中国を突き放す米国の新軍事技術開発

英エコノミスト誌は、圧倒的だった米国の軍事的優位は急速に崩れつつあるので、米国は、優位を維持するために新世代の軍事技術の開発に乗りだした、と報じています

画像:iStock

すなわち、米国はこれまでも、新技術の開発によってライバルの優位を相殺してきた。先ず、1950年代初期にソ連の大規模な通常戦力に直面すると、核戦力の開発で対抗し、1970年代半ばに核戦力でソ連に追いつかれると、精密誘導ミサイル、偵察衛星、ステルス戦闘機等を開発したこれらの新技術の威力が示されたのが1991年の湾岸戦争だった

しかし、その後、これらの新技術が拡散する一方、米国はアフガニスタンやイラクで反乱勢力とのローテク戦争に気をとられ、その機に乗じて中国、ロシア、さらにはイランや北朝鮮までもが軍事面で急速な進歩を遂げてしまった

中でも、中国は軍を増強、高度化させ、周辺諸国への強硬な姿勢を強めている。また、ロシアもここにきて軍の近代化を急速に進め、旧ソ連圏での影響力回復を狙っている

だからこそ、米国は第三の相殺戦略(the third offset strategy)を打ち出す必要があった。ただ、それは、敵に大きなコストを負わせるような軍事技術の開発でなければならない

米国が開発に力を入れるのは、(1)無人ステルス戦闘機(2)小型ドローン(3)無人潜水艇(4)長距離ステルス爆撃機(5)電磁レール・ガン及びレーザー・ガン、だろう

防衛予算の逼迫が続く中、新技術開発のための資金は、どこか別の所から持ってくる必要がある。課題は、増大する軍人の給与・福祉手当を抑制することだ。不用な基地の閉鎖や軍の調達の改善も助けになる

軍自身も身を切る覚悟が必要かもしれない例えば、射程距離の短いF-35戦闘機の購入数の縮小や、脆弱性が増している空母の一部放棄が考えられる。ただ、空軍は戦闘機に、海軍は空母に強い愛着があるので、実行は容易ではない。陸軍も規模を縮小しなければならない

ところで、これらの障害を全て克服したとしても、第三の相殺戦略は、第一や第二ほど長くは西側の優位を保てないだろう。インターネットの影響もあり、技術は以前よりはるかに早く拡散し、消費者市場での激しい競争のおかげで技術革新自体の速度も増している

また、同盟国が開発に協力してくれれば助かるが、あまり期待はできない。英国などは国防費をGDPの2%以下にすべきかどうかを議論している

最後に警告する。相殺戦略は、核抑止の論理が有効であることが前提になっている。しかし、「危険を犯す競争」で勝てると思えば、敵は相手の技術的優位を前に核の瀬戸際作戦に走る可能性がある、と報じています

出 典:Economist ‘Who’s afraid of America?’ (June 13-19, 2015)
http://www.economist.com/news/international/21654066-military-playing-field-more-even-it-has-been-many-years-big

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「第三の相殺戦略」は、米国が再び世界での軍事的優位を確立しようとする努力の一環です。

米国が、アフガニスタンやイラクでのローテク戦争に集中している時、他国、特に中国が軍事力を高め、米国の技術優位を脅かすようになってきました。そこで、米国は、「第三の相殺戦略」を打ち出す必要を認識しました。したがって「第三の相殺戦略」は中国の軍事能力の増大を念頭に置いたものであると言ってもよいでしょう。

「第三の相殺戦略」の中核的技術は、高度な自律性を備えた無人機や無人潜水艇などのロボティクス、それらの運用を支える強靭性の高いネットワーク、次世代長距離ステルス爆撃機、電磁レール・ガンとレーザー・ガンなどです。これら技術の開発に必要な研究の多くは、シリコンバレーなどの民間ハイテク企業が行っていると言われます。歴史的にはいわゆるdual use 技術(軍事・民生の両方に利用可能な技術)はコンピューターのように、まず軍事技術として開発され、後に民生用に広く使われるようになったものが多いですが、最近ではカーボン・ファイバーのように、まず民生用に開発され、それがのちに軍事用にも使われるようになったものが増えています最近注目を集めているドローンは典型的なdual use技術です。論説は、英国を念頭に同盟国の協力はあまり期待できないと言っていますが、ロボティクスをはじめ、民生用技術が得意な日本は協力する余地が十分にあります

米国が世界で軍事的優位を維持することは日本の安全保障にとっても極めて重要です。さる4月に新日米ガイドラインが策定され、10月には、新たに「防衛装備庁」が設置されることもあり、日本は米国の「第三の相殺戦略」確立に向けて、防衛技術面で積極的に協力すべきでしょう

岡崎研究所

WEDGE Infinity 日本をもっと、考える2015.07.20

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