売り上げも書店数も減少続く

例年、1月の最終週は、前年の出版統計が発表になります。今年も、1月26日に、発表となりました。各種報道で目にされた方も多いと思いますが、かねてからの予想通り、大変悪い数字です。

 書籍の売り上げは、前年比4%減の7,544億円。雑誌の売り上げは、前年比5%減の8,520億円。書籍は、ピークだった1996年と比較すると、約31%の減少。雑誌のピークは97年でしたが、その時と比較すると、実に45.5%の減少です(出版科学研究所調べ)

 書店数も減っています。2014年の全国の書店数は、13,943。1999年と比べると、37.5%減ったことになります(アルメディア調べ)。

 こうした数字だけを見ると、出版不況は、もう行き着くところまで行ってしまって、「崩壊」とか「沈没」とかいった形容がふさわしいような気がします

果たして、日本の出版は、もうダメなのでしょうか?

実は、そう単純な話でもないんですね。今回は、統計から見られる(あるいは見えない)、日本の出版界の現状についてお話したいと思います。

出版統計には限界がある

 あまり知られていないのですが、出版統計は、国内を流通するすべての出版物の売り上げを集計しているわけではありません。よく引き合いにだされる出版統計に『出版指標年報』(全国出版協会・出版科学研究所)、『出版年鑑』(出版ニュース社)があります。どちらも、ベースとなっている(※追記2あり→末尾)のは、大手取次の「トーハン」のデータです。そこから業界全体の数値を推計した数字が、発表されているのです。

つまり、取次を経ない販売金額は、そこには含まれていません。中でも、「出版社による直販」「アマゾン直接取引」の2つが要注意です(※末尾に追記)。

直販」、つまり出版社から読者への直接販売は、取次を通りません。そのため、取次のデータをベースとした上記統計には、算入されていないのです。直販の売り上げはどのくらいあるのでしょうか? 「出版月報」が、95年7月に公正取引委員会が発表した調査結果を紹介しています。それによると、書籍の7割、雑誌の9割が、取次ルートであったとのことです。つまり、裏を返せば、書籍では全体の3割が、統計からもれている、ということになります

次の「アマゾン直接取引」とは、アマゾンの「e託」と呼ばれるサービスのことです。これは出版社が取次を介さず、アマゾンと直接契約を交わして商品を搬入する取り引きです。直接取り引きですから、当然、上記の出版統計には入りません。また、アマゾンが日本での売上数値を公表していないことから、どの程度の規模なのかもわかりません。

しかし、筆者が入手した資料によると、「e託」の参加出版社数は、2013年11月時点で、約2700社にのぼる、とのことです。日本国内で日常的に出版活動をしている出版社は、約3000社あると言われているので、その9割が契約しているのです

書店数については、よく書店数の減少ばかりが取り上げられますが、JPO(日本出版インフラセンター)のまとめによると、書店数は確かに減っていますが、総床面積(総坪数)は減ってないようなのです。となると、書店の数の減少は、書店という業態自体が窮地に陥っていることを示しているのではなく、むしろその逆に、地域大手や全国大手の書店チェーンが、既存の店舗のスクラップアンドビルドによる規模拡大を続けているからかもしれません

出版統計については、もう一つ大きな要素があります。電子出版(電子書籍)が、無視されているのです。次にこの点について、説明しましょう。

電子出版を入れてみると……

 たとえば、アメリカの出版統計では、「紙+電子」の数字を出すことが、当たり前のようになっています。アメリカの書籍市場では、2007年のKindle登場以来、順調に拡大してきた電子書籍が、紙の書籍(黄色の部分=一般書)の減少を補い、書籍全体の売上は、ほぼ横ばいに推移してきたことが見て取れます。

 日本でも、紙の書籍と電子書籍の売上を合計したらどうなるか。インプレス総研「電子書籍ビジネス調査報告書」のデータを元に、2013年までの数値で計算してみたのが以下です

残念ながら、「出版指標年報」が暦年ベースなのに対して、「電子書籍市場規模」は年度ベースで、調査対象にズレがあります。そのため、本来、二つを単純に合計するのは適切ではないのですが、それを割り引いても、同じ傾向が読み取れると思います。

なお、雑誌の方は、電子雑誌を加えても、はっきりと減少を示しています。これは、やはり問題ではあります。一方で、コミックは、紙+電子の相乗効果で、市場が拡大しています(これについては、別の媒体で書いた(http://japan.cnet.com/sp/t_hayashi/35059325/)ので、繰り返しませんが、電子コミックが、コミック全体の1/4を占めるようになりました)

ともあれ、紙の出版統計にも、電子の出版統計にも限界があり、出版産業にビジネスモデルが大きく変化する中、それだけで市場全体を判断するのは無理、ということが言えると思います。その「外」の変化に対する想像力が必要です。

電子出版が切り開いた新しいビジネス(たとえば、「LINEマンガ」などの無料コミックサービスや、「アルファポリス」「小説家になろう」など、ネットだけで著者を開拓するニュータイプの出版サービスなど。こうした事業者の収益は電子出版統計にもまだ十分反映されていはいないと考えられます)の収益も加えれば、出版市場が一方的に「崩壊」しつつある、という見方は誇張が過ぎると思います

参考 THE PAGE 2015.01.27

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