国産困難な戦闘機→ついに飛んだX2

様々な部品を流用して生まれたX-2

 2016年4月22日(金)の午前、防衛省技術研究本部および三菱重工が開発した先進技術実証機X-2が、航空自衛隊の小牧基地(愛知県)において初飛行しました。今後、次世代の戦闘機に必要とみられる各種技術を実証する飛行試験が行われます

かねてより「心神」の非公式愛称で知られるX-2その形状から日本初の「国産ステルス戦闘機」と報じられることもありますが、本機はあくまでも純粋な実験機です脚部は三菱T-2練習機のもの、キャノピー(風防ガラス)は川崎T-4練習機のものなど、既存品を流用してコスト削減がなされており、レーダーやミサイルといった戦闘システム、武装も搭載しません。また、X-2を“原型とした”戦闘機が開発されることもありません

ステルスだけじゃない X-2で試される最新技術

 X-2で試験される主な技術的要素は、「飛行推力統合」「ステルス」「機体構造」「システム統合」の4つです

「飛行推力統合」とは戦闘機として必要な高い機動性を実現するものX-2は機首の上げ下げを行う「スタビレーター(水平尾翼)」、左右の傾きを変化させる「エルロン(補助翼)」、左右の横滑りを修正する「ラダー(方向舵)」といった通常の飛行機で用いられる各種動翼に加え、2基搭載された国産のIHI XF-5-1エンジンの排気の向きを直接傾けて姿勢を変化させる「推力偏向パドル」を有しています

 スタビレーターなどの動翼は機体が前進する際に発生する風を利用して姿勢を変化させるため、速度が遅かったり空気の薄い高い高度では非常に働きが悪くなりますしかし推力偏向パドルならば、速度や高度に関係なく姿勢を素早く変化させることが可能です

また、X-2はパイロットが操縦しませんパイロットはあくまでもコントローラーによって飛行制御コンピューターにどう動きたいかを伝えるだけで、具体的にラダーを動かすといった機体制御は、全て飛行制御コンピューターで動くソフトウェアが行っています

X-2は人間が操縦しないことにより、意図的にバランスを崩しやすく設計されていますバランスを崩しやすいということは、素早く姿勢を変化させられる、ということでもあります。また、もし戦闘や事故で主翼の一部が欠損するなどしても、ソフトウェアが空力特性の変化を吸収する「自己修復飛行制御」によって、パイロットはいつもどおりにX-2を動かすことができます

「ステルス」は主に相手のレーダーによる被探知を防ぐ技術ですレーダーは電波を発信し空中の物体に反射して戻ってきたものを受信することによって、距離や方向を探る装置ですX-2には電波をなるべく元の発振源方向に反射させない機体設計「形状制御」が施されていますコクピットへもレーダー波が入り込まないよう、キャノピーは電波反射材でコーティングされ、機体の一部には電波吸収材も使用されています

なぜ戦闘機の国産は難しいのか X-2、その真の目的

「機体構造」は、その名の通り機体の構成ですX-2には軽量かつ強靭な新しい非金属性の複合材料が多く用いられていますさらに機体の各部にレーダーアンテナを埋め込み、全周囲の索敵・警戒を実現する「スマートスキン」を搭載するための“構造”が盛り込まれました。ただし「スマートスキン」自体の搭載は行われていません

「システム統合」とは「飛行推力統合」「ステルス」「機体構造」といった各種技術を実際に飛行機としてまとめるための技術です例えば空を飛ぶための航空力学と、ステルスのための理論は全く関係がありません。それら個々の全ての要素が高いレベルで実現可能であることを試験します

ただ実際のところ、「飛行推力統合」「ステルス」といった各要素は他国で実用化済みの既存技術がほとんどであり、本当の意味での先進的な技術とはあまりいえませんこうした複数の技術をシステム統合し、ひとつの飛行機として完成させる技術を養うこと、それこそがX-2最大の目的ともいえます

2年後の2018年にはこのX-2で実証された技術をもとに、次世代戦闘機を国産するか否かを決定するとされていますが、これはあくまでもお題目です

現代戦闘機の開発は10年以上の歳月と数兆円の予算が必要なため、リスクを分担する国際共同開発が主流になりつつあり、これまで単独で開発してきたフランスやスウェーデンでさえ次世代機を諦めています(ただし開発費を無限にねん出可能な中国は例外です。したがって、日本単独で国産戦闘機を開発する可能性はかなり少ないといえるでしょう

X-2は将来の戦闘機国際共同開発において、日本が重要な役割を担えるようにするための「先進技術実証機」なのです

関 賢太郎(航空軍事評論家)

乗りものニュース2016.04.24

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