刀剣女子→にぎあう美術館

若い女性の間で日本刀がブームになっている名付けて「刀剣女子」名刀が展示されている博物館や美術館は、一目見ようとする女性ファンで大にぎわいだ。その熱狂ぶりや背景を追った。【広瀬登】

照度を落とした部屋に、冷たく光る日本刀がケースに入れられ、ずらりと並んでいた。その前を女性たちの影がうごめく。東京・上野の東京国立博物館(東博)の本館13室、常設の刀剣コーナーだ。ケースに鼻を付けんばかりに見入ったり、スマートフォンをかざして写真を撮ったり、思い思いに楽しんでいた。

「うわあー」「あっ、これだねー」。取材に同行してもらった「刀剣女子」の女子大生2人が、あるケースの前で目を輝かせた。中には国宝・三日月宗近(みかづき・むねちか、7月20日まで展示)。平安時代の京都の刀工、宗近の作と伝えられ、刀身に映る文様「刃文」に三日月の形が見えることから名付けられた。豊臣秀吉の正室、高台院の遺品として徳川秀忠に贈られ、徳川家に伝来した由来も名刀にふさわしい

「土日には100〜200人の列ができます」と会場整理に特別に配置された男性職員。1月ごろから部屋には女性来館者が急増、特に20代が多いという

日本有数の刀剣コレクションを誇る徳川美術館(名古屋市)でも、5月まで特別公開されていた名刀「鯰尾藤四郎(なまずお・とうしろう)」目当てに東北や九州から女性たちがやって来た。下降気味だった来館者数も前年比3〜4割増。公開に合わせて鯰尾藤四郎のステッカーなど関連グッズを製作、1日100個ほど売れる人気ぶりだ。

2口(くち)(口は刀剣の数え方)の名刀を結ぶものは何か。

「オンラインゲームがきっかけです」。同行の刀剣女子は口をそろえる。ゲームの名は「刀剣乱舞−ONLINE−」。動画配信などを手掛ける総合サイト「DMM.com」のゲーム部門「DMMゲームズ」が1月にインターネットで公開、ユーザー数は100万人を突破したという。

プレーヤーは「歴史改変をもくろむ歴史修正主義者による過去への攻撃」に対抗するため、名刀を擬人化したイケメン男性キャラクター「刀剣男士」たちを育成する。プレーヤーにはそれぞれお気に入りの「推しメン」がいるといい、中でも戦闘能力が高い三日月宗近の人気は群を抜く。

加州清光(かしゅう・きよみつ)」も人気キャラクターの一つ。「刀自体は宗近ほど有名ではないので、裏にしまっていた。来館した女の子に『ありませんか』と聞かれ、2月頭ごろから試しに置いてみた」と語るのは、清光を所蔵する倉敷刀剣美術館(岡山県倉敷市)の担当者。ツイッターでうわさが広まったとみられ、全国から女性が訪れた。「愛刀家は年配の男性が多かったが、イメージが一転した」と言う。

東博で三日月宗近に酔った茨城県つくば市の大学院生、池田晴奈さん(23)は「実物は芸術品のようで、持ち主の人生や歴史的背景にも興味が広がります。軍記ものなども読み返したい」。

ゲームに登場する名刀に限らず、日本刀への注目度は高まっている。別冊宝島「日本刀」シリーズ(宝島社)は、ゲームの配信開始前に発売した第1弾から今年5月発売の第3弾までの3冊で、計46万部を超えた。

博物館や美術館にとってブームは大歓迎。東博広報室の奥田緑さんは「刀剣を見終わったら、博物館を一回りして楽しんでくれればうれしい」と期待する

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