パナマ文書の真実

パナマ文書が流出して、タックスヘイブンの存在に注目が集まっていますタックスヘイブンを利用して租税を回避することは、多くのケースが違法行為ではありません。しかし、違法ではないから問題がないというわけではありませんタックスヘイブンはいまの世界を悪くしている諸悪の根源と言っても言い過ぎではないでしょう

こう語るのは、上村雄彦教授(横浜市立大学 学術院 国際総合科学群 グローバル協力コース長)。上村教授は『グローバル・タックスの構想と射程』などの著書があるタックスヘイブン研究の第一人者だ。上村教授はタックスヘイブンの問題点をこう語った(以下の発言はすべて上村教授)

現在、タックスヘイブンに隠されている金融資産は900兆円~3500兆円と試算されています日本はアメリカ・中国に次ぐ世界第3位の経済大国ですが、日本の国家予算はおよそ100兆円。3000兆円で計算すると日本の国家予算の30倍ものおカネが裏経済にまわされて実態が隠されてしまっているのです。これだけでも非常に大きな問題であることがおわかりいただけると思います

この3000兆円のうち、日本の企業や資産家のおカネはどのくらいあるのか。その実態は明らかにされていませんが、タックスヘイブンとして有名なケイマン諸島に限れば、日本企業がここに保有している会社の投資残高は約65兆円。アメリカに次いで2番目の巨額資産を保有しています。

 この65兆円に対して、たとえば日本国内の消費税分の8%を課税できたとしたら、その総額は約5.2兆円。単純に比較することはできませんが、消費税を1%あげると2兆円強の税収となりますから、タックスヘイブンに隠された金融資産に対して公平に課税することができれば、消費税をあげる必要はなくなるのです

いま世界の富の90%以上を、わずか1%のカネ持ちが独占していると言われていますそんな大企業や資産家がタックスヘイブンを利用して租税を回避する一方、われわれのような庶民は源泉徴収できっちり税が取られ、あげくは消費税を上げられて、ささやかな生活が脅かされるというのはどう考えてもおかしいと思います

もう少し細かくタックスヘイブンの問題点を考えていきましょう。
まずは、払われるべき税金が払われないため、国庫に金が集まらず、結果、収入の多くない庶民にしわ寄せが行く点です。「自分の力で稼いだお金だから、自分の好きにしていいでしょう」という人がいますが実際には、安定した社会、充実した医療、福祉、教育という土台があり、商品やサービスを買ってくれる多くの人がいたからこそ手に入れられた財産なわけですそのような恩恵を受けて手に入れた財産なわけですから、税金を納めるのは当然ではないでしょうか

タックスヘイブンを使うのは、「節税」だという人がいます
仮に日本の税金が高いから税金の安いマレーシアに移住しようと考える人がいる。これは「節税」行為で、法律的にも道義的にも問題はありません一方、所得などを過少申告して税金を払わないケース。これは完全な「脱税」です発覚すれば逮捕されたり罰金をとられたりします。タックスヘイブンを利用するということは、日本に住みながら、形だけ外国に会社を作ったり、住所を移したりして、税金を免れる行為です実際には日本に住んで、さまざまな恩恵を受けながら活動を行い、利益を得るそれにもかかわらず租税だけ回避するのですから、実質的には犯罪的行為と言えるでしょう。ただし。現在は取り締まる方法や法律がないから、形だけ「合法」になっているだけなのです

不透明性・匿名性もタックスヘイブンが抱える非常に大きく深刻な問題ですタックスヘイブンでは、資産を保有している人や会社の名前が明かされません。ブラックボックス状態なのです。そのため、非合法な手段で蓄財されたお金が眠っていたり、マネーロンダリングの温床になっていたりします国際的な犯罪組織やテロ組織の資産が流入しているケースもあります

ではこのタックスヘイブンの問題を解決する方法はないのか。
タックスヘイブンのすべての情報が公開されれば、多くの問題は解決されます。ですので、現在OECD(経済協力開発機構)という国際機関が中心となって、タックスヘイブンの口座情報などを各国の税務当局が自動的に交換できる仕組みを作ろうとしています

もう一つ重要な対策が「金融取引税」の導入です金融取引の50%はタックスヘイブンを通じて行われていますまたタックスヘイブンに流入した金融財産の多くは、マネーゲームに使われています株、債券、為替、デリバティブなどの市場では、1秒間に1000回以上の早さで取引が行われていますこうした投機的な金融取引に対して、取引するたびに課税して投機を抑え、税収を上げようというのが金融取引税です

2015年12月、フランス、イタリア、ドイツ、ベルギー、オーストリア、スロバキア、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、スロバニアが金融取引税の導入に関して大筋合意しました情報の公開とともに、こうした動きが、欧州だけでなく世界に広まれば、タックスヘイブンを利用するうまみがなくなり、将来的に問題が解決できるかもしれません

タックスヘイブンの闇を明らかにして、取るべきところから税を取り、税収を途上国や私たちの暮らしの向上のために使う。つまり、タックスヘイブンの問題は、海外の問題ではなく、実は日本に暮らす私たちに直結する重要な問題なのです

FRIDAY2016.04.21

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