不正を繰り返す企業は社会に必要か

● 長続きするとは考えにくい M&Aの可能性を探る方が有効

4月20日、三菱自動車の相川社長は、同社が製造する4車種の軽自動車について燃費を良く見せるために不正を意図的に行っていたと発表した。実際には、タイヤの抵抗などの数値を意図的に操作していたという

三菱自動車と言えば2000年、2004年にもリコール隠しが発覚し、利用者などの信頼を大きく裏切った前歴がある今回のケースでも、今回不正の対象となる車の数は約62万台にのぼり、同社の販売台数の約6割を占めるという

今回の報道を見ると、「これだけ何度も不正を繰り返す三菱自動車という企業は、社会にとって本当に必要なのだろうか」という素朴な疑問が出る

リコール隠しが表面化した後同社の業績は顕著に悪化し、一時期、その存続すらも怪しくなる状況だったそれに対し、三菱グループを中心に強力な支援策が講じられ、何とか命脈を保った経緯がある

それにもかかわらず、また不正行為を繰り返してしまった

その背景には、競争の激しい軽自動車の分野で、ダイハツやスズキといった2強の後塵を拝したことがあるようだその遅れを取り戻すために、同社自身が焦りを持ち不正行為をせざるを得なかったという説明には、それなりの説得力があるかもしれない

しかし、ある分野で競争力を失った企業は、ごまかしの不正行為で一時的に淘汰を避けることができても、それが長続きするとは考えにくいむしろ企業経営者とすれば、他の企業とのM&Aの可能性を探る方が有効な経営戦略であるはずだ

不正行為を繰り返す三菱自動車は社会のために本当に必要なのか、真剣に考えてみる時期が来ていると思う

● 不正行為を繰り返した 三菱自動車の歴史

三菱自動車は1970年に三菱重工業と米国のクライスラー社の合弁事業として発足したその後、クライスラーはドイツのダイムラー社と資本関係を結んだ。それに伴い、ダイムラー・クライスラー社は、三菱自動車の筆頭株主になった当時の三菱自動車は、トヨタ・日産・ホンダに次ぐ国内第4位の自動車メーカーだった

ところが、2000年に同社のリコール隠ぺい行為が発覚した。具体的には、三菱自動車は1977年から23年間にわたって、乗用車約45万台とトラック約5万台に関する部品の不具合のクレーム情報を外部に公表しなかったのだ

クレーム情報を社内で隠ぺいする一方、直接、ユーザーに連絡して、不具合のある部品を回収したり修理する、いわゆる“闇リコール”を行ったのである

 しかし、不具合部品の公表を行わなかったため、部品の取り換えなどが間に合わず、実際に人身事故が発生するケースもあったこのリコール隠ぺいによって同社はユーザーの信頼を失い、販売台数は大きく落ち込んだ当時の一部の経営者は退陣を余儀なくされ、ダイムラー・クライスラーから人材を入れて再建を目指した

さらに、2002年に三菱自動車から分社化したトラック・バス部門である三菱ふそうの大型車のタイヤが脱落する事故が発生したその事故をきっかけに、同社のトラックなど大型車の構造上の欠陥や、それに係るリコール隠しの疑いが取りざたされるようになった

その結果、2004年4月、筆頭株主であったダイムラー・クライスラーは財政支援を打ち切り、同社から派遣された社長が任期を待たず引き上げてしまった。また、5月にはタイヤ脱落事故に関連して、三菱自動車と三菱ふそう経営陣の一部が起訴されることになった

● 日産からの指摘がなければ 隠蔽行為は続いていた可能性が高い

そして今回、三菱自動車が作る軽自動車=ekワゴン、ekスペース、デイズ、デイズクルーズの4車種について燃費に改ざんがあることが発覚した。しかも、発覚のきっかけは、提携先の日産自動車からの指摘だったという

仮に日産自動車からの指摘がなければ、三菱自動車の隠ぺい行為は今でも続いていた可能性が高い人の命にかかわる問題を隠す、同社の姿勢には一般の理解を超えた要素があるようだそれを考えると、身の毛がよだつほど恐ろしく感じる

過去の三菱自動車の歴史を振り返ると、同社の企業文化の中に「都合の悪いことを社内で隠してしまう」という慣習があるように見える。しかも、その遺伝子は簡単には排除することができないくらい強力だった

その証拠として、2000年以降、幾度となくリコール隠ぺいなどの問題が指摘され、監督官庁からの検査や勧告を受けてきたしかも、消費者の不信の高まりによって、同社の販売台数が大きく減少し、一時、業務を継続することにも支障が出る状況まで追い込まれた

 そうした苦境を、三菱グループのプライドをかけた強力な支援体制で何と凌いできたとも言える三菱グループ企業に勤務する友人の一人は、「三菱グループの企業をつぶすわけにはいかない」と言っていたことが印象に残る

また、不祥事発生の都度、経営者は国民に向かって再発防止を誓約してきたそれにもかかわらず、今回、前と同じような不正行為が発覚した

これだけ同社から不祥事が起きると、国内外の顧客から「他の日本企業もそうした隠ぺい行為を行っているのではないか」との疑義が生じることも考えられるそれは同社のみならず、他の自動車メーカー、あるいは他の日本企業の信用にも悪影響が及ぶことも懸念されるその罪は非常に重い

● 改革のチャンスがありながら 企業文化を変えられない企業

ここで冒頭に上げた疑問点に戻る。

三菱自動車という企業はわが国社会にとって必要だろうか。今から十数年前に証券会社で自動車メーカーのアナリストをしていた友人は、「これまでの三菱自動車であれば、社会は必要としない」と指摘していた。

三菱グループの有力企業である同社が淘汰を受けたり、別の企業に買収されて社名がなくなることを寂しく思う人は多いかもしれない。特に、強力な三菱グループの人々にとっては、大きなショックになるかもしれない。

しかし、社会のルールを守ることができず、他の企業にも無視できないマイナス効果を与え、しかも幾度となく改革のチャンスがありながら、その企業文化を変えられない企業が社会の中で、そのままの姿で存続を続けてよいだろうか

経済合理性の観点から考えると、そうした企業に関しては、信用の失墜による収益力の減少などによって、株式市場のマーケットメカニズムで淘汰を受ける可能性が高いはずだ

ところが、株主の中にはグループ企業も多く、マーケットメカニズムが働きにくい面もある。

見方を変えてわが国の産業を見回すと、多くの分野で産業の再編が進んでいない。世界クラスと比較すると規模の大きくない企業が、同一の分野でひしめく構図になっている。わが国の有力な完成車メーカーを見ても、トヨタ、日産自動車、ホンダ、富士重工業、スズキ、マツダなど多くの企業がしのぎを削る状況になっている

世界経済のグローバル化が進むと、主な市場では力の強い、大きな企業が世界市場で高いシェアを維持することが想定される。そうした状況に対応するためには、わが国企業もある程度、合従連衡を進めて、体力のある規模の大きな企業を作ることが重要だ

そうした動きを促進する意味でも、経営が上手くワークしない企業などは、十分な経営能力のある企業と一緒になることも有効な選択肢の一つだ何が何でも、企業の名前を存続させることが目的になることは、合理的ではない

真壁昭夫

ダイヤモンド・オンライン2016.04.26

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