全個体電池の走行距離→限界を打ち破る

電気自動車(EV)の製品展開に積極的ではないと言われるトヨタ自動車。これは、EVの満充電からの走行距離が100~200km程度と、ガソリン満タンであれば500km以上走行できる内燃機関車と比べて圧倒的に少ないことが最大の理由だ

現行のEVに用いられているリチウムイオン電池の重量や体積当たりの充電容量(エネルギー密度)で、満充電からの走行距離が500km以上のEVを開発するには、車両を大型化して大量の電池を搭載するしかない。

トヨタ自動車が、現時点で実用的なエコカーとしてプラグインハイブリッド車(PHEV)の「プリウスPHV」に注力しているのは、充電が切れたらガソリンを使って走らざるを得ないとはいえ、EVのような走行距離の問題が存在しないからだ

 

全固体電池の実用化目標時期は2020~2025年

トヨタ自動車は、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度が低いことに起因するEVの実用性の低さを解決するために、より高いエネルギー密度を持つ「革新型電池」の研究開発を進めている

環境関連製品・技術の展示会「エコプロダクツ2012」(2012年12月13~15日、東京ビッグサイト)では、革新型電池の1つである全固体電池の開発成果を披露した全固体電池は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の二次電池の技術開発ロードマップにおいて、2020~2025年ごろの実用化が目標となっている

トヨタ自動車が開発を目指す「革新型電池」トヨタ自動車が開発を目指す「革新型電池」。全固体電池とリチウム空気電池がある。ちなみにNEDOは、2020~2025年に全固体電池、2030年にリチウム空気電池の実用化を目指している。(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 全固体電池とはリチウムイオン電池に用いられている電解液を、固体電解質に置き換えることで、構成材料を全て固体にした電池のことである全固体電池のメリットは2つある1つは、負極-電解質-正極-負極-電解質-正極……というように、電極と電解質を直接並べて直列化した構造を持つ電池を製造できることだ。現行のリチウムイオン電池モジュールでは、負極-電解液-正極から構成されるで電池セルを、銅線やバスバーなどを使って直列接続しているが、これらを1個の電池セルの中で実現できるようになる。つまり、電池セルを封止する金属パッケージ、電池セルをつなぐ銅線やバスバーを省略できるので、電池のエネルギー密度が大幅に高められるというわけだ

全固体電池と電解液を用いるリチウムイオン電池の比較全固体電池(右)と電解液を用いるリチウムイオン電池の比較(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

もう1つのメリットは、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める上で必要になる、高電位化が可能な正極材料との相性の良さであるこれらの新たな正極材料は、電解液と接触すると反応して分解してしまうが、固体電解質であれば分解は起こらないというのだ

全固体電池の実用化に向けて課題となっているのが、固体電解質のイオン伝導度の低さであるイオン伝導度が低いと、電池内部において、正極から負極、もしくは負極から正極に電力が移動しにくくなるため、電池の充放電のしやすさの目安となる入力/出力密度が低下してしまう従来の固体電解質のイオン伝導度は、一般的なリチウムイオン電池の電解液と比べて3分の1以下にとどまっていた

トヨタ自動車は、東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構との共同研究により、リチウムイオン電池の電解液と同等のイオン伝導度を持つ固体電解質「Li10GeP2S12」を開発した

新たに開発した固体電解質のイオン伝導度新たに開発した固体電解質のイオン伝導度(グラフの右端)。一般的なリチウムイオン電池の電解液であるLiPF6(グラフの左端)よりも高い。(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

この固体電解質と、一般的なリチウムイオン電池に用いられている正極材料と負極材料を使って試作した全固体電池は、従来の全固体電池と比べて出力密度が5倍となる2000Wh/l(リットル)以上を実現したという電池内部で、負極-電解質-正極という組み合わせを7個直列で接続しており、出力電圧は約28Vである

sp_121217ecopro_toyota_04.jpgsp_121217ecopro_toyota_05.jpg左の写真は、試作した全固体電池に用いた固体電解質。右の写真は、試作した全固体電池で、出力電圧が約28Vであることが確認できる。(クリックで拡大)

 ただし、Li10GeP2S12は、負極材料の黒鉛と接触すると反応しやすい。このため、負極材料と接する固体電解質には、従来の材料である「75Li2S・25P2S5」を用いている。このため、入力密度は、従来の全固体電池とほぼ変わらない。

 この他の課題としては、高価なGe(ゲルマニウム)の安価な材料への代替が挙げられるという

 参考 MONOist   2012.12.17
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