世界の空を狙う黄金の鷺→韓国航空産業

航空産業は「一流の証」?

 現在、韓国製の自動車や船舶、そして家電は世界的に大きく評価を高めており、いまや日本のメーカーに匹敵。いくつかの分野においては上回るシェアを獲得しています

新護衛艦「かが」に中国反発必至か 大きな「加賀」という艦名

不思議なことに、自動車や造船で陸海を制した国は、「真の一流国となるには航空産業が必要である」と思うものらしく、日本が三菱航空機製の旅客機「MRJ」で世界に打って出ようとしているのと同様に、韓国もまた航空産業の振興に力をいれており、世界へ羽ばたこうとしています

韓国は日本と異なり、軍用機の市場を選択しましたすでに複数の軍用機が輸出に成功していますが、最も大きな成功を収めたといえる象徴的な存在が、KAI(韓国航空宇宙工業)製のT-50「ゴールデン・イーグル」ジェット練習機です

 T-50のエンジンは、米・ボーイングF/A-18「ホーネット」戦闘機と同一のものを単発搭載(F/A-18は双発)し、超音速飛行も可能限りなく戦闘機に近い性能を持つとされるほか、「世界で最も高性能な練習機」ともいわれ、その派生型である戦闘機型FA-50も開発されていますKAIは自信を持って「1000機の『ゴールデン・イーグル』を製造する」と豪語します

アメリカ空軍が韓国製の機体を導入する?

 とはいえ、懸念材料がないわけではありません戦闘機パイロットの候補生が、戦闘機の前段階で操縦訓練を行う機を「戦闘機導入練習機(LIFT)」と呼びますが、実のところT-50は「LIFTとしては高性能過ぎ」て、性能は劣るものの安価なライバルに、やや苦戦を強いられています

それでもT-50は、韓国空軍をはじめインドネシア空軍などいくつかの国が導入しており、また戦闘機型FA-50も「F-16など本格的な戦闘機は高すぎるものの、とりあえず手軽な戦闘機が欲しい国」によって興味が示され、すでにフィリピンへの導入が開始されており、イラクへの輸出も決まっています

そしてT-50にとって最大のチャンスが、アメリカ空軍のノースロップT-38「タロン」超音速練習機の後継機となる「次期練習機選定(T-X)」ですT-Xは2017年度に開始される予定であり、米・ロッキード・マーチン社はKAIと共同でT-50のLIFT仕様であるTA-50を提案するとみられ、有力候補のひとつになっています

T-50は、元々その開発においてロッキード・マーチン社が協力しており、同社が飛行制御システムや戦闘システムなど、電子機器やソフトウェアを提供していますそしてロッキード・マーチン社は、今年中に実用化される見込みの米空軍次世代戦闘機F-35A「ライトニングII」の開発メーカーでもあります

したがって、元々高性能なTA-50の飛行制御ソフトウェアを書き換えることにより、F-35Aそっくりな飛行特性を再現したり、またF-35Aの戦闘システムをシミュレートすることで、飛ばすだけでも大金の掛かるF-35Aを使わなくてもリアルな戦闘訓練が可能である点など、ほかのT-X候補よりもいくつかの点において有利であるとみられます

アメリカ空軍の外国製練習機導入はすでに前例があり、例えば初等練習機レイセオンT-6「テキサンII」は、もともとスイスのピラタス社製PC-9を米国内でライセンス生産したものですそのためTA-50は韓国製ながら、採用の可能性は十分にあり得るといえます

空自が韓国機を採用する可能性も?

1000機生産する」というKAI(韓国航空宇宙工業)の目標が達成できるか否かは、アメリカ空軍のT-X次第となるでしょう。また“アメリカ空軍に採用された”という実績ができれば、特にF-35の導入を予定している国々への販売も加速されるかもしれません

その候補である国のひとつは、ほかでもない日本です。航空自衛隊の川崎重工T-4ジェット練習機は初飛行からすでに30年が経過しており、そう遠くないうちに後継機の選定が行われるのではないかとみられます。日本の航空産業界は間違いなく「国産したい」と願うはずですが、T-50が採用される可能性もゼロではないでしょう

日韓関係には、慰安婦問題など外交上の懸念も存在しています。現状で韓国機の導入はあまり考えられませんが、安全保障の観点からすると、日韓は中国や北朝鮮という脅威を抱える点などにおいて非常に距離が近く、T-50ではなくとも将来、次世代戦闘機など航空機の共同開発で協力しあう日がやってくるかもしれません

関 賢太郎(航空軍事評論家)

乗りものニュース2016.3.12

  images-3-48-150x150images

【関連する記事】