スズキアルトワークスの実燃費

今回、燃費テストを実施したのは「アルトワークス」。

ワークスはターボRSに対し若干トルクアップされたエンジン(最高出力64ps、最大トルク10.2kgm)に、1速から4速のギア比をクロスさせシフトフィールにもこだわった5速MT(ターボRSに対し変速スピードを早めるなどの専用チューニングを施した5AGS、4WDも設定)を組み合わせたほか、専用チューニングのサスペンション、電動パワーステアリングのセッティング変更、リム幅を広げたアルミホイールを装着。さらにインテリアもレカロシートを装備するなどしてドライバーの気分を盛り上げる演出を施している

軽スポーツモデルの真打、「スズキ アルトワークス」の実燃費を測ってみた [画像81枚]

カタログに載るJC08モード燃費は、アイドリングストップに代表される燃費向上に寄与する目立ったデバイスはないものの、FFの5速MTは670kgというアルトならではの軽さを生かして「23.0km/L」という値を誇る。

今回の燃費テストでは、ワークスのFF+5速MT(JC08モード燃費23.0km/L、150万9,840円)を起用。テストは午前7時に開始し、午後3時頃に帰京するというスケジュールで実施。

天候は終日晴天。燃費テストは少々旧聞となる今年1月に実施したため、気温は最低気温0度、最高気温9度という寒さで、交通状況は平均的な流れであった。

スズキ アルトワークス燃費レポート/高速道路編

アルトワークスは乗ってみるとイメージから予想される通りの実に痛快なホットハッチである。

まず動力性能はスポーツエンジンらしいフィーリングでターボラグもなく、スタートでアクセルを踏んだ瞬間から常にモリモリとしたトルクの太さが全域で感じられるのに加え、3000回転以上ではターボエンジンらしいパンチも加わり、やる気満々といった印象だ

高回転域のエンジンフィールは、7000回転のレッドゾーン付近で爆発的なパワー感を伴いながら回るタイプではないものの、レッドゾーンまでパワーが落ちることなくシッカリと回る点には好感が持てる

絶対的な動力性能も車重が670kgと軽いこともあり、アクセルを踏めばガンガンスピードが乗るためほとんどの人が「速い」と感じるに違いない

なおトップギアとなる5速100km/h走行時のエンジン回転数は、クロスされたギア比ということもあり現代の車では珍しく、高回転の4000回転を少し切るあたりであった。そのため高速巡航中の音はうるさく、燃費面でもマイナスではあるが、代わりに5速80km/h程度あたりからでもアクセルを踏めば即加速体制に入り追い越し加速を済ませられるというフレキシビリティを得ていることも事実で、アルトワークスのキャラクターを考えれば許容できる

しかしながら、高速巡航中はエンジン回転数を抑え静粛性と燃費に好影響を与える6速ギアか、クルーズコントロールを装着することで巡航スピードを抑える、もしくは両方を装備し、高速巡航中の静粛性・燃費を向上させる、といったことがなお望ましい

高速道路での燃費は21.0km/Lを記録した。巡航回転数の高さという不利がありながらリッター20kmを超える燃費を記録した要因はズバリ670kgという車重の軽さだろう。

スズキアルトワークス高速道路における実燃費/ 21.0km/L

スズキ アルトワークス燃費レポート/郊外路編

アルトワークスはハンドリング、乗り心地もいい意味でピリリとしたホットハッチらしいスパイスの効いたものであった。

アルトワークスの郊外路での印象をお伝えする前に、ターボRSの印象を振り返ってみると、こちらも動力性能はワークスと同等の670kgという軽さのおかげで軽のスポーツモデルと思えない申し分のないものを持つ。

しかし、ワインディングロードなどでもペースを上げると、5AGSの変速スピードが特にシフトアップの際に遅く、俗にトルク抜けと言われる空走感を覚えるケースが多々ある。ハンドリングも、標準モデルのアルトと同じくハンドル操作に対する車の動きがスローなのと、そこまで硬いという訳でもない足回りも相まって、乗り心地はそれほど良くないという中途半端さを感じる

総合すると「130万円以下というパワーのあるちょっとスポーティなアルトと考えればまあ納得できる、せめてMTも設定して欲しかった」という若干ネガティブな印象であった。

アルトワークスはターボRSからすると、目が覚めるようなスポーティなフィーリングに生まれ変わった

まず、ハンドリングは概要で書いた電動パワーステアリングのセッティング変更によるものなのか、ハンドル操作に対する車の動きがホットハッチらしいシャープなものになった。それに加え、ターボRSと標準モデルで曖昧だったステアリングセンター(中立)付近のフィーリングもしっかりとした落ち着きが感じられ、フロントタイヤのグリップもドライバーに明確に伝えてくれるものとなった。

そして足回りもターボRSに比べ当然硬くロール自体は少ないのだが、意外に良質なダンパーを使っているのかロールの起き方はごく自然なもので、荒れた路面に対しても跳ねるようなこともなく、路面の追従も良好だ。

それだけに軽自動車の全幅の小ささ、670kgという軽さ、クロスされたギアを駆使してついつい不要なギアチェンジを楽しみながら(実際には全域においてトルクの太いパワーバンドの広いエンジンなので、シフトダウンをするより上のギアをキープしたまま走った方が楽で速いのだが)ワインディングロードを走ると、常識的なペースで走っているだけでもドライビングに没頭でき、運転が非常に楽しい

また車重670kgの軽自動車という車そのものに対してパワーのあるFFだけに、スタートで高めのエンジン回転でクラッチをミートした際やヘアピンコーナーの脱出で荒くアクセルを開けるとホイールスピンを起こすこともあるが、パワフルと言っても軽乗用車のパワーだけに危険なことも少なく、安全な範囲で車との格闘(車と格闘するというのは本来よくない運転であるが、ホットハッチのような車であればこういった性格のものがあってもいい)を楽しむという乗り方もできる。

乗り心地も上質とまではいえないが、硬い割には路面の凹凸に対し足回りがよく動いており、路面が荒れたところではゴツゴツした硬さを感じることもあるが、それも許容範囲で、アルトワークスの性格に非常にマッチしたものとなっている

全体的にアルトワークスはコンパクトカーのスポーツモデルとしては登場から時間は立っているものの、完成度の高さやコストパフォーマンスの高さで人気となっているスイフトスポーツにもう一振りスパイスを掛けたような印象で、実にホットハッチらしい楽しいクルマに仕上がっている

郊外路での燃費は高速道路と同等の20.5km/Lを記録した。楽しく走れる代償の燃料代としては非常にリーズナブルなもので、これだけの燃費を記録した要因はやはり軽さであろう。欲を言えば郊外路のペースでも5速2000回転以上エンジンが回ってしまうことが多々あり、6速MTになればなお好ましい

スズキアルトワークス郊外路における実燃費/ 20.5km/L

スズキ アルトワークス燃費レポート/市街地編

アルトワークスのMT車はアイドリングストップもなく、主に市街地を運転して感じたのは、低速からトルクフルなエンジンにクロスされたギア比を組み合わせているだけに、5速1000回転ちょっと、スピードにして35km/hあたりからでも流れに乗れるフレキシビリティ(扱いやすさ)や、5速ギアを順番通りにシフトしなくとも1-3-5のような順でシフトアップする飛ばしシフトも非常にやりやすい(むしろトルクが軽乗用車としては有り余るほど太いため、順番にシフトするのが煩わしいほどだ)ことくらいである

その他、気付いたことを書くと

■クラッチフィール、シフトフィール

クラッチは適度な重さと剛性感があり、つながりもごく普通で非常に扱いやすい。シフトフィールも適度な節度があり、シフトレバーも短めで良好、ギアの入りも申し分ない。市街地でもクロスされたMTを駆使し無駄なシフト操作をしながら軽乗用車の狭い全幅を生かし、空いたスペースを探しながらスムースに走っているだけで楽しい。

■レカロシート

アルトワークス最大の欠点がワークス専用のレカロシートである。レカロシート自体はホールド性、座り心地とも素晴らしいのだが、着座位置が頭の中で?マークが連発するほど高く、アルトワークスのスポーティな雰囲気をブチ壊していることは心底残念だ。レカロシートの設定があるのはいいことだと思うが、この着座位置を諸般の事情で調整も含め変えられないのであれば、レカロシートはオプションまたはレスオプション設定とすることでターボRSのシートを標準とし、ユーザーの選択幅を広げていただきたい。着座位置に関しては幸いなことに、スズキ車のチューニングを得意とするモンスタースポーツから着座位置を下げるシートレールが発売予定なので、アルトワークスを購入した際にこういったパーツで着座位置の高さだけは手を加えたい。

市街地の燃費も高速道路、郊外路に近い19.5km/Lを記録した。軽乗用車とはいえアイドリングストップなしでリッター20km近い燃費を記録した要因としては軽さに加え、前述した優れたフレキシビリティによりトップギアの5速で長い距離走れた点や、飛ばしシフトでも余裕を持って流れに乗れたことが挙げられる。

スズキアルトワークス市街値における実燃費/ 19.5km/L

スズキ アルトワークス燃費レポート/総評

スズキアルトワークス総合実燃費/ 20.3km/L

アルトワークスは高すぎる着座位置以外、軽ホットハッチらしい運転する楽しさ、雰囲気、個性、スポーツモデルとしては素晴らしい燃費など文句の付けようがない仕上がりであった。その上、ホンダ S660のようにもう1台実用車が欲しくなるといった、楽しさと引き換えの不便さもなく(それはそれで悪いことではないが)、2人乗車までが中心の使い方であれば申し分のない実用性、普遍性も備えているのに加え、価格もリーズナブルであるので、購入を考えている人、興味があるには背中を押すどころではなく、背中を蹴飛ばすように「欲しいなら即買うべきですよ」と勧めたい

同時にワークスの登場でアルトシリーズにおいてもターボRSの存在意義が、靴で例えればウォーキングシューズのようなターボRSと、ランニングシューズのようなワークスといった具合で明確なものに感じられるようになったことも印象的だった。これでターボRSにもMTが加わればさらに望ましい。

最後に私事になるが、半年ほど前にマイカーをデミオディーゼルから中古のトヨタ86に替えた筆者であるがアルトワークスも自分のものにしたい存在として、時たま頭をよぎることがあり、ちょっと困っているところである

永田恵一

オートックワン2016.05.28

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