反ロシア色を強める中国→どこえ向かう

西側のメディアや政治機関は中国やロシアを、西側と対立する陣営のようにとらえがちだ。政府は西側よりも独裁的で、開かれた機関や報道の自由に対して懐疑的であり、国際的な論争においてはしばしば、欧米の利害に対抗して手を組む存在だというわけだ

こうした特徴づけは完全な間違いではないが、この両国が互いに争い疑念を抱いている点を見逃している。中ロの敵対関係は今日、再び脚光を浴びている中央アジアで中国がロシア抜きの反テロ連合を提案したことで両国関係が今後数十年間にわたって緊張する可能性が増しているからだ

中央アジアは両国にとって、何世紀にもわたって戦略的な不安定の根源であり続けてきた特に中国にとってはそうだった。中央アジアの各民族が定期的に反乱を起こしたからだ

ロシアと中国は18世紀半ばまでに安全保障の目的で中央アジアへの支配強化を図ったこの努力は、ロシアがシベリアを統治下に置き、清朝が「新疆省」(現在の新疆ウイグル自治区)を設置したことで実を結んだ

ただ、それ以降の大半の時期において、ロシアの影響力は中国をしのぎ続け、旧ソ連時代にはついに中央アジアの各共和国だけでなく、モンゴルをも影響下に置いた

盛り返して来た中国

しかし、今日になって、勢力を盛り返した中国が大々的に中央アジアへ影響力を及ぼしてきたことは、ロシアを憂慮させている中国が提案した反テロ連合は「大国の外交関係」の最新形態だもしも構築に至った場合、中国と中央アジア各国は、諜報や監視、軍事の面で協力することになる

すでにパキスタンやアフガニスタン、タジキスタンがこの構想に関心を示し、他の各共和国にも交渉が打診されている。現時点で詳細があまり明らかになっていないのは、多くの点で行き詰まり、提案が白紙に戻ってしまう可能性があることを示唆している。これは主に、格下と見られる国々を相手にする場合、中国の外交は不器用かつ自信過剰になりがちだからだ

とはいえ、この提案は中国が最近、反テロ支援の目的でアフガンに7000万ドルの供与を認めたのに続くものだ中国の習近平主席が提唱した、中央アジアなどを経て中国と欧州を経済的に繋ごうという「一帯一路」構想とも関係している

こうした取り組みの一切は、ロシアを明確に除外している中国とロシアが中央アジア諸国とともに設立した上海協力機構がこれまで15年間にわたって続いてきた点からすれば、注目すべきことだ

現地のイスラム過激派組織によるテロ行為も、中央アジアでの重大な懸念材料だ。実際にイスラム国(IS)は最近、同地域に勢力を伸ばす試みを重ね、中国に対しても以前に増してはっきり狙いを定めている

中央アジア人(ほとんどがテュルク系民族)は中国とロシアのいずれの国でも、人種的または文化的な多数派に属していない両国には計2500万人近い中央アジア人が住んでいるが、彼らは現地のコミュニティに溶け込めておらず、少なからず憤りと緊張を呼んでいる

少数民族であるウイグル人が再び中国政府に抵抗することは彼らに対する北京政府の扱いをみれば考えられることだ新疆ウイグル自治区では最近中国の軍隊や警察が急激に増強され、一部地域は戒厳令が敷かれているのにほぼ等しい状態にあるこの状況が発展すれば、中国の軍や警察が中央アジアにも駐留することもあり得る

中国が国際社会で傍若無人に振る舞っていることも、中央アジアでの外交攻勢や同盟構築の取り組みを目立たせている

中国は今年に入って、米軍や日本の自衛隊などが駐留するジブチ共和国で進めてきた海軍基地の建設を完了した。中国にとってはこれが、国外初の軍事基地となる。それは人民解放軍の組織改革が行われた直後のことだ。組織改革では陸軍の縮小が実施される一方、世界各国に駐在する中国軍に国防の範囲を超えた権限が与えられた

ロシアのプーチン大統領はウクライナやカフカス、そして中央アジア諸国など「near abroad(旧ソ連邦諸国)」が国外から介入されることに、歴史的な理由から不快感を示してきたそのロシアに対しても、中国の態度は変わらない

米国はどう動くか

中央アジアで中ロ間の衝突が起こる場合に大きな不確定要素になるのは米国だ約15年間アフガニスタンに軍事介入を続けた米国にとって、中央アジアの安全保障は国益に直接大きく関わっている米国は中国に肩入れするかもしれないし、逆にロシアと組むかもしれない。あるいは三つどもえの戦いもありうる

しかし、中国と米国の同盟実現は現時点では臆測の域を出ない米中ロの三ヵ国は、しばしば外交政策で互いに疑念を抱くこともあったが、同時に互いを必要とすることも度々あったこのため、三国が中央アジアで対立することはないと考えられる。少なくとも今の段階では

東洋経済online  2016.04.26

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