中国でスト急増→SNS普及で労働者覚醒

中国各地でストライキなどの労働争議が急増している景気低迷と人件費高騰で一部企業に賃金や社会保障の未払いなどが生じていることが直接的な原因だが、インターネットやソーシャルメディアの普及が「労働者の権利意識の覚醒」(AP通信)をもたらしているとの指摘もある海外からの進出企業には新たな「チャイナリスク」となる一方、中国共産党にとっても将来的に一党統治への脅威につながる動きとして座視できない存在になりつつある

香港メディアなどによると3月24日、中国広東省中(ちゅう)山(ざん)市にある日系のハンドバッグ工場で、賃金や社会保障などをめぐって労働者約280人がストライキを決行、警官隊が出動し負傷者や逮捕者が出た地元当局によると労働者の一部が工場内の車両のタイヤをパンクさせたり監視カメラを破壊したりしたほか、他の労働者が仕事に復帰するのを妨害するなどし、4人が逮捕されたという。一方、労働者側は「平和的なストを警察が攻撃した」と主張している

3月上旬には、ナイキなどのブランド受託製造を行っている広東省東莞(とうかん)市の台湾系靴工場2カ所で約8000人の労働者が、中国の特徴的な社会保障制度である「住宅積立金」の会社側負担をめぐってストを実施し、一部が警官隊と衝突した当局側の車両と接触した女性がけがをしたため、抗議活動がさらに激化したとの報道もある香港を拠点に中国本土の労働環境を監視している非営利団体「中国労工通訊(中国労働者通信)」によると、こうした労働者の自発的なストは2014年に1379件発生し、11年の185回から急増している

中国におけるスト急増の背景はなにか。オーストラリア放送協会(電子版)は、中国労工通訊の担当者の話として「賃金不払いや工場の閉鎖、不動産開発の失敗などが中心的な原因になっている」と伝えたこうした動きは利益の減少やコスト上昇に苦しむ企業に追い打ちをかけているという。

一方、AP通信は「中国の労働者はソーシャルメディアの拡大を通じて自らの権利に気づきつつある」と分析し労働問題に取り組む弁護士の「われわれが現在目の当たりにしているのは、本当の意味での労働者運動の形成だ」との見方を紹介中国では“官製”労働組合の下でのお仕着せのストライキしか許されていないが、当局による摘発などの危険を冒しても独自にストを組織して要求を企業側に突きつける動きが出稼ぎ労働者を「先兵」として労働階級全体に広がっていると指摘する

当局側は、労働者たちが独自に自らの権利を追求する動きに警戒を強めている。AP通信は、これまで企業による労働法規違反を長年無視してきた当局側がストが行われている工場に警官隊や時には警察犬まで派遣して秩序回復に当たっていると指摘する共産党傘下の労働組合、中華全国総工会の幹部は2月、「敵対的な外国勢力が労働者の支持を得るために非合法の人権団体や活動家を利用し、労働者階級の結束を破壊している」と非難した

李克強首相(59)は3月に開かれた全国人民代表大会(全人代=国会)の政府活動報告の中で、「労働監察制度と争議の処理機構を整備し、法律により労働者の権益を保護する」との方針を示した使用者と労働者の利害調整システムが未整備であることへの問題意識の表れだろう

当局側は、労働者の権利を求める動きが、政治的権利の要求へと発展することを懸念している憲法で「労働者階級の指導」を規定する社会主義国において政権側が「労働者の覚醒」に敏感にならざるを得ないのは皮肉な状況だ

参考 Sankei Biz  2015.04.28

 

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