夫以外の愛があるから幸せになれる!

● 「すべてを受け止めてくれる相手と 出会う前に人生が終わってしまう」

「浮気ではありません。すべて本気ですから。どの方とも真剣にお付き合いをさせていただいています。たった一人に愛を注ぐよりも、複数の人に愛を注げば、その分多くの愛が戻ってきますもし一つの恋愛がうまくいかなくなれば、その傷はほかの愛で癒されます

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今、複数名の異性と同時に交際する「ポリアモリー」(複数愛、複数恋愛)というライフスタイルが注目されつつある。2015年6月、社会人類学研究者・深海菊絵さんが自著『ポリアモリー 複数の愛を生きる』(平凡社)で紹介してよく知られるようになった考え方だ。

これに遡ること10年前の2005年には、作家・新崎ももさんによる『分散恋愛 複数の男性と恋愛を楽しむ生き方』(宙出版)も発刊されている。“複数”“分散”と言葉は違うが、こちらでもほぼ同様の考え方を実践する人の内面が活写されている

冒頭部で紹介したのは、そんな複数愛を実践するユウコさん(41歳)の言葉だ。

音大卒の音楽講師。結婚して12年目になる1部上場企業勤務の夫(51歳)との間に小学生の子ども一人の3人家族で何不自由なく暮らす。彼女には今、夫以外に、性的関係を含むパートナーが複数いるという。その実態をユウコさんはこう語る。

年上、同年代、年下の、夫とは異なるタイプ3人の男性とお付き合いしていますいろいろ相談に乗ってもらっている年上の彼、会えば他愛もない話で笑いが絶えない同年代の彼、若さと元気を分けてもらっている年下の彼と、複数の男性から同時に愛され、愛することで得られる幸せはとても言葉では言い表せません

そもそも複数愛という言葉もなかった時代、ユウコさんがこれを実践したのは20歳の学生時代にまで遡る。バブル期の残り香漂う時代だったが、やはり交際する異性は一人というのが社会では常識。ステディな一人の異性と交際すると他の異性との関わりは自粛しなければならない──そこにユウコさんは息苦しさを感じた

「いくら愛し合っている交際相手といってもわかり合えないこともありますよね。毎日連絡が欲しい、お互いの記念日には必ず揃って食事に行くといった交際の仕方から、価値観、とりとめのない日常の話題や愚痴、カラオケや映画といった趣味、そして性の嗜好まで……。これらをすべて互いにさらけ出して受け止めてくれる相手と出会うまでに人生そのものが終わってしまうそうした不安がずっと付きまとっていました

 結婚を意識する彼は真面目だけが取りえという男性だった。付き合っていても女性を喜ばすような言葉一つ出てこない。しかも機嫌が悪ければ声を荒げたり、くどくどと愚痴を言い続けたりすることもしばしばだ。別れを決意するほどのことではない。しかし不満は残る

その不満を満たすべくユウコさんは、本命の彼にはない魅力を持つ別男性と並行して交際することにしたそれによって、やがて本命彼への不満はあまり気にならなくなった

ところが2人目の彼との交際が進むにつれて、その彼の嫌な面も目に付くようになるそこで3人目、4人目と交際相手を増やしていくと、もはやどの彼の嫌な面も気にならない結局、結婚前には5人と同時進行で交際していた

結婚を意識する彼には、“高学歴の1部上場企業勤務で安定した収入があり朴訥で大人しい人”、それ以外は求めませんでした。その分、他の彼氏たちには、音楽や映画鑑賞といった趣味が合う、お話が面白く学がある、少し不良っぽい、性的嗜好がぴったり合うなど、それぞれの属性、得意分野を通しての繋がりを求めましたどの彼も自分に合った一面を持っていました。誰を欠かしても自分が自分ではない気がしました

恋愛・結婚事情に詳しいフリーライターの志村ひな子さんは、こうした複数愛を実践する人の心理を次のように解説する。

異なるタイプの異性それぞれの長所だけをつまみます。そして“配偶者や本命の足りないところは別の人に補ってもらえばいい”とそれで本命をはじめとする他の相手一人一人の短所も気にならなくなるのです複数同時交際で、それぞれの“帯に短したすきに長し”のところが補えるからです。ある意味、交際相手を“チーム”と捉えると、自分にとって完璧な異性像が成立します

見事にユウコさんが語る理由と合致する。

● 「婚外での恋愛があるから 家庭がうまくいく

結婚後、しばらくは夫だけだったユウコさんだが、日々の生活での不満はつのっていくばかり。いつしか夫とは険悪なムードに。そんな時、結婚前のことを思い出す

「一緒に暮らす夫への些細な不満、子育てのストレス……それらも含めて受け止めてくれる異性の存在はやはり必要だなと。それでSNSでよくやり取りした人、趣味のサークルや個人事業主が集まるセミナーで知り合った男性と、お付き合いをさせていただくようになりました夫以外のパートナーを複数持つことで、夫にはないものが補えます。精神的に満たされるので、夫はもちろん、子どもにも優しくなれます。婚外での恋愛があるからこそ家庭がうまくいっています

 夫、そして同年代と年下の2人の彼は、ユウコさんが複数名の男性と交際していることは知らない。だが結婚後、複数愛の実践を復活させた11年前からずっと関係が続いているという年上の彼には、夫への思い、子育てでの悩み、日常の些細な出来事、他の交際相手の存在、その交際の仕方など何でも話しているという

 「彼は夫以上に大切な存在です私のすべてを受け止めて、褒めるべきところは褒め、叱るべきところは叱ってくれます。“メンター(助言者)”であり“ソウルメイト(魂の友)”。そうした深い精神的な繋がりでも結び付いています

 まるで新興宗教や自己啓発セミナー主催者への崇拝ぶりを思わせる口ぶりだが、それは年上の彼がS(サディスト)でユウコさんがM(マゾヒスト)という関係によるものかもしれないその世界では“ご主人様(飼い主)”と“奴隷”という役割なのだそうだ

● 性的嗜好の違いからくる不満を 複数の相手との付き合いで満たす

 不倫、婚外恋愛ではSMなどの特殊性癖が介在すると長く続くという声も聞く。複数愛でもそうした傾向が顕著だ。愛知県内に住む薬剤師のエミさん(43歳)もその一人である。地方公務員で5歳年上の夫と2人暮らしの彼女は、SMという特殊性癖での関係でのみ複数の男性とそれぞれ個別に交際しているという。これもまた複数愛の形の一つかもしれない。エミさんは語る。

 「主人とは性的嗜好が合わないことを除けば仲のいい夫婦ですただ結婚生活も15年、“男と女”から、いつしか“家族”になってしまいました。10年くらい前、セックスレスになった頃、夫婦で何度も話し合った結果、性については外で満たそうということになりました最初はすこし寂しかったです。でも、それが互いを認め合う結果となり、性以外での夫婦仲は改善されました

 かつてはアンダーグラウンンドな存在だった様々な特殊性癖も、インターネットを介してその相手を探せる時代になった。いくつかのウェブサイトを閲覧し、掲示板に書き込みを行えば、容易に相手は見つかる

 やがてエミさんはネット上でやり取りした男性と関係を持った。だが喜びもつかの間だった。初めこそそれまで満たされない嗜好をさらけ出せる充実感があったが、自分が求めていたそれとはどこか微妙に違っていたからだ。

 いつしか不満も膨れ上がった。ネットを通して出会った男性との関係も自然と疎遠となった。

「特殊性癖といっても、それでひとくくりにできるものではなく、そのなかにもいろいろな嗜好があるのだとわかりました。もちろん性的嗜好が合えば誰でもいいというわけにはいきません。互いに癒される、お話しして楽しい、日常生活でも何か気づきが得られるような刺激があるなど、ノーマルといわれるごく普通の性を伴う恋愛よりも、マッチする“たった一人の相手”を探すにはハードルの高い世界です

そこでエミさんは割り切り、ネット上やハプニングバーで意気投合した男性とまずはプレイして、「次、また会いたいな」と思う相手との関係を深めることにした。今ではそうした関係を持つ男性は3人いるという

「皆さん、家庭人で社会人でもあるので、会うのは1人につき2ヵ月か3ヵ月に1度のペースです。つまり私から見れば相手は異なりますが毎月1度くらいです特殊性癖を介した交際以外では、家庭や仕事の悩みを聞いてもらったり、食事やカラオケにも付き合っていただいたりしています。それで家庭での不満が緩和されることもしばしばです。性的嗜好を除けばごく一般の恋愛と違いはありません

夫への愚痴を口にすると、時には彼らから「それはご主人のおっしゃることのほうが正しい」などとアドバイスをされることもあるという。

「彼らの存在があるからこそ家庭がうまくいっています。主人も10歳以上年下の若い彼女を作ってからは生き生きとしています。時には主人の彼女のことで相談に乗ることもあります。その彼女も既婚者だから妻としては安心です。独身女性なら結婚などの人生設計もあり、ご迷惑をお掛けすることにもなりかねませんから

● パートナーには明かしているのか?  配偶者に複数愛を勧めるケースも

複数愛を実践している人の話を総合すると、独身者同士、既婚者同士の男女の交際はうまくいく。だがどちらかが既婚、独身と属性が違うと難しいものがあるという。家庭を持っている・いないで互いにわかり合えないところが出てくる、未婚者側が既婚者側に婚姻を迫り関係が悪化する、などがその理由だ。

さて気になるのは、配偶者や交際するパートナーに他の相手の存在を明かしているか否かだ。これについては明かす、明かさないの2通りに分かれているが、実際に話を聞くと、配偶者をはじめとするすべてのパートナーにその存在を明かしているという声が意外に多い。性的関係を持たない既婚者によるプラトニックな婚外恋愛として昨今注目を集めている、「セカンド・パートナー」を持つ人でも同様だ

関係するすべてのパートナーの同意を得てオープンな交際を行えば、精神的にも、また社会的にも“うしろめたさ”を感じることもない。先に紹介したエミさん夫婦のケースがそうだ。

なかには配偶者に複数愛を勧めるケースもある。今は婚外でステディなパートナーはいないが、かつて複数愛を実践していたと語る神奈川県在住で中古車販売業のタツヒコさん(51歳)は、4年前に3度目の結婚をした9歳年下の妻に“タツヒコさんが納得できる人物”という条件で、婚外でのパートナーを複数名持つことを暗に認めているという

「40代後半になった頃、性的な衰えを自覚しました。50歳を超えた今、その面で妻を満足させるのは私では正直難しい。自営業でもあり、資金繰りなど常にストレスにもさらされています。婚姻の義務を果たせていないので、その面で誰か信頼の置ける男性何人かに担ってもらえればと願っています

なぜ信頼の置ける一人ではなく、複数の男性なのか。その理由をタツヒコさんはこう語った。

相手が1人だと関係が深くなりかねない。しかし複数名だと、こじれることなく、浅く広くで末永くいい関係が保てる。何人かの男性に愛されることで家内も満足し、家庭にもそれが反映されるのではないかとの期待からです

ここでも複数の異性の介在により、不満が分散されるというメリットが浮き彫りとなった格好だ

● “複数の相手で不満を分散”の メリットはリスクを上回るか

もっともこの複数愛、「交際相手の1人が嫉妬すればトラブルになりかねない。割り切って付き合える人でなければ難しい」(前出・フリーライターの志村さん)というように、誰彼とでもできるものではない。

ましてや、民法上の離婚事由になる“不貞”を含む関係だ。配偶者やパートナーに明かしていない場合はもちろん、双方合意の上であっても、社会的に様々なリスクを含む行為であることは否定できない。

一人の異性との関係では行き詰まるというリスクを、複数の相手との交際で分散する。いわばリスクヘッジである。成功すれば、不満は解消され、多くの愛に包まれる。リターンは大きいというわけだ。だが複数愛の実践それ自体がリスクであり、失敗すれば損失は計り知れない。複数愛のリスクとリターン、どちらが大きいと考えるかは個々人の価値観による。はたして読者はどう思われるだろうか。

※文中、カタカナ名は仮名

秋山謙一郎

ダイヤモンド・オンライン 2016.03.21

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