多発性硬化症を抑える免疫細胞

手足のまひなどが起きる難病「多発性硬化症」の原因となる中枢神経の炎症を、腸内にある免疫細胞が抑えることをマウス実験で確認したと、国立精神・神経医療研究センターの山村隆・免疫研究部長(神経免疫学)らのチームが英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に発表した。人の腸にもこの免疫細胞が存在すると考えられ、予防・治療法の開発につながる可能性があるという

山村部長らのこれまでの研究で、多発性硬化症の患者は健常者と比べ、腸内細菌の種類が偏っていることが分かっている。腸内環境が病気の発症に関わっている可能性が指摘されていた。

チームは、マウスの腸の粘膜の中にある免疫細胞の一つで、役割がよく分かっていなかった「CD4陽性IEL」に着目。人為的に多発性硬化症を発症させたマウスに、別のマウスから採取したCD4陽性IELを注射したところ、CD4陽性IELが脳や脊髄(せきずい)の炎症部分に移行し、炎症を抑えて症状を軽減させた

抗生物質を投与すると腸内細菌が死ぬとともにCD4陽性IELも大幅に減った。チームは、この免疫細胞を活性化する腸内細菌があり、その減少が病気の発症の一因になっていると推測している。ブロッコリーやキャベツなどに多く含まれる物質がCD4陽性IELを活性化させることも分かった

山村部長は「国内で多発性硬化症の患者が増加しており、食生活や抗生物質の乱用などによる腸内環境の変化が関係している可能性が高い。腸内環境を整えることが予防や治療の鍵になる」と話す。【藤野基文】

【ことば】多発性硬化症

厚生労働省が医療費助成の対象にする指定難病の一つ。免疫システムの異常で、脳や脊髄、視神経などの中枢神経に炎症が起こり、手足のまひ、視力や認知機能の低下、歩行障害などの症状が出る女性や白人に多い。国内では20~40代の女性を中心に約2万人の患者がいると推計され、年々増加している。落語家の林家こん平さん(73)が闘病中。

毎日新聞2016.06.07

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