和牛に対抗→韓牛輸出も硬くてまずい

昨年11月に安倍晋三首相が昼食で利用したソウル市内の韓国料理店が話題になっているという

店は、安倍首相が使った個室に「安倍首相の部屋」の札を掲げ、座った椅子には「安倍首相の椅子」というプレートを付け、首相が食べた焼き肉メニューを「安倍首相コース 9万5000ウォン」(なぜか英語名は“President(大統領) Course”)と名付けて売り出しているそうだ

11月2日午前に韓国で行われた日韓首脳会談の終了後、朴槿恵(パク・クネ)大統領が安倍首相に「これからどうされますか」と聞いたところ、首相は「焼き肉を食べに行きます」と答えたという。朴大統領に安倍首相を昼食に招待しなかった後ろめたさがあったのかどうかは知らないが、焼き肉好きの首相は街中で本場の味を楽しめた上、肉の「質の良さ」にも満足して、帰国前のソウルを満喫した

筆者も出張のため15年ほど前にソウルの焼き肉店を訪れたことがあるが、店の牛肉(韓国の肉だろう)は硬かった記憶がある。その時と比べると、韓国の牛肉はかなり上質になったという

ただ、韓国に年に何度も訪問している自称“韓国通”の女性会社員(51)は、「韓国で何度も韓国産牛の焼き肉を食べているけれど、一度もおいしいと思ったことがない」と証言する。先月、ソウル市内の高級焼肉店でランチを食べたとき、韓国産牛コースを最初頼んだら「店員に『硬いですよ』と何度も念を押された上、『この店のいちばん人気は生カルビですが…』と輸入肉のコースを薦められた。韓国人の間でも、韓国産牛は値段が高い割にまずいという認識のようだ」と話した

こんな意見がありつつも韓国は今、韓国産牛の独自ブランド「韓牛」の売り出しに懸命だ。

朝鮮半島にはもともと、“朝鮮牛”と呼ばれる褐色の在来の牛がいた役畜目的の牛だったが、韓国では和牛に刺激されて、肉食専用へと品種改良された。黒毛が主体の和牛とは見た目こそ異なるものの、和牛と同じように上質の肉には“霜降り”がある和牛を大いに意識したといえよう。ちなみに、熊本や高知のあか毛牛は“朝鮮牛”が混じっている

昨年末には「韓牛」の肉の香港への輸出が決まり、海外進出が本格化しようとしている。韓国経済新聞によると、韓国産業開発研究院が報告書をまとめ、「1等級以上の韓牛は香港・北京・東京など北東アジア地域の主要都市を攻略すれば輸出に成功する可能性が高い」と分析した

韓国は米国やオーストラリアなどと自由貿易協定(FTA)を相次ぎ結び、米韓FTAは2012年に発効した。米豪はいずれも牛肉輸出大国であり米韓FTAでは発効から15年後に牛肉の関税撤廃が決まっている

米韓FTAには、韓国農家が激しく抵抗した。「農家が潰れる」というのが理由だった。韓国統計庁の統計によると、肉牛の飼育農家は11年に16万戸以上あったのが15年3月には10万戸まで減少した。一方、飼養頭数は約300万頭から約260万頭で、減少は飼育農家のそれに比べ小幅にとどまっている。韓国の畜産は壊滅状態にはなっていないのだ

数週間前に韓国を視察した新党改革の荒井広幸代表らも韓国の畜産事情に驚いたという。荒井氏らが訪れたソウル近郊の京畿(キョンギ)道・安城(アンソン)市にある飼育農家は、日本の福岡の農家で学んだノウハウを生かしているそうだ。安城の農家は荒井氏にこう説明したという。韓国国内の農家が減っても牛の頭数が減らないのは飼育が大規模化しているためであり、農家にはFTAに耐えられるだけの体力がついてきている

荒井氏が「どういう対応が必要になるのか」と聞いたら、農家は自信に満ちた顔で「品質です」と即答した。荒井氏は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の締結を控える日本にとって、韓国の畜産事情は大いに参考になるという。「安倍首相がいう『攻めの農業』に似ている。和牛も品質が非常に優れているから、韓国の農家の話は勇気づけられた」と語る

では、韓国の機関が「輸出競争力がある」と太鼓判を押す「韓牛」は、日本にも進出するのか。農林水産省動物衛生課によると「韓国の牛も牛肉も、日本には入らない」。

韓国では2000年に口蹄(こうてい)疫が発生し、その時点で日本は輸入を禁止にした。「韓牛」ブランドが出たのはその後のことだが、韓国では14年7月以後も京畿道などで口蹄疫の発生が確認され、農水省はホームページなどで警戒を呼びかけている。動物衛生課は「口蹄疫が日本に侵入する可能性はきわめて高い状況が続いている。韓国ではまだ口蹄疫問題が落ち着いていないので、輸入は認められない。お土産として韓国の牛肉を持ち込むこともできない」という

韓国側がまず最優先すべきことは、品質よりも衛生面や「食の安全」ということだろう。(今堀守通)

参考 産経新聞  2016.01.12

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