よい企画はすべて引き算で作られている!

仕事で企画を詰めていると、「あれも」「これも」と、アイデアを付け足したくなってしまうものです自分の企画に少しでも売りを増やしたい、そしてそれを全部伝えたい。そういう気持ちはなかなか捨てきれないものです。今回は、アイデアの上手な「足し算」「引き算」についてお話します。

<今回のボツネタ>

【商品名】テキ時ー計(てきとーけい)

【当時考えた商品概要】

時間を分や秒まで表示することなく、「何時台」か、だけを表示してくれる時計分刻みで時間に追われることなく生活できる。また、表示される数字が少ないため、パッと見でおおよその時間が認識でき、液晶表示が減った分だけ消費電力も抑えられる

【ボツになったポイント】

・逆に焦る
・逆にわかりづらい

このネタは、時刻を知らせる「時計」から、余分なものを引いて別の価値を持ったモノを作ろうという考えから生まれました日本人は皆、忙しい忙しいと時間に追われています。一方、世界のいろいろな地域には、何時間も人を待ったり、遅刻したりすることが当たり前の文化もあると聞き、忙しさに追われずに幸せに生活できる時計を作れないか、という発想からこのネタを考えました。この後、試しに自分でデジタル時計の「分」の所にガムテープを貼り、見えないようにして暮らしてみたところ、5分で精神が崩壊しました

このボツネタのダメな部分を振り返りながら、企画の作り方を学んでいきましょう。

■企画は、初めは足し算、最後は引き算

企画の作り方を「足し算」「引き算」という言葉を使って説明するならば、足し算で膨らませたアイデアを、引き算で整えたものが企画であると言うことができます

今回のボツネタ『テキ時ー計』は、完成されているものから、大事な要素をさらに引いてしまい、使い物にならない商品企画にしてしまっています。企画の作り方に引き算が大切であるとはいえ、最初から引くという作り方はしません

僕は企画を作る時、彫刻をするようなイメージを持ちます。まず、像を作るのに必要な立派な石材を準備するように、アイデアをたくさん考え、足し算で大きな塊を作ります。そして、余計なものをどんどんそぎ落としていくのです機能、コスト、労力、伝える言葉……。ムダなものを減らしていき、基本的には、ただ1つのことが、短い言葉と1枚のビジュアルで伝わり、「欲しい!」と思わせるように企画を形作っていきます

企画を詰めていくと、どうしても売りを増やしたくなり、いいところを付け足したくなるものです特に、デジタルデバイスやアプリの開発などにおいては、機能を付け足すことがそれほど難しくないこともあるため、いろいろと詰め込もうとしてしまいます。そうすると、パッケージや宣伝などの中で、その機能を全て伝えたくなってしまうということにも陥りがちです

 あれも、これも伝えなければならない!と、キャッチコピーを3つにも4つにも増やしてしまい、何もキャッチできなくなってしまっている商品も、店頭では時々見かけます機能を増やすことは必要な場合がありますが、伝え方や使い方をてんこ盛りにして、難解にしてしまうことは、ダメです

企画を作るときの上手な足し算と引き算の使い方とは、どのようなものなのでしょうか?

良い企画はすべて、引き算で作られている

世の中の商品には、上手く引き算をしているものがたくさんあります。有名な製品の例では、主に高齢者など向けに必要な機能だけをわかりやすくした『かんたんケータイ』や、テキストのメモだけに特化したキングジムの『ポメラ』などがあります。いずれも、本当に必要なことだけを素早く簡単にできるような製品仕様が受け入れられた例です。これらはわかりやすい「引き算企画」です

それだけでなく、実は良い企画はすべて、最終的に引き算で作られています。特に、消費者に対する伝え方を、引き算で作っていくことが非常に重要です。例えばトレーニングジム『ライザップ』もその一例です。見せ方はとてもシンプルで、「この条件でこれを得られます!」と、ズバリ伝えています。

実際に受けられるサービス内容を詳しく聞くと、様々な要素がありますが、説明をそぎ落とし、たった1つを伝えるだけで大勢の関心を引き、あとは調べれば調べるほど、利点がたくさんあることが分かるサービスになっています。1つが伝わったからこそ、その先も自然に伝わっていくのです

今回のボツネタ『テキ時ー計』は、大事な機能を削り、そのせいで何も伝わらないものになっています。商品をより使いやすく、より伝わるものにするために引き算をするのです。そのためには、引き算を始める前の土台作りをしっかりと行います。削っても「核」が残る土台を作るのです忙しさに追われずに幸せに生活できる時計を作りたいと思ったら、まずはそのテーマに添って、彫る前の土台を作るようにアイデアを盛っていきます

忙しさに追われないためには…..?

・より集中できるように、ワンタッチで5分仮眠ができる、仮眠専用目覚まし時計?
・待ち合わせで相手が遅れた時に、スキマ時間で仕事や勉強ができる時計?
・残業がなくなるように的確な時間管理や通知をしてくれる時計?
・集中できる音楽とタイマー機能で仕事がはかどる時計?
・仕事を手伝ってくれる、ロボット時計?
・どんな機能、デザイン?……etc.

などなど、キーワードに沿ってアイデアを出し尽くし、売れる企画にするための「核」は何なのかを見極めていきます。最終的には、最も重要な1つのことを実現し、鮮烈に伝えられるように、捨てるものを捨てて企画は完成します。引き算をすることを勿体無いと思わず、完成品に彫る所が残っていないかを突き詰めるという企画の作り方をしてみてください。

■今回のまとめ

企画は、アイデアの足し算でつくった土台を、引き算で彫っていくことで完成させる

特に企画の伝え方に関しては、すべてを伝えなければならないと考えず、1つが伝わることですべてが伝わっていくものであると心得る

文・イラスト/高橋晋平

@DIME編集部

@DIME2016.04.20

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