北朝鮮から鉱物満載→中国企業

 中国商務省が北朝鮮からの鉱物輸入を禁止する通知を出した後も中朝国境では鉱物とみられる物資を満載したトラックが中国側へ続々入っていた。毎日新聞が入手した中国吉林省和竜市での映像には、中国が国連制裁決議に沿って北朝鮮の資源を遮断した2日後の7日も、中国企業が搬入を続ける様子が映る映像を見た専門家は「積載物は石炭のようだ」と言う

北朝鮮に渡る資金が国民生活に使われるなら禁輸の対象外となるが、その線引きは明確ではない。【和竜(中国吉林省)西岡省二】

北朝鮮に対する「前例がないほど強力」(パワー米国連大使)な国連制裁決議が採択されて1カ月以上が過ぎた。だが、中朝国境では「民生目的か否か」のあいまいな線引きを隠れみのに取引が続いている模様だ一方、北朝鮮では今後の制裁の影響を懸念する住民もいる

中国吉林省和竜市の住民が7日、同市南坪鎮にある南坪税関付近で撮影した映像には、鉱物らしきものを満載して走る大型トラックが映っている

映像や証言によると、大型トラック1台が税関で停車手続き後、南坪側に出ると同様の大型トラック13台と合流した北朝鮮側では、後続のトラックも橋に向かっていた

北朝鮮側の咸鏡北道(ハムギョンプクド)には茂山(ムサン)鉱山があり、積載物はそこで採掘された可能性が高い年間650万トンの鉄鉱石を生産し周辺に石炭もある年間1億ドル(約108億円)の収益があるとされる

2005年、吉林省の「延辺天池鉱業貿易」など3社は茂山鉱山の50年間の開発権を取得。映像の大型トラックにも同社の表記があった。取引をどう民生目的と証明したのか、という電話取材に同社は「関連情報を話したくない」とだけ答えた。

5日に中国商務省が出した通知は石炭、鉄鉱石などの輸入を禁止するが「完全に民生目的」の場合は、核や弾道ミサイル開発に関連しないと証明できるものについては対象外としている

北朝鮮産鉱物の輸入について、延辺大学国際政治研究所の金強一所長は「車両での量は多くなく、支払う額も限られている。これを『民生関連』と判断している可能性はある」と指摘。ただ、判断基準については「中国が自ら処理しなければならず『どの部分をどの程度認めるか』というのは、当局も苦慮している」と話す

◇北朝鮮、制裁影響ピリピリ 市民「何かが起きる」

大連(中国遼寧省)-南浦(ナムポ)(北朝鮮西部)航路。中朝間を行き来する船舶貨物量の8割を占めるという。3月中旬、北朝鮮の商社関係者が大連で南浦行きの積み荷を出そうとしたが、税関当局に拒まれた。「ビールや化粧品が制裁対象か判断できない」。税関職員はこう伝えた。「民生関連」ならば持ち出せる。だが積み荷がそれに該当するか当局も基準が分からず、商社側に「少し時間がほしい」と申し出た

大連の税関は年々厳しくなっている」。商社関係者は証言する。最近、発電用発動機を持ち出そうとしたところ「ミサイル発射時の電力として使われる可能性がある」と拒否された。「大型トラック用のタイヤなら『ミサイルを運ぶ可能性がある』と中国側は主張する。すべては中国の判断だ

北朝鮮では制裁の影響を危惧する声が高まる。特に中国が鉱物資源の輸入を原則禁止にしたことで、だぶつく石炭への懸念が広がる

ある石炭関連業者が言う。「中国の取引先から(北)朝鮮で石炭を消費すれば電力供給が増えると勧められるが、それは筋が違う

国内で売れば、代金は外貨でなく北朝鮮の通貨ウォンで支払われる石炭の掘削機などは定期的に部品交換が必要だが、それらはウォンで購入できない。石炭業者は苦境に立たされ一部では金鉱山開発など、生き残りの道を模索する動きも出ているという

住民生活に大打撃が予想されるにもかかわらず、金正恩第1書記は強硬姿勢を取り続ける。9日には新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)高出力エンジンの噴射実験に踏み切ったと主張した。

制裁の打撃をかわす策を講じないどころか、金第1書記の指示に従い資金提供もなく事業を強要される例も少なくないという

その典型例とされるのが平壌の「黎明(リョミョン)通り」だ。年内に金日成総合大学の科学者、研究者の住宅などを建設する。約4000世帯分と言われる一方、国が提供するのは軍人建設者向けだけ資金は関係企業が負担しなければならないという。「人民は『何かが起きる』と予想し、節約に努めるなど対策を講じ始めている。だが、上層部は制裁対策を考えていない」。指導部に近い関係者が不満を漏らした

制裁による国内経済への打撃は半年後、明らかになる--。北朝鮮ではこんな見方が広がる。だが住民の多くが今、その影響を推し量れずにいる

毎日新聞2016.04.10

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