前立腺がん、発見は増えても死亡数は減らない

ステージ1より、ステージ2と告げられたほうが、患者はより不安になるそれで手術を押しつけやすくなるんです

「なるほど。ところで私には、どんな治療法が向いていますか?」

「それを検討する前に、まずは治療が必要かどうかを考えてみましょう」

「必要じゃないってことですか?」

「まあ、そう結論を急がないで。
健康な人でも、多くの場合、前立腺に“がん”があります他の病気や事故で亡くなった人を解剖したとき、あなたの年齢(60歳)だと、50%にも見つかるんですよ。80歳を超えると、9割です

「そんなに……」

“がん”を放っておくと、転移して人の命をうばうというのが、これまでの“がん理論”ですね。とすると、PSA検査がなかった時代、たくさんの男性が前立腺がんで亡くなっていたはずです
そこであなたに質問ですが、その当時、前立腺がんは男性死因の何パーセントを占めていたと思いますか?

がんの保有率がそんなに高いなら、10パーセントくらいは前立腺がんで死んでいたのでは?

ケタが違います。PSA検査がなかった1975年、前立腺がんで亡くなる人は、全男性死因のわずか0.3%でした。男性の50%から90%にも存在する“がん”は放っておいても、転移しないし、人を死なせない“無害ながん”なんです

「すると私のも……」

「こうした無害ながんを、医学用語では”潜在がん”といいます。PSA検査は、潜在がんを多数見つけだしているのだと思います
2011年のあなたが属する年齢層の前立腺がんの発見数は、最小だった1980年と比べると、22倍にもなっているのです

「ミサイルの軌跡みたいですね」

これだけ発見数が増えると、これまでの”がん理論”によれば、前立腺がんで亡くなる人はかなり減るはずですよね

「はい」

「ところが、前立腺がんで亡くなる人は、まったく減っていないのです

※第7回に続く。4月17日(日)公開予定です。

■近藤 誠
1948年東京都生まれ。73年、慶應義塾大学を卒業。76年、同医学部放射線科に入局。79~80年、米国留学。83年より2014年まで同医学部講師。12年、「乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、がん治療における先駆的な意見を、一般人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績」によって「第60回菊池寛賞」受賞。現在は東京・渋谷の「近藤誠セカンドオピニオン外来」【http://www.kondo-makoto.com/】で年間2000組以上の相談に応えている。

幻冬舎plus2016.04.10

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