南シナ海は20兆円の貿易圏である

● 南シナ海で今、 何が起こっているのか?

2015年、中国の習近平国家主席は「南シナ海の島々は古代から中国の領土だ。主権を守るのは中国政府が果たすべき責務である」と述べています。また、中国軍の幹部は、「南シナ海は、2000年以上の昔から中華民族が漁業を営み生活してきた中国の海である」と主張しています

習主席は就任以来、海洋進出を続けていますが、周辺国の中国への反発は高まる一方です

2015年、中国は、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島海域に7つの人工島を建設しました。このことは、フィリピンやベトナムなど周辺国に脅威を与えているだけではなく、自由航行を脅かすものとしてアメリカや日本も警戒しています

オバマ大統領は、2015年9月に行われた米中首脳会談において、南シナ海における国際法の順守と航行の自由の確保を習主席に求めましたが彼は「自国の固有の領土である」と一蹴しました

そこでアメリカは、国際法の順守を中国に求めるために、アメリカ第七艦隊所属のイージス駆逐艦「USSラッセン」を派遣します。そして、中国が造成した人工島周辺を哨戒しました国連海洋法条約では、「通航は、沿岸国の平和、秩序または安全を害しない限り、無害とされる」と定めています無害通航権といわれるもので、仮に領海であっても中国はアメリカ軍艦の航行を妨げることはできません

しかし中国は、「アメリカの行為は、沿岸国の平和に脅威を与えるものであり無害通航を逸脱している」と主張しています

● 独自の領海線を主張する中国

複数の国が管轄権の主張をしている海域内に強引に人工島を作ることは、「力による現状の変更」であり許されません中国は、南シナ海を包み込むように「九段線」という線引きを行い、その内側を中国の領海であると主張しています。下記の図を見て下さい。

この結果、東南アジア諸国との緊張が高まっています。

● 緊張が高まる 中国と東南アジア諸国

国連海洋法条約では沿岸から最大12海里が領海として認められますが、海域全体を領海とすることは許されませんしかも、九段線の内側には、フィリピン、ベトナム、台湾などが領有権を主張し実効支配している島々が存在しています領有権問題が起きている島の多くは、元は日本が管理していた島々であり、第二次世界大戦後、日本が放棄したことにより、沿岸国が、我先にと実効支配に動き出し領有権を主張するようになりました

中国は、1974年にはベトナム戦争末期、ベトナムから米軍が撤退した隙に、南ベトナム軍と交戦し、パラセル(西沙)諸島を占領することに成功しましたさらに1988年にはスプラトリー諸島に侵出し、ベトナム軍とジョンソン南礁で衝突しています

また、1995年には、フィリピンから米軍が撤退した機会に、同国が領有権を主張しているミスチーフ礁を占領しました。ミスチーフ礁は中国の軍事拠点になっています。

中国に脅威を感じた東南アジア諸国は、2002年、ASEANの会議に中国を招聘し、「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)」を締結しましたDOCには、有事の際は武力による威嚇や武力に訴えることなく、平和的手段により解決し、無人の島嶼(とうしょ)に新たに人員を常駐させないことなどの規定があります

しかし、この宣言には法的拘束力もなく、中国は実質的に黙殺している状況です2012年には、フィリピンが領有権を主張するスカボロー礁も軍事占領しています中国は、DOCも独自の解釈をし、人工島の造成などの強硬策を推進しています

このように緊張が高まっていますが、日本が輸入する原油の8割は、この南シナ海を通過しています。また、タイ、ベトナム、シンガポールなどの国々との貿易で、南シナ海を通航する貿易額は、輸出入合わせて20兆円南シナ海は、アジア経済の大動脈なのです

山田吉彦

ダイヤモンド・オンライン  2016.03.17

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