体内受精の性行為→3億8500万年前

それは、われわれが知っているような「愛」ではなかったかもしれないが、性行為の技術は約3億8500万年前に既に発達していた──板皮(ばんぴ)類と呼ばれる骨板に覆われた魚類の化石を調査したオーストラリア・フリンダース大学(Flinders University)などの進化論科学者チームが、19日の英科学誌ネイチャー(Nature)に研究論文を発表した。

研究チームが調べたのは、板皮類の一種「ミクロブラキウス・ディキ(Microbrachius dicki)」の化石。体長約8センチのこのミクロブラキウスは、現在の英スコットランド(Scotland)、エストニア、中国にあたる地域に生息していた。スコットランドでは1888年に最初の化石標本が発見された。

最も原始的な有顎(ゆうがく)動物である板皮類については、これまで知られている中で最古の脊椎動物であり、人間の祖先とも考えられている。今回の研究を通じ、生命史におけるさらなる名誉を得ることになった。

論文によると、ミクロブラキウスは、体内受精をするために交尾を行ったと考えられる最初の生物種だという

ミクロブラキウスの雄は、クラスパー(交接器)と呼ばれるL字型の硬い生殖突起を持ち、これを用いて雌の体内に精子を送り込んでいた。この生殖方法は、水中に放卵する方法に比べてより効率的と論文は指摘している。

雌は小さな一対の骨を発達させており、この骨を用いて、交尾するのに適切な位置に雄の生殖器を固定していたという

フリンダース大学のジョン・ロング(John Long)教授(古生物学)は「ミクロブラキウスは『小さな突起』を意味するが、科学者らは数百年の間、この骨質の一対の突起が実際に何のためにあるのかという謎に頭を悩ませてきた」と語る。

「われわれは今回、この大きな謎に答えを出した。これらの突起は交尾のために存在するもので、雄の交接器を雌の生殖器部内の適切な位置に固定させるものだ

体内受精はこれまで脊椎動物の進化史上ではかなり後期に発生したと考えられていた

頭部と胴体を分厚い骨板で覆われた板皮類は約7000万年の間、世界の海、川、湖を支配していたが、約3億6000万年前に、謎の大量絶滅で全滅してしまった。

板皮類は、現在の爬虫(はちゅう)類、鳥類、人間を含む哺乳類などでみられる顎、歯、一対の手足などの特徴を後世に伝えたとされる

今回の研究が正しければ、ミクロブラキウスの「交接器」は数億年かけて進化し「男性器」になったということが考えられる

ミクロブラキウスの交尾技術の解明は2013年、ロング教授がエストニアのタリン工科大学(University of Technology in Tallinn)の所蔵品の中にある化石に偶然目をとめたことがきっかけになったという。

参考 (c)AFP  2014.12.10.20

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