乳牛で地震予知→驚きのデータ

 東日本大震災からもうすぐ丸5年を迎える。難を逃れるための事前予知は日本に住む誰もが望むところだ。実は現在、牛を使った予知研究が進められている。大地震が起きる前に、なぜか乳牛の搾乳量が落ちるというのだ。そんな話を聞いて一笑に付す向きは、データを目にして唖然とするはずだ。新しい地震予測理論に注目が集まっている

ナマズをはじめ、動物が地震の前に異常行動をとるという話は古くからいわれている。今回、乳牛を使いその客観的データを導き出したのは、地震予知学会会員で麻布大学獣医学研究科の山内寛之研究員(30)だ

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「乳牛は毎日の乳量を継続的に観測できる。地震の前には何らかの変化が起こるのではという仮説のもと調査を始めた」

観測にあたっては、茨城県つくば市にある国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」(農研機構)に協力を依頼。つくば市の計48頭の乳牛を対象に2014年の1年間の乳量変化データの提供を受けた。

 酪農乳業関係者の業界団体「Jミルク」によると、1頭の乳牛は1日平均約30リットルの生産能力を持つというが、乳量変化を確認すると、まず次のような異常が数値として表れた

「(14年)4月16~17日に乳牛の平均乳量が一定水準以下に下がる日が2日続けて起きた。その後、5月5日に伊豆大島近海を震源とするマグニチュード(M)6・0の地震が発生、東京都の大手町で最大震度5弱を記録した」(山内氏)

この事例を基に山内氏は、2日以上続けて平均乳量が一定より下がる異常に着目し、その約2~3週間後を「警戒期間」と仮定。連続した異常日を1事例として定め、警戒期間中に地震があった後は、警戒を解除する条件でデータを精査した。すると驚くべき結果が表れたという

「14年は、測定地の『茨城県つくば市』から半径1000キロ規模の地域で、M5・5以上7・0以下の規模の地震が計7回起きたが、うち6回はその『警戒期間』内に発生していた」(山内氏)

山内氏によると、乳量に変化を与えた可能性がある地震には、一定の特徴がある。M5・5クラスの場合、震源地は、つくば市の測定地から半径232キロ以内に限られ、M6・0クラスでは同380キロ以内に拡大。M7・0クラスでは同1023キロ以内にまで広がった。つまり、Mが大きいほど、測定地から離れていても乳量に影響を及ぼすと考えられるという

一例を挙げれば、同年7月12日に福島県沖の深さ約33キロを震源に地震が発生した。最大震度は4、M7・0を記録し、気象庁は東日本大震災の余震と考えられると発表した。「これに先立つ6月23日から27日にかけて、乳牛の平均乳量は最大で約5リットルもの減少がみられた」と山内氏

同年11月4日から5日にかけても平均乳量が突然、約1・5リットル減少した。すると同月22日に、長野県北部を震源とする直下型地震が発生。規模はM6・7、深さは地下5キロで長野市の戸隠をはじめ、同県の4地点で震度6弱を記録した。

幸い死者こそ出なかったものの、被害は甚大で県は「長野県神城断層地震」と命名。被害状況では重軽傷者46人、全壊住宅は81棟に上った(15年12月時点)。

研究結果は、農研機構から提供された14年の1年分のデータを後日精査して得られたもので、これから起こる異常を予測する段階にまではいたっていない。だが、特定の地域内で乳量の減少が起きてから約2~3週間以内にM5・5以上の規模の地震が起こる可能性は示され、的中率は実に約86%にのぼる

山内氏は、この研究をまとめた論文『地震前兆としての搾乳牛における乳量変化』で15年3月、日本畜産学会から優秀発表賞を受賞。引き続き15年のデータも解析する予定でいる。

 「地震の規模がM5・5を下回ると、乳量異常が発生する確率は低くなる。小さい規模の地震については、さらに研究が必要だが、将来的には複数の観測地でリアルタイムでデータを計測し、短期予測に貢献したいと考えている」(山内氏)

実用化に期待が寄せられる。

   2016.03.08
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