【関連する記事】