タンス預金は隠し財産になる?

 最近、タンス預金について相談を受けることが多くなりました。一説によると、タンス預金は40兆円にのぼるとも言われています。マイナス金利の影響もあるでしょうが、相談に来られる方の動機はおおかた、「税務署に把握されないように」というものです
タンス預金急増の背景の一つに、マイナンバー制度の導入がありますマイナンバーは、社会保障や災害対策にも利用するとされていますが、どちらかというと「納税者番号」としての側面が強いのではないでしょうか本格的な制度運用が始まる前に、「税務当局に把握されない財産」を作っておきたいと思う人が増えている、と考えられます
もう一つの背景は、相続税の増税です。去年から、相続税の基礎控除額が、「5000万円+1000万円×法定相続人」から「3000万円+600万円×法定相続人」に引き下げられました。仮に4人家族で相続人が3人とすると、財産額4800万円超で基礎控除額を超えることになります。このため、例えば首都圏では、相続税の申告対象者の割合が、全体の半分近くになるといわれています。都市圏の一戸建てに住んでいる、数千万円の退職金や生命保険金が見込まれる、というだけで相続税の申告対象者になるご時世となりました。かからないはずの税金がかかることになったため、何とか逃れたいと考える人が急増した、ということでしょう
では、そもそもタンス預金にしていると税務当局に把握されずに済むのでしょうか?
国税庁の統計では、相続税の税務調査件数のうち、約80%もの事案で申告漏れが見つかり、追徴課税となっています申告漏れでは、現預金や有価証券が半分を占めています。現預金や有価証券は、一見隠しやすい財産に思えるかもしれませんが、相続人への質問、被相続人(故人)の所得税の申告書、金融機関への照会などを通じて意外と簡単に課税逃れが発覚してしまうようです
勘違いしやすいのは、「マイナンバー制度で課税逃れが難しくなる」というのではなく、そもそも「マイナンバー制度が導入されなくても課税逃れは難しい」ということです。むしろ、必ず見つかると心得ておいた方がいいかもしれません
結論としては、財産を隠すようなことは考えない方が得策で、だからこそ、贈与や相続で適切な対策を取っておく必要がある、ということではないでしょうか

(文 キャピタル・ソリューション(株)代表取締役・森秀光 / 朝日新聞デジタル「&M」)

朝日新聞デジタル2016.05.20

  images-3-48-150x150images

【関連する記事】