なぜ人は→しょうゆ1㍑のんだら死ぬのか?

実際に「しょうゆを1リットルも飲んだ人がいた」という報告が2013年になされています

米国でしょうゆ約1リットルを飲んだ19歳の少年が、ナトリウムの取り過ぎで瀕死の昏睡状態となった。その後、医師たちが工夫した治療法のかいがあって、後遺症もなく回復したとJournal of Emergency Medicine誌に報告された」

幸いにも医師たちの懸命な治療により一命をとりとめ、1カ月後には少年は大学に復帰したそうです。このように、急速に血液中の塩分(ナトリウム)濃度が上昇すると致命的な状態になりかねません

「のどが渇いても海水を飲んではいけない」ということを聞いたことがありませんか? 塩分が濃いものを飲み過ぎてはいけない理由を説明します。

■「のどが渇いても海水を飲んではいけない」理由

海水の濃度は約3%体液中の塩分(ナトリウム)濃度は約0.9%です「海水のナトリウム濃度」の方が「体液中のナトリウム濃度」より濃い(高い)ので、当然のことながら海水を飲むと体内のナトリウム濃度が上昇しますナトリウム濃度が上昇すると、体内のセンサーが働いて、脳から「のどが渇いた」という指令が出されます

そこで水を飲むことができれば問題ないのですが、体内のナトリウム濃度より濃い海水を飲んでしまうことで、

 「のどが渇く」→「海水を飲む」→「ナトリウム濃度が上昇」→「さらにのどが渇く」→「海水を飲む」→「さらにナトリウム濃度が上昇」→……

という負のスパイラルが働いて本来は下げないといけないナトリウム濃度が、海水を飲めば飲むほど上昇してしまうことになります

ちなみに、塩の致死量は体重1kgあたり約3~3.5gとされています体重60kgだと180~210gですしょうゆの塩分濃度は濃い口で16~17%、薄口で17~18%。しょうゆ1リットルには約160~180gの塩分が含まれており、かなり危険なことがわかります

■人間の身体は水でできている

人間の体は水を必要としています水があって始めて臓器は正常に働きます汗や尿にも塩分(ナトリウム)は含まれていますが、体液のナトリウム濃度よりも薄い(低い)ので、汗や尿で水分が体外へ出ると、水分不足により体内のナトリウム濃度は相対的に上昇します

体内のナトリウム濃度の上昇を抑えるには、体内に水分を入れて薄めてあげないといけないのです。もしも、体液中のナトリウム濃度が高い状態が続くと、浸透圧により細胞内の水分が体液中に移動してしまうことになります

身近な例として漬物で考えてみましょう。漬物を作るときには塩づけにします。野菜の細胞と塩水が触れると野菜の細胞の膜が半透膜の役割をします。塩水のほうが野菜に比べ濃度が高いので、野菜の中から水分が出て行ってしまい、野菜はしぼんでシワシワの脱水状態になります。

私たちの体で考えると、「野菜」が「私たちの細胞」、「塩水」が「体液」にあたります。私たちの細胞を覆っている体液の濃度が高いと、浸透圧により「細胞内の水分」が「細胞外の体液」へ出て行ってしまいます。そうなると私たちの細胞内はシワシワの脱水状態に陥るマズい状態になってしまうのです。

成人の高ナトリウム血症の死亡率はなんと約50%

高ナトリウムにより細胞内脱水に陥ると、細胞の核の崩壊などを起こし細胞が壊れていきます脳細胞に障害が起きると脳症をきたします。脳症になると、神経の異常、けいれん、昏睡が見られ、悪化すると死亡することもあります

「成人の高ナトリウム血症の死亡率は40~60%である」というデータもあります高ナトリウム血症の死亡率が高い原因は、「脳浸透圧上昇の及ぼす影響」や「飲水不能な状態を通常もたらす持病の存在」などが考えられます特に高齢者は、水分摂取困難、口渇機構障害、腎濃縮能障害などがあることが多く、高ナトリウム血症になりやすいとされています

■高ナトリウム血症の原因・症状・治療

高ナトリウム血症は「しょうゆを1リットル飲んだ」場合でも起こり得ますが、最もよくみられるのは脱水によるものです水分をほとんど摂取しない場合や、嘔吐、下痢、利尿薬の使用、過度の発汗が起こると、体液が失われ脱水症になり、相対的にナトリウム濃度が上昇するのです

高ナトリウムはのどの渇きが生じます深刻な高ナトリウム血症になると、脳の機能不全をきたし、錯乱、昏睡などの意識障害をきたし死亡することもあるので注意が必要です

高ナトリウム血症は水分を補うことで治療します。ごく軽症の場合を除いて、水と少量のナトリウムを入れて濃度を慎重に調整した補液を点滴します。

 脱水になりやすい高齢者などでは予防的に水分を定期摂取するようにした方がいいでしょう。ただし、大量の発汗や下痢・嘔吐による高度な脱水の場合、急に水分だけを過剰に摂取すると逆に低ナトリウム血症(水中毒)になる可能性があるので、適度な塩分や糖分も必要です

参考 (All About 食と健康)  2015.07.07

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