バブル頂点611兆円が目前

日本株の時価総額が600兆円の大台に乗せ、バブル景気に沸く1989年に記録した史上最高の更新が見えてきた。アベノミクス相場によるこの2年余りの株高効果に加え、上場社数の増加も寄与している。

東京証券取引所によると、市場1・2部、マザーズ、ジャスダックの合計時価総額は3月末で575兆4529億円。ピークは89年12月末の611兆1519億円、03年3月末にはバブル崩壊後最低の232兆8621億円まで減った。リーマン・ショック後の09年2月末の250兆8181億円を直近ボトムに増加基調にあり、28日時点では605兆2223億円となっている。

投資家が株式市場で評価した企業価値である時価総額は、上場各企業の株価に発行済み株式総数を乗じて算出される。東証1部全体の値動きを示すTOPIXは、アベノミクスによる経済刺激策や企業業績の改善から13-14年の2年間で64%上昇21日に07年11月以来の1600ポイントを回復したが、89年12月の最高値2884.80(終値)と比べると56%の水準だ。一方、東証に上場する企業数は89年の1597社に対し、今月28日時点では3479社と2倍以上に増えた。

野村総合研究所・研究創発センターの大崎貞和主席研究員は、「過去20数年を振り返れば、サントリー食品インターナショナルやリクルートホールディングスなど日本を代表する企業が上場した。市場と対峙することは良いという認識が企業に広がった」と指摘。今秋には日本郵政グループ3社の上場も予定され、「時価総額は今後ピークを更新していくだろう。それは、日本で資本市場に評価される活動が増えていることや日本企業の復活を意味する」と言う

ただ大崎氏は、増加した上場企業の大半は小規模のため、全体への影響は大きくなく時価総額全体の拡大に寄与したのは各業界を代表する上位企業群だとみている

1位興銀、電話回線時代

 

89年12月末の東証1部時価総額上位は日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行、東京電力、三和銀行、NTT、トヨタ自動車、野村証券と金融や電力セクターなどが中心。一方、現在はトヨタやホンダ、ファナック、キヤノンなど製造業、ソフトバンクやKDDIなど新顔も並び、厳しい国際競争を生き抜いた企業が存在感を増すなど、四半世紀の時を超えて上位陣の顔ぶれは一変した。

UBS証券の大川智宏エクイティ・ストラテジストは、足元の時価総額拡大の流れについて「電話回線が主流だった当時と比べ、ソフトバンクやKDDIといったIT・通信技術の新しい産業が市場の中に組み込まれてきたことが大きい」との認識だ

89年以降に上場し、現在の時価総額が拡大した大型企業群はソフバンク、KDDIの通信キャリア2社のほか、JT、ファーストリテイリング、JR東海、JR東日本、オリエンタルランド、ヤフー、楽天、大塚ホールディングス、JR西日本、リクルトH、サントリ食、カルビー、トレンドマイクロなどがある

ROEも改善、ウエート上昇には結び付かず

大川氏は、バブル時の主要産業もなお存在感を残しているものの、「新たな産業が入ったことで市場としては成長している」と分析。グローバル展開で資金調達ニーズが出ている内需企業、資本市場の中で効率化を迫られる民営化企業もこれに含まれると言う

みずほ証券の永吉勇人チーフクオンツアナリストによると、日本の株主資本利益率(ROE)はバブル期は7.5%だったが、その後の落ち込みを経て、15年3月期は推定で9.0%へ改善している。「過去は一時的に高ROEが生じても、継続的に達成できず、株価が落ちて時価総額が縮小することを繰り返した」と同氏。一方、時価総額が拡大した一因として「海外と比べて日本は退出が少な過ぎて新陳代謝しておらず、成熟企業ばかりになる。最適資源配分の面から問題」と指摘した。

グローバル投資家が株式運用のベンチマークとするMSCIワールドインデックスにおける日本のウエートは、3月時点で8.62%。SMBC日興証券の推計によると、年末時点での比較では88年がピークで、時価総額が最大だった89年は40%。2000年ごろに10%弱まで減り、その後大きな変動は見られない。円ベースでの時価総額は増えているものの、為替のドル高・円安の影響でドルベースでの日本のウエートは大きく増えていないのが現状だ

日本がもたついている間に米国をはじめとする他の国の株価も上がり、マラソンでトイレ休憩をして戻ってくると、皆が先を走っていたような状況だ」とSMBC日興証の伊藤桂一チーフクオンツアナリスト。日本の株価水準は戻ってきているが、「日本はまだまだやることがある。企業収益拡大などファンダメンタルズを伴って日本の価値が増えてこないと、昔の栄光を取り戻すのは難しい」としている。

参考 Bloomberg    2015.04.30

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