中国のバブル崩壊はあるのか?

世界最大の投信会社・バンガード社でタクサブル・クレジット・リサーチ・グループのシニア・アナリストを務めるジョナサン・レムコ博士が、このほど来日した。目的は日本を含むアジア経済の分析だ。同氏は前職のクレディスイスでは、ソブリンリスク調査チームの統括者を務めるなど、いわばソブリンリスク分析のプロだ。新興国を中心に、今後の見通しやリスクなどについて、率直な意見を聞いた。
■ 中国バブルの崩壊の可能性は?
――現状、世界経済の成長エンジンは、米国が担っています

中国経済の減速感は否めませんすでに住宅バブルの崩壊が始まっているとの見方もありますね。

中国については、来年の2015年のGDP成長率を6.8~7.3%と予測しています。確かに減速してはいますが、他の新興国と比べれば、なお速いスピードで成長しています。中国経済に対する見方は、悲観的というよりも安定的です

経済格差、シャドーバンキング、住宅バブルといった問題点を解決する努力は必要ですが、クレジットアナリストの観点から言えば、中国経済が世界金融危機のトリガー(ひきがね)になるリスクは低い何よりも3.8兆ドルという巨額の外貨準備を有しているのは、大きな安心材料です

――とはいえ、中国経済が今後も成長スピードを維持していくためには構造改革が必要です

たとえば米国のウォルマートで売られている製品を見ると、かつて中心だったメイド・イン・チャイナから、メイド・イン・スリランカ、バングラデシュ、ベトナムなどにシフトしつつあります

これは、中国の低賃金労働にとってはプレッシャーです。今後はいかにハイエンド製品の製造に移れるかが、大きな課題になるでしょう

 中国がサステナブル(持続可能)な経済成長を続けられるかどうかは、習近平国家主席や李克強首相が、改革に抵抗する勢力を抑えつつ、経済構造改革を推し進められるかどうかに懸かってきます

逆にいえば、中国の両首脳に「抵抗勢力」を抑えこむ力がなければ中国経済の成長に暗雲が垂れこめることになりかねません

――インドでは改革派のモディ政権が誕生、期待が高まっています。

現在、アセットマネジメント(投資家に代行して行う儀用務)のビジネスに関わっている多くの人が、これからのインド経済に注目しています。2014年5月に就任したモディ首相は、改革を前面に押し出しており、国民からの支持も厚いものがあります

特に道路を中心に、インフラ整備を活発に行っており、これから経済の生産性、効率性は飛躍的に高まっていくと期待しています。ただし、モディ首相に対する期待値は高すぎるのではないでしょうか。すべての公約を実現できるという保証は、現時点ではどこにもありません。その点は、投資家も留意しておく必要があると思います。

――インド以外ではどんな新興国に注目していますか?

インドネシアです。2014年7月に就任したウィドト大統領は、改革の旗手として注目されています経済情勢も安定しており、財政面も良好です

ただ、議会が大きく割れていますね。大統領の改革に対して反対している抵抗勢力の力も強く、大統領がこれから進めようとしている改革が、頓挫する恐れもあります

一方、フィリピンは政治のリーダーシップがあり、海外に出稼ぎに行った人の送金に頼らなくとも経済が回るだけの多様化が進んでいますね。今、政治リスクが低く、アジア新興国で最も注目される国はフィリピンだと思います

――米国にも近い中南米の経済についてはどう見ていますか?

有望な国、問題のある国が明確に分かれており、特に問題のある国については、政治リスクの問題が、過去にないほど高まっています。

■ ブラジルは財政厳しく問題が山積

中南米で有望な国はチリですね。格付けも高く、生活水準も安定していて、中南米では最も発展しています。また、メキシコ輸出のうち70~80%が米国向けで、今後もNAFTAのもと、米国経済と密接な関係を維持しながら発展していくと思います。その他、パナマ、ペルー、コロンビア、ウルグアイなども注目されます

一方、見通しの厳しい国としては、「かつてBRICsの一角を占めて注目されたブラジルは、悲惨とは言わないまでも、決して良好な経済とは言えません。財政的にも厳しく、政治問題が山積しています

10月26日の大統領選挙で再選したルセフ大統領は、マーケットに対してアンフレンドリーな政策を打ち出しており、この点も気がかりです。さらに、事態が極めて深刻な国としては、7月にテクニカル・デフォルトを引き起こしたアルゼンチンがあげられます。

適切な政治のリーダーシップのなさが、投資リスクを高めています。さらに、政治問題が山積しているベネズエラ、ボリビア、エクアドルなども、実際に投資する場合には、政治リスクに配慮する必要があります

――最後に日本経済の今後についてはどう見ますか?

安倍首相の頑張りは評価できますね。しかしIMFの最新データによると、GDP比で274%という財政赤字は決してサステナブルではありません。債券の投資家は皆、日本の財政問題に強い関心を示しています

参考 東洋経済オンライン 2014.12.10

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