妻が「夜の生活」を拒んだ理由

妻が、もう『夜の生活』は許してほしいって言うんだ。どうしよう

記者(♀)はある日、友人の坂上さん(仮名。65才)から悩みを打ち明けられた。坂上さんはプロダクション社長。バツイチで、10年ほど前に20才年下の妻、晶子さん(仮名。45才)と再婚した彼はこの妻がいとおしくて仕方ない。一男一女をもうけた現在も、人前で恥ずかしげもなくハグ&チューしてしまうほどだ

聞けば、彼は若い妻を満足させるため、食事や健康にも気を使い、懸命に「夜の生活」に励んできたのだという。それなのに…。

理由を尋ねても話してくれない。俺、嫌われちゃったのかな」

記者は、晶子さんとも親しい。白髪頭をうなだれ、消え入りそうな声でつぶやく彼に代わって、本音を聞いてあげることにした。「彼を嫌いになったわけではないの。でもセックスはもう嫌」と晶子さん。

聞けば、彼女は半年ほど前から、「夜の生活」が苦痛になっていた。濡れ方が少ない。快感がないだけではなく、挿入されるたび「すりこ木で傷口をぐりぐりされるような」痛みが伴う。早く果ててくれることを祈りながらひたすら耐えた。どうしてこんなことになってしまったのか

原因は更年期に伴う体の変化だちょうど1年前、父親をがんでみとった直後から、晶子さんは生理の間隔が開くようになり、疲労感が強いなど体調が思わしくないこともあり、産婦人科で治療を受けてきた。毎月1回、薬で人為的に生理を起こす。「もう自然に生理が来ることはないのかな」と、一抹の寂しさを感じていたある日、出血が起きた生理ではない。膣の中はひりひりと痛み、黄色いおりものまで出ている。意を決し、産婦人科医を受診すると40代の男性医師はさらりと言った

老人性膣炎です女性ホルモンの分泌が低下して、膣の潤いが不足してくると、傷つきやすくなります。あなたの場合も、外陰部や膣が乾燥・萎縮している状態で性交したせいで擦り傷ができて、雑菌が繁殖したために炎症を起こしてしまったんですね

説明は分かった。だが「老人性」という響きに傷ついた小柄でほっそりとした体形の彼女は、目のくりっとした童顔のせいもあって30代にしか見えないなのに、膣はもはや「老婆」だとは

「嫌な病名でしょ。調べてみたら萎縮性膣炎という呼び名もあるんですって。いずれにせよ、私がもう〝老人〟だなんて、彼には言いたくなかったの。でも、そんなにがっかりしているのなら、打ち明けてみる

かくして坂上夫妻は衝撃の事実と正面から向き合い、夫は一安心。妻の体をいたわりながら行う「夜の生活」を実践し、以前にも増して仲良く暮らしている

萎縮性膣炎は、閉経前後の女性に最も多く見られる疾患だ。しかし、かように微妙な問題があるため、病院を受診しないばかりか、夫にも秘めたまま、「夜の生活」から引退する女性は少なくないはず

例えば米国の患者数は約3200万人だが、そのうち93%は処方薬による治療を受けられていないと推計されている。こうした患者に向けて塩野義製薬は2013年、経口治療薬「オスフィーナ」を発売。今年1月には欧州での販売承認も取得したが、日本ではまだ販売の予定はないという。なんとも残念。取りあえず、ある日突然、「夜の生活」を拒まれたら、夫はこの疾患を疑うべし。ただし、老人性膣炎という病名は絶対に使ってはいけない

参考 ダイヤモンドQ編集部 2015.06.09

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