人民元の下落は収束したのか?

8月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともに急落した。基準値の当月高値は10日に付けた1米国ドル=6.1162元、当月安値は27日に付けた同6.4085元で、8月末は前月末比4.3%元安・ドル高の同6.3893元で終えた。一方、市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、初旬に付けた1米国ドル=6.2097元が当月高値、25日に付けた同6.4128元が当月安値で、8月末は前月末比2.6%元安・ドル高の同6.3768元で取引を終えた(図表-1)。そして、長らく市場関係者の悩みの種だった“基準値と市場実勢の大幅乖離”はほぼ解消されることとなった(図表-2)。

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[ 8月11日の決定と市場の反応 ]

中国人民銀行は11日、人民元の対米国ドル為替レートの基準値の市場化・基準性を高めるため、基準値の形成メカニズムを改善すると発表した。この決定に基づいて、11日には基準値が市場実勢と同水準に設定されたため、市場実勢の下落を止める防波堤となっていた許容変動幅(基準値±2%)の下限が遠退くこととなった。そして、その日の市場実勢は新たな許容変動幅下限に向けて下落した。翌12日には、下落後の市場実勢と同水準に設定されたため、その日の市場実勢も新たな許容変動幅下限に向けて下落したしかし、12日には、1米国ドル=6.45元近辺で元買いドル売り介入が行なわれたため、大きく値を戻して(下ヒゲの長い陽線となって)取引を終えたその後はこの介入ラインが下値のメドとなって、再び膠着状態となっている(図表-3)

一方、世界の通貨の動きを見ると、8月は主要通貨に対しては米国ドルが下落、新興国通貨に対しては米国ドルが上昇することとなった。主要通貨では欧州ユーロが米国ドルに対して前月末比1.4%上昇、日本円が同2.2%上昇となった。一方、新興国通貨ではマレーシア(リンギット)が同8.9%下落、ロシア(ルーブル)が同8.5%下落するなど下落した通貨が多かった。こうした動きの中で、中国の通貨(人民元)は米国ドルに対して急落したものの、下落率は平均的なものに留まったため、前月号で指摘した人民元の割高感はまだ残っている(図表-4)。

[ 今後の展開 ]

さて、当面の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.4元を挟んだ一進一退を予想している(取引レンジは1米国ドル=6.35~6.45元)。米国では利上げが視野に入っている一方、中国では株価急落による景気下ぶれ懸念が強まっており、引き続き人民元は売られ易い。しかし、1米国ドル=6.45元近辺では元買いドル売り介入が予想されることから、介入警戒感が壁となって下値トライも容易ではないだろう

但し、米国が利上げに踏み切りアジア通貨がさらに下落するようだと、中国は介入を停止する可能性がある(図表-5)。現在は介入で下落を食い止めているだけなので、介入を見送れば再び下落し始めるだろう。8月は基準値が主導する形で下落したが、今後は市場実勢が主導する形で下落する可能性が残っており人民元の下落が収束したと見るのは時期尚早だと思われる

参考 ニッセイ基礎研究所 2015.09.03

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