与党圧勝→安倍一強へ

14日投開票の衆院選で、自民・公明の与党が圧勝し、参院で否決された法案を再可決できる3分の2を上回る勢力を打ち立てた

民主党はかろうじて議席を伸ばしたが伸び悩み、第三極は後退し、日本の政界は「一強多弱」から「安倍一強」に変化

安倍晋三首相は絶大なパワーを手中にし、引き続き経済最優先を掲げ、デフレ脱却に取り組む構えだ

ただ、成果の少ない「第3の矢」や財政赤字問題など、課題は山積したままだ

<安倍首相「アベノミクスは道半ば」>

議席を減らしても小幅━━。師走の総選挙に突入した安倍自民党の当初の読みは、大きく覆され、自民は単独で300議席に迫り、大きく躍進する見通し。公明党も改選前から議席を伸ばし、与党圧勝に、菅義偉官房長官は「安倍政権の信任を得た」と胸をはった

安倍首相(自民党総裁)は圧勝が伝えられながらも「アベノミクスは道半ば」と述べ、2年間の政権運営の信任のもとにアベノミクスの推進を約束した

そのうえで、今後の政策運営では「経済最優先」の継続を強調。同時に経済外交の展開や来年の通常国会で安全保障の法整備を行うと語った

<「安倍一強時代」へ、「政高党低」さらに強まる>

安倍の安倍による安倍のための解散だった」(成田憲彦’駿河台大学教授)──。野党は準備が整わないうちの電撃解散で(大幅に)議席を減らし、「一強多弱」の政治体制は「『一強一弱』の政治体制」(成田氏)となり、 「『安倍一強時代』の到来」(歳川隆雄・インサイドライン編集長)と言える戦後最大級の与党圧勝となった

24日にも発足する第3次安倍政権は「安倍氏の体調面も含めた不測の事態を除けば、2018年9月までの安定した政治権力基盤を固めた」(成田氏)と、多くの政界関係者が認める安定した政治情勢ができた。

衆院選大勝を受けて、来年9月の自民党総裁選では安倍総裁が無投票で再任される可能性が高く、自民党総裁としての次の任期が来る2018年9月まで、安倍政権の行く手を遮る雲は見えない

政権運営は、絶対的な数を背景に一段と「官邸主導」の色彩が強まりそうだ。来年の通常国会で難航が予想された集団的自衛権行使容認のための法案審議でも、選挙前までの「会期延長は必至」との見方は後退。政策決定プロセスでも「政高党低」が強まるとの思惑が早くも与党内で浮上している。

政策面では、安倍カラーが強まり、「安全保障、教育・外交で安倍さんの力が強くなる」(成田氏)など保守色の強まりが警戒されている。

<「第3の矢」進展には懐疑的な見方も>

与党勝利で「アベノミクスの信任」が得られた格好だが、日本経済の成長促進に欠かせない構造改革や規制改革による「第3の矢」が進展するかどうか、その点では見方が分かれる。

歳川氏は「構造改革・規制改革で、どの政権も厚生労働省や農林水産省所管の岩盤規制に風穴をあけることができなかった。しかし、衆院選で大勝し、鋭いメスを入れる」と期待する。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革でも出遅れたコーポレートガバナンス改革に踏み込み、農協改革では「選挙が終われば、農協に遠慮する必要がなくなる。1年以内に目に見える規制改革の果実を示す」と見通した

政治評論家の屋山太郎氏も内閣人事局の設置で「官僚内閣制」は終わったと指摘し、「政治主導で構造改革は進む」と見ている

一方、2015年の統一地方選挙や2016年の参院選など大きな選挙が続くため「しがらみの多い自民党では、構造改革は進展しない」(成田氏)との見方も多い

成田氏は「自民党が勝てば現状肯定となり、構造改革はやりにくくなる」とし、構造改革の進展は「ぼちぼち程度」と懐疑的だ。「人口減少社会をどうするのか。生産性をどう上げていくのか。世界の中で生き残りを考えた場合、大きなテーマがいろいろある。解決するために、現在のような縦割り行政構造の霞が関でできるのかと考えると、極めて悲観的にならざるを得ない」とも指摘。規制改革を阻む縦割り行政の改革を急ぐべきだと強調した

みずほ証券・チームマーケットエコノミストの上野泰也氏も「『第3の矢』が進むとはあまり思えない。今まで国会の勢力分野や党内の問題があって進展しなかったわけでもない」と分析。人口減の問題でも、移民の受け入れなどは、統一地方選や参院選の大きな選挙を控えて、進まないと見ており「こうしたことを考えると、第3の矢に急に踏み込んでいくとは考えにくい」との見通しを示した。

<課題残る財政再建>

財政再建も大きな課題だ。とくに安倍首相が堅持するとしている2020年度の基礎的財政収支の黒字化目標達成には、消費税率を10%まで上げても、なお11兆円のギャップが存在する。

実質成長率が1%にとどまれば改善が必要な額は16兆円を超す。足元の14年度の成長率はマイナスとの見方も出るなど、足元の日本経済は低迷しており、ハードルは極めて高い

ムーディーズは今月1日、消費増税先送りを受けて、日本国債の格付けをAA3からA1に1段階引き下げた。フィッチも9日、日本の発行体デフォルト格付けをウオッチネガティブとし、引き下げ方向で見直す考えを示している。

アベノミクスの第1の矢と第2の矢である、異次元緩和と機動的な財政出動で「稼いだ時間」で成長戦略を軌道に乗せ、財政健全化への道筋も明確に示せるか。磐石の政権基盤の下で成果を得ることができなければ、国民の信任を裏切ることにもなりかねない

安倍政権の本気度が試されることになる。

参考 ロイター 2014.12.15

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