伸びる「パックご飯」市場

銀座三越や小田急百貨店、ビックカメラや空港免税店で話題を集めた商品がある。「パックご飯」だ。

■海外へのお土産に日本のパックご飯

アップファームソリューション(東京都渋谷区)が作った「米風土(マイフード)パックごはん」は、第16回米・食味分析鑑定コンクール国際大会で優勝した最高品質の鳥取県のコシヒカリでできている。富士山のデザインに英文イラストで商品説明を加えたことのほか、様々な要因――おりからのインバウンド客増加、日本食ブーム、中国人の爆買い、国の課税方針の変更で食品が免税対象商品となったこと――の影響もあり、大きな話題となったのだった

ちなみにこのコンクールは、米・食味鑑定士協会が主催する、新米の食味鑑定による国際コンクール。1999年に始まった当初の出品数は400未満だったが、第16回は10倍以上の4000点強が出品されている

国の農水産物輸出戦略では、2020年に輸出総額を倍増させ1兆円とする予定になっているその中でも重点輸出品目としていわゆる「包装米飯」(パックご飯)が採り上げられているのだ

■順調に成長している市場

レトルトを除いたいわゆる「パックご飯」、無菌包装米飯の生産量は、過去20年でコンスタントに拡大して11.6倍の12.8万トンとなった。市場規模は400億円になっている

商品ブランド数は大手6社だけでも73ブランドだが、この「パックご飯」の製造には大規模装置が必要なため、大手に中小業者や流通業者がプライベートブランドの製造を委託している(OEM)ため、ブランド数は数えきれないほどの状況となっている

通常の精米の消費がパン食に押されて減少し続けているのに対して、こちらは着実に成長、各社とも業績は順調である

■サトウ食品のマーケティング戦略転換の成功

そもそも「パックご飯」は、それまであったレトルトの米飯が品質が悪いことからサトウ食品工業 <2923> が1988年に新たに開発した、比較的新しい商品ジャンルだ。

同社は、自社の餅の無菌包装技術を応用したところ、現在のような炊き立ての味を保った長期保存が可能な無菌のパックご飯を作ることができたのだった

 当初は炊飯器を持たない若者の一人暮らし世帯をターゲットとしていた。TVコマーシャルも「玄関開けたら2分でご飯」というキャッチコピーで放映、一定の成功を収めた

 しかし同業他社がすぐに追随したことや、一人暮らしの若者をターゲットとするインスタント食品やおかずなど競合品が多いこともあって、販売は伸び悩んでいた

同社が目をつけたのは、単身高齢者や高齢者夫婦2人暮らしの世帯が多い関西のある地域での売れ行きだった。その地域にあるスーパーマーケットで、パックご飯の販売が好調であったという

そこで同社は基本戦略を転換。商品コンセプトを「ブランド米の本格的な炊き立てのおいしさが味わえる簡便な個食」とし、メーンのターゲットを、味にうるさい高齢者に変えた

さらに販売チャネルも食品スーパーに変更。その後の快進撃のきっかけが得られたのである。

東日本大震災でも「おいしい」備蓄食としての評価が高まり、日常的な常備食としてますます普及に加速がかかったのだ

■テーブルマークが新ブランド さらに広がる世界

パックご飯の魅力である「炊き立てのうまさ」「簡便さ」「保管のしやすさ」は既に浸透した。そして今、また新たな商品コンセプトの「ご飯」が発売されて、ターゲットがさらに拡大しはじめている

テーブルマークが2015年9月に発売した、女性だけの開発チームによる働く女性をターゲットとした「おいしく健康」をテーマにした「美食生活」ブランドのご飯だ

コシヒカリとユメピリカのブランド米に、レタス2個分の食物繊維を付加した健康維持食品。商品化はすべて女性目線で開発され、従来のパックご飯では捕えらえない新たなターゲットを取り込んで進化させる予定という

パックご飯市場は、生産の技術革新によって今後さらに多様な健康機能が付加されるだろう低価格化、賞味期間の延長もますます進み、世界的な日本食人気も相まって売れ行きも伸びるだろう。パックご飯は、今後も商品コンセプトやターゲットのさらなる変化、拡大が期待される、実に身近でとても特異な商品の1つなのだ。

参考 (ZUU online 編集部) 2015.10.28

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