インテルはなぜ2兆円の買収に挑むのか?

 半導体最大手、米インテルが6月1日に発表した167億ドル、日本円にして2兆円を超える大型買収。同社にとって過去最高の金額で、同業の米アルテラを傘下に収めることになった

アルテラの2014年度の売上高は19.3億ドルと、業界内では中堅メーカーに位置づけられる(右図)。だがアルテラは、製造後にユーザーがパソコン(PC)上で回路構成を自由に変更できるFPGAという半導体で、米ザイリンクスに次ぐ世界2位、シェア4割弱を占めている

 FPGAは通常のロジック半導体に比べて、低コストで少量多品種生産を可能にする今後、あらゆる物がインターネットでつながっていく、いわゆるIoT(インターネット・オブ・シングス)の時代を迎える中では、重要性が増すとみられている

■ スマホ向け半導体にも減速感

これまで半導体の主な需要先であったPCやスマートフォンは、1製品当たりのロットが大きかった。が、IoTの時代が到来すれば、多様な製品にそれぞれ対応する半導体が必要となってくる。そこで柔軟性に長けた、アルテラのFPGAが活躍する場の広がりが期待されるわけだ

半導体市場では、PCやタブレット端末が成熟期を迎え、さらに足元では需要拡大を牽引してきたスマホにも減速感が出始めているPC用マイクロプロセッサーで、約8割のシェアを占めるインテルも、同市場の停滞の影響を受けている

同社は2014年度に営業利益153億ドルで着地し、営業利益率も27%と、今も抜群の高収益体質を誇る。だが、2011年度に過去最高となる営業利益174億ドルをたたき出してからは、失速。営業利益率も当時の32%からは低下した

 このような状況において、ブライアン・クルザニッチCEO(最高経営責任者)は、2014年度版のアニュアルリポートで、「急拡大している、IoT関連市場が本流になる時代が来る前に投資を行い、先導的な地位を確立する」と宣言。実際に、同社の2014年度のIoT関連事業の売り上げは、前期比19%増となる21億ドルに拡大している

これにアルテラの売り上げを単純合算すると、40億ドル規模に膨らむ。依然としてPC関連の346億ドルや、データセンター関連の143億ドルと比べると小さいもののインテルが新市場を開拓する橋頭堡を築いたといえる

具体的に需要拡大が期待されているのは自動車、工場の自動化設備や家電向けなどの製品だ。中期的にはこうした分野で、無線通信機能を備えた半導体の搭載が増加していくと見込まれる。現状で150億台ほどのネットワークに接続する機器が、2020年には500億台に拡大するとの予測もある。さらに、膨大なデータを処理する、サーバー向けの需要増も追い風だ

■ 本格化する業界再編

実は半導体業界の大型買収はインテルに限った話ではない。今年3月には、車載用半導体に強みを持つ蘭NXPセミコンダクターズが、競合の米フリースケール・セミコンダクタを167億ドルで買収すると発表。5月末に発表された、米アバゴ・テクノロジーによる通信用半導体の米ブロードコムの買収金額は370億ドルと、日本円で実に4.6兆円にも上った

民間調査会社IHSグローバルの南川明アナリストは、「NXPは成長する車載分野でのシェア拡大、アバゴはIoTに対応する技術獲得などで、対応を急いでいる」と、その背景を分析する

半導体に対するニーズが大きく変わりつつある中、大型買収を含む業界再編の動きは今後も続きそうだ

参考 「週刊東洋経済」2015年6月20日号<15日発売

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