パナマ文書→中国の腐敗と資本逃避深刻

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、タックスヘイブン(租税回避地)に関わる「パナマ文書」に記載された企業・個人名、住所などを日本時間10日午前3時に公表した「史上最大の公表」(ICIJ)の中でも、最も大規模とされるのが中国関連だ。習近平国家主席ら共産党指導者層の親族らの名前が並んでおり、腐敗と資本逃避の深刻さがあらためて浮き彫りになっている

ついにパンドラの箱が開く-。ICIJは「秘密法人とその背後にいる人物たちに関する史上最大の公表」と位置づけており、21の回避地に設立された20万社以上、関連する37万人が関係する国ごとに整理され、名前からの検索も可能となる

不透明な蓄財や資金流出の実態が暴露される対象として最も注目されているのが中国だ

ICIJによると、情報が流出したパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が設立したペーパーカンパニー1万6300社以上が同事務所の香港と中国本土の支所を通じて設立されており、全世界の29%を占める最大のお得意さまだ

パナマ文書ではすでに、習主席の義兄のほか、中国共産党序列5位の劉雲山(りゅう・うんざん)政治局常務委員、同7位の張高麗(ちょう・こうれい)筆頭副首相の親族がそれぞれ租税回避地の法人を所有していたことが発覚した

現役以外でも李鵬元首相の親族や、建国の父と呼ばれる毛沢東元主席の親族らも名を連ねており、BBCニュースは「中国の最富裕層がいかにオフショア投資(租税回避地での投資)に依存しているかという大きいトレンドの証拠だ」と報じている

ICIJはパナマ文書について報じたウェブサイトで中国に関する項目で「すべてのオフショア取引が違法というわけではないが、英領バージン諸島のペーパーカンパニーによって、政治エリートと富裕層のパトロンの金銭的関係を見えにくくしたり、資産隠しや税逃れ、匿名での株式購入を可能にしている」と指摘した

これまでのところ、パナマ文書では、実際にどの程度の資産が中国から流出し、蓄財されているのかは明らかになっていないが、以前にヒントになりそうな報道がいくつかある。

 ICIJは14年にもオフショア取引に関して報道、シンガポールとバージン諸島の2つのオフショアファンドから流出した文書を分析しているがここでも習主席の親族による法人が登場している。その中で00年以降に中国から国外に流出した出所不明の資金は「1兆~4兆ドル(約107兆~428兆円)」との推計を紹介している

また、12年には、ブルームバーグが国家主席に就任する直前の習氏の資産状況について報道。姉夫婦とその娘が、3億7600万ドル(約402億円)の資産を保有していると分析した

その後の経済失速もあって、中国からの資本逃避は昨年以降加速し、15年の1年間で中国国外に約1兆ドル(約107兆円)が流出したとの見方もある

国際金融協会(IIF)は、中国の流出から流入を差し引いた「純流出額」は15年が6750億ドル、16年が約5300億ドルにのぼり、新興国で最大の割合を占めるとみている。

中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「中国からは合法、非合法含めた資金が流出している。特に共産党幹部の子弟である『太子党』の場合、国有企業の海外子会社の役員に就くケースも多い。国有企業の合法な企業の海外投資の形で資本流出や蓄財が可能となっており、手法も巧妙化している」と語る

共産党幹部が巨額な資産を築く極端な例は、賄賂などによる不正蓄財のケースで、その場合、金額はケタ違いだ

江沢民元主席の最側近で、汚職で摘発された周永康元政治局常務委員のケースでは、本人と親族、部下を含め、約900億人民元(約1兆4800億円)が差し押さえられたと報じられた

ただ、前出の宮崎氏はこうした賄賂による蓄財も状況が変わってきているという。

「習政権が政敵をつぶす目的で行った反腐敗キャンペーンの結果、ここ2年ほどは賄賂などによる蓄財はできなくなっている。来年10月の党大会までには反腐敗運動をやめてもらわないと困るという不満が高まり、我慢の限界に達している共産党幹部もいる」という。

中国当局はパナマ文書に関する報道を検閲しているが国内外の人の出入りが激しい中で、情報を封じ込めることなど到底不可能だパナマ文書公開をきっかけに、共産党の権力構造に異変が生じることもありそうだ

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