ビルや住宅は省エネ性能で選ぶ

国全体のエネルギー消費量を産業・運輸・建築物の3部門に分けると、2000年以降に増加しているのは建築物だけである2013年には全体の34.5%を建築物が消費する状況で(産業43%、運輸22.5%)、抜本的な省エネ対策の推進が不可欠になっている

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建築物省エネ法」(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)の適用が2016年4月1日に始まる。これまで建築物は「省エネ法」(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)で規制を受けてきたが、今後は「建築物省エネ法」に移行して規制の内容が一段と厳しくなる

大きな変更点は2つある。1つは新築の建築物に対して、エネルギー消費性能(省エネ性能)の基準に適合する義務を強化する。省エネ性能は建築物の地域や用途、床面積などをもとに、空調や照明などのエネルギー消費量の合計が基準を下回るかどうかを評価する指標だ新たに床面積が2000平方メートル以上の大規模な非住宅の場合には、建築確認手続きの段階で基準に適合していることが義務づけられる

もう1つの変更点は建築物の省エネ性能が基準に適合していることをラベルやマークで表示できるようにする。ビルや住宅の購入者・入居者が省エネ性能を示すラベルやマークを参考に建築物を選べるようになる。建築物を利用する企業や家庭にも省エネの意識を高めてもらう狙いがある

性能表示制度が2種類に増える

建築物の省エネ性能を表示する制度に「BELS(ベルス、Building-housing Energy-efficient Labeling System)」がある。国土交通省が主に新築の非住宅を対象に2013年10月に開始した制度だが、2016年4月から住宅も対象に加わる。省エネ性能を第三者機関に評価してもらうと、エネルギー消費量の削減度に応じて星を最大5個まで付けることができる

BELSのラベルには建築物の名称をはじめ、評価を実施した年月日や機関名、エネルギー消費量が基準と比べてどのくらい多いか少ないかを表示する。建築物の省エネ性能がひと目でわかるようになっている

建築物の販売・賃貸事業者はラベルのプレートを作って建築物の内外に設置できるほか、広告・宣伝や売買・賃貸借契約書にも表示できる。ただし建築物の購入者・賃借人に対して省エネ性能の内容を説明することが求められる

BELSに加えて新しい表示制度も4月に始まる。主に既存の建築物を対象にした「省エネ基準適合認定・表示制度」である。省エネ性能が基準に適合していることを行政庁(国や自治体)に申請して、審査を通ると認定マーク(eマーク)を表示することが可能になる。表示できる内容はBELSとほぼ同様で、BELSの星やエネルギー消費量の情報を省略した形だ

省エネ性能は設計情報で評価

実際に省エネ性能を評価するためには、空調や照明などのエネルギー消費量に加えて、外皮(壁や窓など)による熱の損失を考慮する必要がある。非住宅の場合には外皮の断熱性能を「PAL(Perimeter Annual Load、年間熱負荷係数)」と呼ぶ数値基準で計算する。冷暖房に必要な外部の熱と内部で発生する熱を合計して、床面積あたりの断熱性能を評価する方法だ

一方でエネルギー消費量は「一次エネルギー」に換算して評価する。一次エネルギーは自然界に存在する化石燃料や再生可能エネルギーのことで、一次エネルギーから作る電力や都市ガスなどは「二次エネルギー」と呼ばれる建築物で消費するエネルギーの多くは二次エネルギーだが原料になる一次エネルギーに換算して消費量を計算する

省エネ性能は建築物が立地する地域や用途、床面積によって基準値が決まっている。空調や照明のほか、昇降機(エレベータ)や事務機器・家電機器のエネルギー消費量を合計して「基準一次エネルギー消費量」を計算する。これに対して建築物の設計情報をもとに「設計一次エネルギー消費量」を算出して、「基準一次エネルギー消費量」を上回らなければ省エネ基準に適合するとみなす

「設計一次エネルギー消費量」ではエネルギー管理システムによるエネルギー削減量や再生可能エネルギーを使った発電システムのエネルギー創出量を差し引くことができる。設備を使わないで実施する節電対策は対象外だ。「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」を計算するプログラムは「国立研究開発法人 建築研究所」がインターネットで提供している

2020年に新築で100%基準適合へ

BELSのラベルには「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」を記載して、絶対値による省エネ性能を示すことも可能だ。表記する場合の単位はMJ/(m2・年)である。1MJ(メガジュール)は電力に換算すると0.28キロワット時に相当する

BELSのラベルに表示する星の数も「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」で計算して決める。「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割った「BEI(Building Energy Index)」を指標にして、BEIが小さいほど星の数が多くなる

最高の5つ星は「設計一次エネルギー消費量」が「基準一次エネルギー消費量」の半分以下でないと与えられない省エネ基準に適合するのは2つ星以上だ政府は新築のビルや住宅の省エネ基準適合率を2020年をめどに100%に高める方針を掲げている

さらに2030年には新築の建築物の一次エネルギー消費量が平均でゼロ以下になることを目指す。一次エネルギー消費量がゼロ以下の建築物は「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」あるいは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」と呼ばれる再生可能エネルギーによる発電量を増やすことによって、実際のエネルギー消費量と相殺してゼロ以下に抑える

スマートジャパン2016.03.18
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