割に合わない恋はしない?

2015年度版少子化白書が公表されました。その中で驚きを持って迎えられたデータがあります。20代30代の恋人がいない男女の4割が「恋人は欲しくない」と回答しているというものです。その理由として上位に上がっているのが趣味や仕事、勉強などの他にやりたいことがある、でした

恋愛に興味を持つかどうかは価値観の問題です。本来は取り立てて騒ぐものではないのかもしれません。しかし、古代から20代前後というのは恋愛を謳歌する時期でした恋愛の結果としての生殖は生物としての究極の存在理由であるはずですお金がなかろうが、性的な魅力へのコンプレックスがあろうが、禁じられた恋であろうが、まさに万難を排して異性とのロマンティックな接触を試みるのがこの年代のはずですそれが他にやりたいことがあるからという理由で恋をしないとは何なのでしょう。いったい彼らに何が起こっているのでしょうか

◆経済的不安が原因か?

まず、全般的に今の日本の若者の多くはかつての若者と比べると経済的な問題や不安が大きい傾向にあります。かつては「今はお金ないけど、いずれは…」と夢を持てたものです。ですが、景気の先行き不安やブラック企業問題が騒がれるに連れて経済的な夢や希望が持てなくなりました経済的問題は生活不安を引き起こします不安が長引くと人は抑うつ的になるのですが、抑うつ状態では異性への興味が削がれることが知られています。まず、このことが「恋人いらない」に影響していると考えられます

◆もてはやされなくなった若者たち

次にマスコミが若者をもてはやさなくなった状況も影響しているかもしれませんかつての若者は人口のボリュームゾーンを構成し、流行や斬新なファッションの最先端として注目もされていました。そして調子に乗りました。調子に乗る高揚感は生きる勢いを生み出します。恋をする勢いにもつながります

しかし、人口のボリュームゾーンの高齢化とともにマスコミに注目される年代も高齢化していますかつては「女子大生ブーム」「コギャルブーム」、割と最近では「JKブーム」もありましたが、昨今では「美魔女ブーム」にマスコミが注目しますお金が若者ではなく中年期のボリュームゾーンを中心に動く中で注目されない若者たちは、かつてよりも自分たちを華々しく思いにくい状況もあるようです

◆自信が持てない男性

また、人は社会的な拒絶に過敏な生き物です誰かに嫌な顔を向けられれば相手がだれであれ傷つきます。この傾向は特に日本人では高いようです。日本人の若者の人間関係は「この人と仲良くできるかどうか」ではなく、「この人に嫌がられないかどうか、無視されないかどうか」からスタートしていることが明らかになっています。言い換えれば、「自分は嫌われるかもしれない」「相手にされないかもしれない」と心配してしまうと人間関係が始まらないのです

この点に関しては現在の日本の労働市場では特に男性には深刻な事態になっています。まず、非正規雇用の問題があります。また正社員でも、浮沈の激しい産業構造の問題で発給と先行き不透明感という若者がたくさんいます。

男性は社会的地位と自信が連動しやすい生き物です将来の明るい業界の有利な職種に就かない限り、不利な社会的立場にいると感じてしまいます。そうすると「自分は相手にされないだろう」という不安から、恋人を作ろうという気持ちになりにくいでしょう

人は失敗しそうなことは避けて、結果が保証されたことをやろうとする傾向がありまあう。その結果、趣味や仕事といった恋愛よりも成果が上がりそうなことにのめり込むことで、恋愛で傷つくリスクを避けていると考えられます

◆確実性の高いリターンを求める女性

女性の場合も男性と近い理由で恋愛が億劫になるケースもありますが女性はそれだけでないでしょう

そもそも女性は恋人や配偶者の選択に男性よりも慎重になりがちですなぜなら、女性のほうが恋愛や結婚による生活の変化や負担が大きいのです。たとえば、男性本位の性産業や性的情報発信が盛んな中で、女性にとって苦痛で屈辱的な性的な営みを女性が喜ぶという誤った認識を持った男性も少なくありません子どもを産めばもっと過酷な負担が待っています

また、女性は本能的に男性の生活保証能力は気になるものです現代の経済事情の中では羽振りの良い男性も収入や将来性が堅実な男性も希少です密かに借金を抱えている、浪費癖がある、といったリスクのある男性も少なくありませんよっぽどスペックが高い男性でない限り、お付き合いはリスクの高い人生の投資になるのです

であれば、費用対効果という意味では勉強には自分自身の将来性、趣味には失敗のない満足感や充実感というリターンが伴いますつまり、恋愛よりも確実性の高い人生の投資なのです

◆明るい未来を描けない若者達

最後に筆者が感じる最大の原因は、若者の多くが「未来はもっと良くなる」と信じていないことです20歳前後の若者を対象にした筆者の独自調査では9割近くの若者が「未来は現状維持ならラッキーだが、もっと悪くなるかも」と信じています。そのため、「長生きしたくない」とも思っているようです若者に夢がないのです。若者から夢を奪っているのは間違いなくその上の世代が作った社会構造です。「今の若者は…」と嘆くよりも、社会構造の何が問題かを探ることが重要と言えるでしょう

参考 mocosuku woman 2015.06.25

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