台湾・国民党→ついに内紛含みに

1月16日の総統選で敗れた台湾の中国国民党の党勢回復が見通せない。総統選の候補者だった朱立倫氏(54)の主席辞任に伴う補選の受付を今月22日にようやく行ったものの、路線対立が早くも顕在化している補選の結果、有力女性候補2人のいずれが主席に就任しても、内紛の火種を残したまま民主進歩党政権に立ち向かうことになる

党名から「中国」削除案も

国民党は3日の中央常務委員会で、1月16日の総統選と立法委員(国会議員に相当)選の敗北を総括する報告書を採択した。報告書は、敗戦は予想していたものの、総統選で約300万票という大差と、立法委員選で改選前から29議席減らして35議席に転落した結果は「予想と相当程度の差があった」と認めた。その上で、敗因は2014年11月末の統一地方選の敗北後、党改革の成果を出せず、本来の支持者と中間層の双方の支持を得られなかったためだと分析。「00年に初めての政権交代で直面した時よりも厳しい局面であることは疑いがない」と危機感をあらわにした。

これに先立つ1月末には、敗戦当日に党報道官を辞任した楊偉中氏(44)ら党内の若手が、党名から「中国」を削除し正式名称を「国民党」とすることや、「党産」と呼ばれる一党独裁時代の流れをくむ党営企業や不動産などの財産の精算、党内の民主化などを訴えた

党名から「中国」を外す案は、00年と04年の総統選で敗れた時にも議論されたことがある今回も、有権者の「台湾人」意識が高まり、世論調査で自らを「中国人」だと答える人がわずか3.3%(15年6月)にとどまる中、党のイメージを中間層寄りにする案として提案されたが、主席補選にいち早く名乗りを上げた洪秀柱前立法院副院長(67)は、直ちに「反対」を表明。他の候補者にも賛成者はなく、立ち消えになっている

背景には、退役軍人とその家族で作る党内組織「黄復興党部」の存在があるとみられる。黄復興党部には、国共内戦に敗れて台湾に渡ってきた外省人系の党員が多く、「中国人」意識が根強く残る。1月24日付の自由時報によると、現在約32万人の党員のうち、黄復興党部には9万人以上が所属している

過去3回の主席選の投票率は50%台だが、黄復興党部の党員は投票に熱心で、主席選や党内予備選の「勝負の鍵を握る」という

党名変更を提案した楊氏は黄復興党部の解散も訴えたが、外省人の洪氏は黄復興党部の支持が高い中国大陸ではなく台湾を「本土」とみなす「本土派」を代表し、洪氏に対抗する形で出した黄敏恵代理主席(57)も組織票の動向を気にしてか、解散には賛成していない

■本土派VS非本土派

ただ、補選は外省人で「非本土派」の洪氏と、本土派の黄氏の事実上の一騎打ちになる見通しだ黄氏は立候補を届け出た22日、記者団に「絶対に本土派、非本土派(の戦い)ではない」と強調したが、本土派の勢力を結集して洪氏の当選を阻止するために立候補を取り止めた人物もおり、双方の対立の根は深い

洪氏は総統選の候補者だった昨年10月、台湾は「最後は(中国との)統一が必要だ」と発言。朱主席(当時)から「台湾の主流の民意から離れている」と批判されて、候補者交代を強いられた経緯がある

黄氏も主席補選は「主流の民意と非主流の民意」の戦いだとした上で「支持されるのは中道路線だ」と述べ、洪氏を牽制(けんせい)している

国民党は伝統的に党中央は外省人系、地方組織は本土派が強い。西南部・嘉義市の市長を経験した黄氏が主席に当選すれば本土派の代表として国民党の「台湾化」を象徴する人事になるとみられるがその結果、外省人系が離党するのではないかという見方もある

加えて、国民党は次世代の有力者の育成が進んでいない本土派の元幹部ですら、20年の次期総統選も「(外省人系の)朱前主席で戦うしかない」と話しており、党勢回復の見通しは暗いままだ。(台北支局 田中靖人)

産経新聞  2016.03.06
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