パナマ文書→震源地に広がる不安と不満

オフショア関連で最大級のスキャンダルへの驚きを心に抱え、法律家やビジネスマン、そして政治家がパナマ市内のある場所に情報を求めて集まってくる金融街と歴史地区に挟まれた場所にある1950年代創業のカフェ「ブールバール・バルボア」だ

「パナマ文書」をめぐる報道が、流出元の法律事務所モサック・フォンセカを揺るがせた後だけに、このカフェのオレンジジュースやサンドイッチの味は、いつもほど格別ではないようだ

企業の顧問弁護士で、複数の法律事務所に籍を置くパブロ・ゴンザレス氏(39)は「4日はイタリアの顧客と契約を結ぶ寸前だったが、先送りされてしまった」とこぼす。「彼らはすべてチェックするよう、われわれに10回にわたって頼んだ。ビクビクしていて、全てが合法であるとの確証が欲しいんだよ」。顧客名は明かさなかった

■ 国家経済に打撃も

モサック・フォンセカなどが設立した法人は、脱税や金融犯罪に利用される可能性もある。だが、弁護士たちは法人設立について、その大半は外国人やパナマ人自身のための合法的な事業なのだ、と強調している

パナマは世界的に有名な運河のおかけで、国際的な海運業の主要拠点の1つに数えられてきた法人の設立規制が緩いため、法律関連の業務も盛んだ。同国商工会議所のトップは、オフショア業務がパナマ全体の国内総生産(GDP)に占める比率は約0.5%にすぎないのに、今回の漏洩によって悪評が広がり、国家経済に大打撃となるかもしれないと憂慮している

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)などが3日に掲載した記事は、政治家や資産家らが40年間にわたって富を隠し続けてきたことを示し、世界中で捜査が行われている

モサック・フォンセカは自社がハッキングの被害者だと主張パナマの法曹界でもたった1社からの情報漏洩が同国全体の評判をおとしめビジネスにも響くのは不公平だとして、怒りや憂慮の声が巻き起こっている

パナマ政府はスキャンダルに巻き込まれたすべての国とコンタクトを取っていると説明。また、フランスがパナマを非協力的な租税回避地としてブラックリストに再び載せると表明したことに対し、報復措置もあり得るとの姿勢を示した

カフェで弁護士の夫と一緒に朝食のサンドイッチを食べていたジーマ・アラウズさん(58)は、報道が出た3日以降に、知人の弁護士が契約を2件ふいにしてしまったと語る。「わが国に悪いイメージを与えると心配している。あれは事実を反映していない」

ロイターはゴンザレス氏を含め、20人を超える弁護士に話を聞いた。その大半は、今回の件がパナマに与えるイメージは不公平だと抗議。同国では昨年成立の資金洗浄規制法が、非常に厳格に適用されていると指摘した

ゴンザレスは一例として、ある顧客が曲芸用飛行機をエチオピアの投資家に売却するためオフショア企業に引き渡そうとしたが、資金洗浄規制に触れる可能性が出てきたため撤回したと語った

■ 「CIAの陰謀だ」との声も

5日夜はパナマ法曹界の中心とされる大学も、いかめしい雰囲気に包まれていた。噂やゴシップに混じって、漏洩の黒幕は米中央情報局(CIA)や経済協力開発機構(OECD)ではないか、との陰謀説もささやかれていた

法律業界に深刻な影響が出るかもしれないとの懸念も強い。マリア・イザベル・サラビア弁護士は「顧客には集団ヒステリーが起きている」「じわじわと影響があると予想している。私たちの顧客は、自身が犯罪者であるかのように感じている」と語った

(記者:エリダ・モレノ 編集:サイモン・ガードナー、グラント・マクール)

Reuters

東洋経済オンライン2016.04.08

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