原油安→温暖化対策の好機

原油安は続き、2014年のピーク時の半分以下となった再上昇の材料は今のところ見当たらず、原油安がしばらく続くとみられている。利益を得る産業がある一方で打撃を受ける産業もある。またオイルマネー縮小で金融市場にも変調が出そうだ。広範に影響が出るとみられており、気候変動対策も影響を受けるだろう。

 原油安は、電力価格やガソリンなど石油製品、鉄鋼、パルプ、アルミなどエネルギー多消費型半製品の価格を引き下げ、また運輸や農業でもコスト低下となる世界銀行はエネルギー輸入国では原油価格が10%低下すれば国内総生産(GDP)を0.1~0.2%引き上げると分析している

金融危機時には先進国の二酸化炭素(CO2)排出量が10%も減ったように、景気とCO2排出量には密接な関係があり、景気拡大によりCO2排出量は増えそうだ

化石燃料との価格競争力低下から再生可能エネルギーへの悪影響を懸念する声もある。しかし、再生可能エネルギーは、多くの国で、長期の固定価格の買い取りや、電力事業者に対する再生可能エネルギー比率の義務付けなどの支援制度で支えられている。直ちに事業に影響を与える可能性は少ないだろうが、原油安が継続すれば次第に制度見直しの圧力が強くなるだろう

もう一つの影響は燃料補助金の問題だ。例えばインドネシアではGDPの3.3%のエネルギー補助金が使われており、補助金はインドではエネルギー価格の2割、インドネシアでは3割にも相当する。日本版炭素税である地球温暖化対策税はGDPの0.05%以下だが価格上昇効果でCO2を0.2%減らすと見込まれている。エネルギー補助金によるCO2排出増加は無視することはできない

エネルギー補助金見直しによって財政赤字対策と気候変動対策の一石二鳥を、と主張していた国際通貨基金(IMF)は、政府の財政負担が減れば補助金改革の意欲を低下させる、と懸念している

しかし原油安はエネルギー支払いを「節約」する。これをどう使うかで気候変動対策を進めるチャンスにもなる。省エネ投資はエネルギーコスト削減効果で投資回収するが、初期コスト負担が障害となっている。「節約」した資金を初期投資に活用することで省エネ投資は進む

景気が上昇すれば新規投資も活発になる。効率の悪い技術を使えば、エネルギー効率の悪さが今後何年にもわたって固定化されることになる。エネルギー効率基準の役割は大きい

負担増を伴う政策については一般的には国民からの評判は悪いが、エネルギー価格低下は規制導入、エネルギー補助金削減、炭素税導入などの負担増を吸収するから政策調整のチャンスになるだろう

得た財源を技術開発や低炭素技術の普及に使えば政策調整は受け入れやすいだろう

最近の原油安はシェールガス革命によって石油やガスの市場バランスが変わったことが大きな要因といわれており、いずれ上昇に転じるとみるのが自然だ原油安で得た利益を活用して技術開発を進め、拡大する世界の温暖化対策市場を狙う戦略はアベノミクスの成長戦略の候補になるかもしれない

参考 日本経済新聞 2015.01.22

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