中国国有企業改革→所得減速も

 中国当局は石炭や鉄鋼分野の国有企業を改革する過程で発生すると見込む数百万人規模の余剰人員について、農業や林業、公共サービス部門へ配置転換している

ただ、配置転換では賃金が下がり、生活の質が低下することが見込まれ、労働者の購買力低下や不満が高まる可能性がありそうだ

このほど開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、中国指導部は産業における過剰設備解消が失業率の上昇をもたらすことはないと強調。中国は向こう2年にかかる国有企業労働者の再配置・再訓練のための資金として1000億元(150億ドル)を確保したが、石炭や鉄鋼分野で最大600万人に達する余剰人員を賄う費用としては心細い

黒竜江省最大の石炭企業である国有の龍煤集団に勤務していたレン・グイチェンさん(54)は「(職種転換は)簡単ではない」と指摘。「職種転換した人はみな清掃や伐木分野に行った」としつつ、こうした職場での賃金は自身が鉱山労働者として得ていた月収3000元(463.17ドル)の3分の1にも満たないという。レンさんは30年以上にわたって同社で働いてきたが、健康問題で昨年退職したという。

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龍煤集団は人員10万人を削減すると発表しており、地元メディアによると、既に2万2500人を農業や林業、公共サービス部門に配置転換したという。同社の労働者数千人がこのほど、賃金が未払いだとして双鴨山の街頭で抗議デモを行った。

<進まぬ意識改革>

黒竜江省の陸昊省長は全人代の期間中、「彼ら(国有企業の余剰人員)は新たなスキルの獲得に意欲を示しているが、一部は順応性がない」と指摘。中国の経済成長率も鈍化しており、余剰人員の吸収はさらに困難となる見通しだ

チャイナ・レイバー・ブレティンのコミュニケーション・ディレクター、ジェオフリー・クロスオール氏は「中国東北部は雇用が生まれず、レイオフされた労働者を吸収することができる新規企業が出てこないため、大きな問題を抱えそうだ」と指摘。「レイオフされている労働者の多くは40─50歳でリタイアに近い。別の仕事を見つけるのは非常に難しいだろう」と述べた

中国のサービス部門は高い伸び率で雇用を生み出しているが、通常は低賃金だ

ガベカル・ドラゴノミクスの北京駐在労働問題アナリスト、ツイ・アーナン氏はリサーチノートで「産業におけるレイオフで最も可能性の高い結末は失業の大幅増ではなく、家計所得伸び率の一段の減速だ」と指摘する

賃金が停滞もしくは下落すれば消費主導型への転換を目指す中国経済にとって大きな障害となりそうだ。公式統計によると、2014年の平均年収は鉱業で6万1677元(9542ドル)、農業・林業で2万8356元だった。飲食店や小売店での職だと約3万7264元を稼ぐことが期待できるが、製造部門の5万1369元には届かない

エコノミストは一段と付加価値の高いスキルを身に付けられるよう労働者を誘導すべきだと指摘する。

主に成人向けのマネジメント能力開発などを手掛ける民間施設「上海智能消防学校」のルー・グイウェン副校長は「サービス部門からの需要が強い。多くの不動産会社や金融会社は保守管理やマネジメントに役立つ人材を必要としている」という。

しかし、労働者への浸透は遅々として進んでいない。

龍煤集団で7年間働いているある労働者は匿名を条件に「職種転換についての話はあるが、どの業界に転換したらいいのかよく分からない」と話した

(Brenda Goh記者 執筆協力:Joseph Campbell, Ryan Woo, John Ruwitch, Pete Sweeney and SHANGHAI Newsroom 翻訳:川上健一 編集:加藤京子)

ロイター2016.03.22

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