全国の約900万戸は熊本地震で倒壊の恐れ

 一連の熊本地震は最大震度7を記録し、家屋が倒壊して住民が下敷きになるなど多数の犠牲者が出た。熊本県益城町では、2階建て住宅の1階部分がつぶれた家屋のすぐそばに、壁の一部が剥がれた程度の軽微な被害で済んだ住宅も目につく。国土交通省は平成7年の阪神大震災を教訓に家屋の耐震化を進めているが、いまなお全国約900万戸は今回と同規模の地震で倒壊する恐れがあるという有識者は「九州地方などは対策が遅れていた」とも指摘する。(市岡豊大、小泉一敏)

今回の地震は震源が比較的浅く、家屋倒壊の危険があるとされる震度6弱以上の地震が16日までに7回発生した。熊本県建築課によると、県内約68万戸の耐震化率は25年時点で75%。担当者は「それほど悪い数字ではない」と話すが、27年度末までに達成目標としていた90%には到底及ばない数字だ

ただ、今回のような地震について、神戸大の石橋克彦・名誉教授(地震学)は「未知の活断層も多く、全国のどこで発生してもおかしくない」と話す

阪神大震災では昭和56年以前の古い耐震基準の住宅で被害が集中したため、震災後には56年以前の建物に耐震診断を義務付ける耐震改修促進法が施行国交省は改修費用を助成するなどして4年後までに住宅全体の耐震化率95%を目指す。だが、実際には平成15年に約75%だった耐震化率は25年に約82%と10年間で7ポイントしか増えていない

原因の一つは費用だ。耐震診断には10万~20万円かかる上、柱や屋根などの耐震改修に100万~200万円かかる自治体によっては改修費用の2割程度は補助されるが、経済的負担は避けられない

名古屋大の福和伸夫・減災連携研究センター長(耐震工学)は「地震が頻繁に起こらない地域では耐震化が遅れる傾向がある。南海トラフ巨大地震が想定される東海地方に比べ、九州地方は進んでいない」と分析。「寝室などを部分的に耐震化する『一室補強』という手法もある。まずは家具の固定などできることから始めるべきだ」と話す。

ただ、耐震補強や家具固定などの必要性は、震災が起こるたびに叫ばれてきた。熊本県の担当者は「どこで地震が起きてもおかしくないのだが、実際にはほとんど地震がなかった地域でもあり、(耐震への)意識が高くなかったのは否めない」と打ち明ける。

群馬大大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)も「地震で倒れた家屋や家具で圧死する危険は既に十分認識されているはず。それでも対策が進まない根本的な原因は、災害による死が自分のこととして受け止められていないから」と当事者意識の欠如を指摘している

産経新聞2016.04.23

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