危険な菌をすべて殺す→エアロシールド!

創業9年目のベンチャー、エネフォレスト木原寿彦代表は語気を強めた。韓国で猛威をふるうMERS(中東呼吸器症候群)の話だ。SARS(重症急性呼吸器症候群)と比べて国内の報道は加熱していないが、発症時の致死率は10%を超えている

厚生労働省によれば感染経路はいまだ不透明。院内感染は飛沫感染や接触感染が原因とされる意見がある中、先月には英ロンドン大学のピーター・ピオット教授が「空気感染する可能性がある」と指摘したという報道もあった

そんな中、アメリカなどでは細菌やウイルスの空気感染対策が当たり前。一方、「日本は対策が遅れているんですよ」と木原代表は言う。

空気感染対策について、厚生労働省のガイドラインは結核菌・麻疹ウイルス・水痘ウイルスなど』と記載があるだけ。でも実際は、インフルエンザやノロウイルスも『空気感染の可能性がある』と多くの関係者が指摘しています」と木原代表。

「医療従事者が基準とする厚生省のガイドラインへの記載が遅れていると言わざるを得ないのではないかと」

紫外線で殺菌する『エアロシールド

エネフォレストは空気感染対策用の紫外線殺菌装置『エアロシールド』を開発するメーカーだサイズは小さなエアコンほど

「メカニズムとしては天井面に紫外線の層をつくり、通った空気を殺菌する人に当たると日焼けの原因になるため、人が触れられないエリアをつくる。室内は人の動きや体温や空調などで自然と空気が対流している。その対流により効果が出るわけです

現在、慶応義塾大学病院、大分県立病院などの医療施設や、高齢者施設、食品工場などに約1000台を導入。エボラ対策などにあたった米国疾病対策センター(CDC)の基準を満たしており、日本では唯一の空気感染対策製品といえるものだ

紫外線(UV-C)を使うのでノロウイルス、結核、すべての菌に対して殺菌効果があります紫外線が菌の核を直接死滅させるので耐性菌が出てこないんですよ

同じしくみで今回のMERSコロナウイルスにも有効という。

エアロシールドの強みは人がいる空間でも安全に使える構造だルーバーの形を工夫することで紫外線が人に直接当たらないようにしている。下位機種で25平米、上位機種で50平米ほどのスペースを殺菌できる。

「臨床検査会社BML社に菌量を計測してもらったところ、装置のルーバー付近の細菌なら数秒程度で死滅していることがわかりました

家庭用の100V電源で使えて、メンテナンスはランプ交換のみ。基本は企業向けだが、依頼を受けて一般の家庭に設置したこともある。ぜんそくや糖尿病など、疾患の併発が気になる家庭で試験導入を進めているそうだ

日本では珍しい紫外線殺菌装置だがじつはアメリカではポピュラーな存在だ。なぜアメリカでは空気感染対策が進んでいたのか。

アメリカではポピュラーな空気感染対策

アメリカでは院内感染が起きたとき訴訟がおきるんですよ」と木原代表は言う。

感染が起きたのは病院の管理ができてないからだといわれる。病院は当然保険をかけていますが、ハード(装置)をつけていないと保険もおりないんです」

保険会社としては院内感染を経営上の“リスク”としてとらえる。病院にどれだけの菌量がいるかを測定し、リスクを数値化して把握する必要があるというわけだ

一方、日本では、病室あたりの菌量に対して規格はあるものの罰則がないそのため院内感染が起きたとき、隠ぺい構造が発生してしまうのが問題だと木原代表は言う。

「日本医療福祉設備協会の規格はあるが、守られてない。アメリカにはバイオテロもあるため日本より危機意識が高いのではないかと」

エネフォレストが製品の開発を急いだ理由も院内感染だ。

木原代表の祖父が高齢者施設に入所した際、入所者が肺炎で亡くなったことがあった。空気中の菌量を調べてみると基準値より高い菌量が検出された

「そこから開発を早めた経緯があります。日本で全然ないので必要なんじゃないかと」

日本唯一ともいえる空気感染対策製品を開発している大分のスタートアップ・エネフォレストだが、木原代表はもともと医療業界に属していたわけではない。なんと前職はセブン-イレブン。医療機器はおろかハードを作った経験もなかったという。

開発ノウハウは一体どこから手に入れたのか。

空気感染対策、親子ベンチャーで挑む

じつは、エネフォレストは親子経営。木原代表の父親がもともと電気の専門的なノウハウを持っていた。

「父がプラントとかケーブルテレビの電気工事とかをやっていたんです。自衛隊のパイロットをやっていたこともあって、流体力学に強い。設備設計の会社にもいたので建物の構造もわかる。なら一緒にやってみようかと」

木原代表がセブン-イレブン時代の経験を生かして営業面を請け負ったわけである。

しかし創業当初は営業に行っても「何者だ」と怪しまれ、断られつづけた。「ギリギリあきらめかけたことが何回もあった」と木原代表。

現在はキヤノンマーケティングジャパンを始めとした販売代理店をつうじて販路を拡大中。大手空調機メーカーとの提携も考えながら、今後の展開を進めているそうだ

今後は厚労省に働きかけ、空気感染対策のガイドラインづくりにまい進しつつ、地元・大分で製品開発を進めていきたいと話していた

「日本は危機意識が薄い。今は啓蒙活動を続けていくしかないと思っています」

参考 週アスPLUS 2015.07.06

 

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