多様化する→シニアの居場所

昭和22~24年に生まれた「団塊の世代」が今年で65歳以上となり、高齢者に仲間入りした。現役を退き、時間に余裕のできた人たちをターゲットに「居心地の良さ」をキーワードにした場所やサービスが広がっている。(寺田理恵)

ビンテージが魅力

シニアに人気の場所の一つが、オープン3周年を迎えた「代官山蔦屋書店」(東京都渋谷区)。木の床と本棚を基調とするインテリアが落ち着いた雰囲気を醸す。書店らしくない、ほの暗い売り場のあちらこちらに椅子が置かれ、客がくつろいでいる

評判を聞き、仕事の合間に立ち寄ったという東京都板橋区の50代の男性会社員は「必要な本を探すというより、店内を回遊しながら本との出合いを楽しむ場所。あえて探させるような並べ方なので、わくわく感がある」と楽しげだ。

同店は、団塊の世代を中心とした50代以上を「プレミアエイジ」と位置付けており、広報担当者は「家にいるような居心地の良さを体感していただける」と語る

品ぞろえにも特徴がある。店内は文学やアート、建築、車、料理、旅行の各ジャンルの専門書店のような6つの売り場で構成。他の書店にはないビンテージブック(価値の高い古本)も並べる

こうしたやり方が若い世代をも引きつけ、おしゃれなスポットとして知られるようになった。同店が3周年を記念し、日替わりで著名な作家や建築家らを招いて開催した「60歳以上の大人クリエイター」によるトークイベントには、世代を超え、若者も集まった

ゆっくり食事

高齢者の居場所作りといえば、老人クラブや独居高齢者対策のイベントなど、高齢者だけが集まるイメージが強かった。しかし、団塊の世代がゆったりとした時間を楽しむ場所は多様化している

喫茶店業界は、これまでセルフ式カフェが席巻していたが、店員が客席で注文を取る昔ながらのフルサービスが見直されている

ドトール・日レスホールディングス(同)はフルサービス式の「星乃珈琲店」を平成23年から展開。主力の「ドトールコーヒーショップ」の客単価が300円台半ばなのに対し、「星乃」は900円余りと高いが、一杯ずつ手でいれるコーヒーや充実させた食事メニューが好評で店舗数を拡大している

「時間に余裕のある方にゆっくりしていただける。午前中はシニア層の利用が多い」と広報担当者。

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」には、かつて子連れで来店していた団塊の世代が回帰している。23年から、席を広くするなどゆっくり食事ができるように各店の改装を進めた。メニューにも「アラスカ天然たらば蟹」などぜいたく感のある旬の食材を取り入れ、売り上げや客単価を伸ばしている

広報担当者は「特に土、日曜は孫も連れた3世代で食事をする家族が多く、価格が高めのステーキがよく出る」と話す。シニア向けのサービスは若者も取り込んで広がっており、団塊の世代は今後も消費に影響を与えそうだ。

■団塊世代は約1000万人

団塊の世代とは、一般に昭和22~24年の3年間に生まれた世代を指す。26年まで広くとらえると、その数は約1000万人。総人口の約1割を占め、消費動向に大きな影響を与えてきた

平成19年に60歳に達し、大量退職による労働力不足などが起きる「2007年問題」が懸念された。しかし、多くの企業が基礎年金の支給開始年齢である65歳をめどに雇用を継続したため、19年以降も働く人が多かった。高齢者への仲間入りで介護のニーズが増大するとみられる一方、時間に余裕ができることにより消費の担い手としても期待されている

参考 産経新聞 2014.12.21

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