パナマ文書の衝撃→英自治領に疑惑の目

 ■31万社、26兆円投資

【ロンドン=岡部伸】タックスヘイブン(租税回避地)を利用した資産隠しを暴いた「パナマ文書」問題を受け、英国の自治領と本土を結ぶ不正資金のネットワークの実態にようやく疑惑の目が注がれているキャメロン政権は遅まきながら、海外領での課税逃れ防止や不正資金を流入させる海外法人の規制強化など信頼回復に乗り出した

「不正の温床」

租税回避地の多くは小さな島国だがかつて大英帝国として世界中に植民地を展開した英国は、カリブ海や大西洋などに14の海外領を保有本土周辺にはジャージーなど3つの王室領の島々がある自治領の多くは外交や防衛を英国に依存する一方、議会や通貨を持ち、英国法の適用は受けないめぼしい産業がないため、税を減免し、国外の企業や富裕層に法人を設立してもらい、手数料などで収入を得てきた

税制の異なる国で二重課税に直面する企業などにとって「必要悪」ともされる租税回避地だが、大半は情報公開が不十分で、財産を隠したい企業や富裕層に都合が良く、課税逃れに悪用され「不正の温床」となっているパナマ文書によると、最も多く利用されるのが英領バージン諸島で、文書に関与した法律事務所、モサック・フォンセカの顧客が11万社存在する

キャメロン首相は4月11日、議会で海外領での課税逃れ防止に取り組む意欲を示した英当局が大半の英領の租税回避地との間で、所有者など企業の実体について情報共有する

シティーにクモの巣

パナマ文書は租税回避地に設立された数千の企業が英国とつながりを持ち秘密資産が英国内とりわけロンドンの不動産に投資されたことを浮き彫りにした

『タックスヘイブンの闇』の著者で金融記者のニコラス・シャクソン氏は、「金融街シティーを中心に何重かの同心円状に旧植民地が情報公開を拒む『クモの巣』を作り、租税回避地にブラックマネーが流れ、洗浄されてロンドンに還流される海外領土が『怪取引の外注先』としてペーパーカンパニーを介して取引され、“脱税”は行われる」と指摘。またシャクソン氏は、金融機関が法律、会計事務所を使って便宜を図っているとしている

不動産高騰、10年で倍

 パナマ文書によると英国はモサック・フォンセカの仲介企業数で世界第3位、3万2682人の顧問を有する犯罪に絡んだ資金洗浄などの不正行為に利用されることがある

英国の不動産には租税回避地に絡んで企業約31万社が計1700億ポンド(約26兆円)を投資し、このうち10%がモサック・フォンセカと関連があった

世界の汚職状況を監視する「トランスペアレンシー・インターナショナル」は昨年3月、「2004年以降、約2億ポンド(約320億円)の不正資金がロンドンの不動産市場に投じられた」と発表ロンドンでは、近年不動産価格が年率10%近く高騰、ここ10年で約2倍になっている

産経新聞2016.05.03

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