中国の景気指標を総点検しよう!

◆まず、供給面の景気指標を見るとここ数ヵ月の工業生産は6%前後で一進一退の動きをしている。また、製造業PMIは6ヵ月ぶりに50%を下回るなど景気失速が懸念されるが、同予想指数は2ヵ月連続で上昇しており悲観一色でもない。一方、非製造業PMI(商務活動指数)は50%を上回るなど高水準を維持しているものの、株価下落の影響が製造業よりも大きいと見られるだけに、今後の動きには注意が必要である

◆次に、需要面の景気指標を見ると消費は堅調、投資は一進一退、輸出は弱含みといえる消費は4月をボトムに緩やかながら回復傾向を辿っている投資は4月よりは良いものの6月よりは悪く一進一退の動きとなっている。また、輸出は概ね前年を下回る水準で推移しており、特に欧州向けや日本向けの落ち込みが目立つ。輸出の先行指標となる新規輸出受注も低迷しており、先行きにも明るさは見えない

その他の重要指標を見ると電力消費量は前年同月比1%増を挟んで一進一退道路貨物輸送量も同6%増を挟んで一進一退の動きが続いている。また、生産者物価が再び下落の勢いを増したことは、工業製品に対する需要の弱さを表しており悪材料である。一方、通貨供給量が目標値「12%前後」を上回る伸びを示したことは好材料だが、株価対策の影響で増えたと見られることから、投資に結びつくと見るのは時期尚早と思われる。

それ以外で注目したいのが「自動車販売」「住宅販売」「李克強指数(修正後)」の3つである。ここもと最も悪いのは「自動車販売」で最も良いのは「住宅販売」である。現在はこの両者が逆方向なので景気は一進一退だが、「自動車販売」が好転するか「住宅販売」が悪化すれば、均衡が崩れて動き出す。また、「李克強指数(修正後)」も、現在は6%前後での一進一退だが、いずれはどちらかの方向に動きだすので、どちらに動くか要注目である

■供給面を見る3指標

【工業生産】

中国経済を見る上で最も重要な指標は工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)だろう。8月の工業生産は前年同月比6.1%増と7月の同6.0%増を若干上回った。これまでの流れとしては、3月の同5.6%増をボトムに回復傾向を維持したものの、6月の同6.8%増を大きく下回っており、6%前後で一進一退の動きをしている

なお、前月比(季節調整後)で見ても、8月は0.53%増と7月の0.33%増より0.20ポイント改善、3月の0.28%増をボトムに回復傾向にある。

【製造業PMI】

供給面を見る上では製造業PMI(中国国家統計局)も重要な指標となる。これは製造業3000社の購買担当者に対し毎月実施されるアンケート調査の結果を元に計算されるもので、通常は50%が景気強弱の分岐点とされる。8月の製造業PMIは49.7%で、6ヵ月ぶりに50%を下回るとともに1月の49.8%をやや下回っており、景気失速の懸念が浮上している

但し、同時に発表された予想指数は54.1%と、6月の52.2%をボトムに2ヵ月連続で上昇していることから、今年1月のように将来を悲観しているという訳でもなさそうだ

【非製造業PMI(商務活動指数)】

一方、中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なため、製造業だけを見ていたのでは構造変化に翻弄される恐れがある。そこで注目したいのが非製造業PMI(商務活動指数)である。製造業PMIと同様に50%が景気強弱の分岐点とされる

8月の非製造業PMIは53.4%と、7月の53.9%を0.5ポイント下回った。製造業と比べると依然として高水準にあるものの、製造業よりも株価下落の影響が大きいと見られるだけに、さらに悪影響が広がらないか、今後の動きには注意が必要である

■需要面を見る3指標

【小売売上高】

一方、需要面の動きを見ておくことも重要である。個人消費の動きを見る上で代表的な指標となるのが小売売上高である。8月の小売売上高は前年同月比10.8%増と7月の同10.5%増を上回り、4月をボトムに緩やかながら回復傾向を辿っている。価格要因を除いた実質でも、8月は同10.4%増と7月の同10.4%増から横ばいで消費は底堅く推移している

【固定資産投資】

投資の動きを見る上で代表的な指標となるのが固定資産投資(除く農家の投資)である。固定資産投資は毎月発表されるものの、1月からの年度累計での公表であるため、時系列の動きは読み取り難い。そこで、当研究所で単月に直した。8月は前年同月比8.8%増(推定(*1))と6月の同11.4%増をピークに2ヵ月連続で低下しており、再び減速感が強まった。但し、5月の同7.5%増よりはやや高い水準を維持していることから、現在は10%を挟んで一進一退の動きといえるだろう

【輸出金額】

世界の工場といわれる中国では輸出の動きも景気を大きく左右する8月の輸出金額(ドルベース)は前年同月比5.5%減と、7月の同8.4%減よりはマイナス幅を縮めたものの、前年割れが続いている。1-8月期累計でも前年同期比1.5%減となっており、特に欧州(EU)向けや日本向けの落ち込みが目立つ。先行指標となる新規輸出受注(製造業PMI)を見ても11ヵ月連続で50%を下回っており、先行きにも明るさは見えてこない

■その他の重要な4指標

【電力消費量】

経済活動をする上で欠かせない電力消費量も、景気動向を見る上では有効な指標となる。李克強首相は特に工業の電力消費量を重視しているとされる。足元の動きを見ると、8月の電力消費量は前年同月比1.9%増と7月の同1.3%減からプラスに転じた。但し、今年1-8月期累計では前年同期比1.0%増と昨年の同3.8%増に比べると伸びは鈍化している

業種別に見ると、第3次産業は同7.5%増と昨年より伸びが加速する一方、第2次産業は同0.7%減とマイナスに落ち込んだ。これは第3次産業の堅調さと第2次産業の景気の悪さを示すものだが、第2次産業の中核である製造業で省エネが進んだことも電力消費の伸びを低く抑える要因となっている

また、中国では第2次産業から第3次産業への産業構造の高度化が進んでおり、電力消費量の多い第2次産業から少ない第3次産業への移行が進行していることも、全体の電力消費量の伸びを低く抑える要因となっている

【貨物輸送量】

景気が良くなるとモノの移動も増えることから貨物輸送量の動きも重要である。特に鉄道貨物輸送量は李克強首相が重視していたとされる指標でもある。以前はこのレポートでも鉄道貨物を取り上げてきたが、過半を占める石炭がエネルギー改革の中で構造的に減少し、景気動向とかけ離れた動きを示す恐れが浮上してきた

そこで、貨物輸送量に占める割合が大きい道路貨物(全体の約76%)を鉄道貨物(全体の約9%)の代わりに見ることとした。また、道路貨物は製造業だけでなく電子商取引など非製造業の活動の勢いを反映するという利点もある。足元の動きを見ると、8月の道路貨物輸送量は前年同月比6.1%増(推定)と7月の同5.7%増を小幅に上回り、6%前後で一進一退の動きを示している

【生産者物価】

モノの値動きも、景気動向と密接な関係がある。生産したモノに対する需要が強ければそのモノの値段は上がり、需要が弱ければ下がるからである。足元の生産者物価(工場出荷)の動きを見ると、原油などの国際商品市況が再び下落したことを受けて8月は前年同月比5.9%下落と7月の同5.4%下落をさらに下回り、下落の勢いが増した。産業別に見ると特に重工業での下落が著しい

【通貨供給量(M2)】

おカネが動きだすと景気も良くなることから通貨供給量(M2)も注目したい指標である。足元の動きを見ると、8月は前年同月比13.3%増と2ヵ月連続で15年の目標値である「12%前後」を上回った。但し、ここもとのM2の増加は、株価対策で中国人民銀行が資金供給した影響が大きいと見られる。一方、銀行サイドから見ると、銀行融資残高は7-8月に大きく伸びを高めた

但し、おカネが実際の投資に回る場合には中長期の融資が伸びるはずだが、そうした動きはない。従って、“M2の伸びの高まりで今後は投資が増える”と見るのは時期尚早だろう

■3つの注目点

【1】自動車販売は低迷が続くのか?

中国の景気指標の中で、ここもと最も悪さが目立つのは自動車販売である。

腐敗汚職撲滅運動に伴う公用車販売の減少や環境問題に配慮したナンバープレート制限などの影響があるとはいえ、予想以上の悪化である。また、7月に株価が下落した可能性もあることから、株価がさらに下落するようだとより一層厳しくなりかねない。今後年末にかけては、例年販売が増える時期に入るが、そこで前年を上回るレベルまで回復できるのか、要注目である。

【2】住宅販売は好調を維持するのか?

中国の景気指標の中で、最も良いといえるのが住宅販売である。

1年4ヵ月に渡って前年割れが続いた住宅販売(面積)だが、4月にはプラスに転じ、その後も回復を続けて、家具や家電などの消費にもプラス寄与している。今後年末にかけては、例年販売が増える時期に入るが、そこで販売が思うように伸びないようだと、景気が失速する恐れがでてくる

【3】李克強指数はどちらに動きだすのか?

李克強指数は、李克強首相が遼寧省党委員会書記だった2007年、景気実態を表す統計として、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを重視したことに由来する。

前述のとおり鉄道貨物輸送量は現状にそぐわない面もあるが、鉄道だけでなく道路なども含む貨物輸送全体に入れ替えれば参考になる。最近の動きを見ると、3月には大きく落ち込んだものの、その後は6%前後で一進一退である。今後この李克強指数(修正後)が上へ動きだすのかそれとも下か要注目である
参考 ZUU online 2015.09.25

 

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